
第4回

サッカー選手として、自分には一目で分かるような突出した武器がない、ということは自分でもよく分かっている。ピッチ中央でのドリブルやペナルティエリア付近への縦パス、サイドからのクロスなど武器だと思っているプレーはある。けれど、オランダ代表のアリエン・ロッベンのように相手を置き去りにできる圧倒的なスピードはないし、俊さん(中村俊輔)のように観客をあっと驚かせるような華麗なパスをコンスタントに出せるわけでもない。守備を含めたMFとしての総合力には自信があるけれど、武器がいまいち分かりづらい、ということは自覚している。
だからこそ、レベルの高いチームのなかで生き残り、先発メンバーに名を連ねるためには、何か人と違うストロングポイントを示さなければならない。
僕にとってのそれは、「組織に足りないものを補う」ことだ。
ヴォルフスブルクには、エゴが強くて、自分が何とかして点を取ってやろうという意識の選手がとても多い。それはそうだろう。点を取れば手っ取り早く評価につながるだろうし、サポーターの心もつかめる。ただ、それは攻撃という意味では決して悪いことではないのだが、守備の意識が薄いと組織は当然ながら崩れてしまう。
移籍当初、僕はそれに気がついた。練習中でも、試合でも、そういうシーンが目についたし、バランスの悪さから失点することも多かった。攻撃力の影に潜むこの弱点をどうにかしないと上位にはいけないと思ったのだ。当然ながら試合にも出たいし、何より勝ちたい。だから僕は自分がチームのバランスを最優先で考え、エゴが強い選手を支えようと考えた。そうすれば目立たないかもしれないけれど、必要とされる選手になるはずだと。マガト監督が日本人を獲得した狙いも、きっとそこにあった。
中盤から攻め上がる選手がいたら、自分は中盤に留まって相手のカウンターに備える。みんなが疲れてきて動きが落ちてきたなと思ったら、人の分までカバーして走る。海外リーグで生き残っていくために、自分の良さをピッチで表現したいという欲やエゴより、組織の成功を優先してきた。
その判断は正解だったと思う。そういう姿勢が認められたからこそ、2009年5月23日、ヴォルフスブルクがリーグ初優勝を決めた重要な一戦で、ピッチに立てていたのだと思う。
僕の契約更新に関する、こんなエピソードがある。
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