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心を整える。
『常に最悪を想定する』
南アW杯敗退直後、なぜ微笑んだのか?

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第8回

W杯敗退が決定した瞬間、長谷部はしっかり前を見据え、誰よりも早く歩き出した。なぜなのか?
W杯敗退が決定した瞬間、長谷部はしっかり前を見据え、誰よりも早く歩き出した。なぜなのか?【高須力】

 ここに一枚の写真がある。


 ワールドカップのパラグアイ戦、パラグアイの最後のキッカーがPKを決めた直後の写真。


 決められた瞬間だから、「負け」が確定した瞬間である。


 チームメイトが横並びに写っている。隣には本田(圭佑)が拝むように手のひらを合わせたまま、地面に突っ伏している。長友(佑都)がしわくちゃに顔をゆがめ、その横ではケンゴさん(中村憲剛)が腰に両手をまわして呆然としていた。

 だが、このなかでひとりだけ表情が違う人物がいた。それが僕だった。とある記者さんは、


「負けた瞬間なのにすっと立ち上がって、GKの方に歩いています。しかもちょっと顔がすっきりしている。これはキャプテンだったから切り替えられたのですか? それともある程度負けを覚悟していたのですか?」


 まったく覚えていないし、正直驚いた。確かに写真のなかで僕はいち早く立ち上がり、すでに前へ一歩踏み出していた。顔を見ると、とても試合直後の表情には見えず、悔しさや驚きといった感情の変化をまったく感じ取れないうえに、少し微笑んでいるようにも見える。


 続けて、記者の方は僕にこう聞いてきた。


「PK戦で負けたら、他の選手のように悔しさのあまり呆然とするのが普通だと思う。なぜ長谷部さんは、こんなにもすぐに切り替えられたのか?」


 分からない。本当に分からない。でも当然ながら「エイジ(川島永嗣)、止めてくれ」と祈るようにして心のなかで唱えていた。


 分からないながらも、当時のことを自問してみた。

長谷部誠

1984年1月18日、静岡県出身。3歳でサッカーを始め、青島東小のスポーツ少年団、青島中サッカー部を経て名門・藤枝東高校入学。2001年の全国総体準優勝。2002年浦和レッズ加入。2008年にドイツ・ブンデスリーガへ移籍。翌年、ヴォルフスブルクにてリーグ優勝を経験。現在はアイントラハト・フランクフルトの主軸として活躍している。2018年にはドイツカップ優勝を達成。ワールドカップでは、南アフリカ、ブラジル、ロシアの3大会連続でキャプテンを務めた。日本代表のキャップ数は114。

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