連載:「挑戦と葛藤」〜Bリーグ・コロナウイルス対策の舞台裏〜

Bリーグ日程変更はどこに重きを置いた? 競技運営グループマネージャーが語る

大島和人

B2プレーオフ「8枠」を残すことが重要

――結果的にB2のプレーオフを重視した日程調整になりました。クォーターファイナルはホーム主管試合、2戦先取のまま開催する予定です。

 B2チャンピオンシップより、B1昇格がモチベーションとして大きい実態があります。そのチャンスを4チームしか得られないのか、8チームが得られるのか、5位〜8位のチームからすると根幹に関わるところです。ある意味でBリーグのチャンピオンを決めること以上に、構造の維持が重要でした。
 そのバランスと、ホーム戦の主管でビジネスチャンスに変える観点もあって、そこをどう着地させるかはやはり苦しんだところです。

――5月16日と17日にB1残留プレーオフ、B2プレーオフ、入替戦の計5試合を東京都大田区の片柳アリーナで開催する予定です。これはどのような調整でしたか?

 今回はもともとB1残留プレーオフの2回戦用に予約をしていました。リーグ戦の代替試合をしなければならず、その日程はキャンセルになった。ただその前に(日程後ろ倒しの)可能性が出ていたので、「横浜アリーナの後にどこか取れないか」と相談させていただいて、「ここなら可能性があるかも」というところから5月16日、17日でハマりました。
――他に開催地として検討した、動いたアリーナはあるんですか?

 選択肢としてはもちろんあります。しかし「使った実績のある中立地」はあまりありません。あと東京2020があるので、4月からは準備期間でどこも閉まります。
 片柳アリーナが無理だったらクラブに相談しようかなと本気で思っていました。例えばやらなければいけない試合が入替戦、B2のファイナルや3位決定戦だった場合に、B1のホームアリーナだったら一応中立と言えなくはないと思っています。

――16日は1日3試合開催で、プロの試合としては異例です。

 それも何を大事にするかという中で、興行として華々しく見せることより、競技的にきっちり試合を成立させることに重きを置いて決めました。
 残留プレーオフ1回戦を3試合のうち最初にやることになると思います。何故かというとB2の3位決定戦でライセンスを持っているチームが3位になるかによって、残留プレーオフ2回戦の必要性が変わってきます。

――去年は横浜ビー・コルセアーズが残留プレーオフで破れたにもかかわらず、その後に行われたB2プレーオフでライセンスを持たないクラブが1位、2位となって自動降格、入替戦がありませんでした。

「やらなくてもいいなら、やらなくていい」という考えもあるんですけど、B1の対象チームが会場に来て、直前に「なくなりました」で返すのは正直興行的に破綻してしまいます。成立させるためにはきっちり残留プレーオフ2回戦を、その人たちの行き場がどっちになるか決まらないですけれど先に持っておかないといけません。しかし1年目にこれが起こっていたら、そこまで頭が回っていなかったかもしれません。

――B2プレーオフと3位決定戦の前後はどうなりますか?

 残留プレーオフ2回戦の勝ったチームないし負けたチームと、B2の3位は翌日に試合をする可能性があります。コンディションは極力合わせないといけないという観点で見ると、まずB2の3位決定戦をやって、ファイナルが続きます。競技的なフォーマットと翌日の試合を考えると、そうせざるを得ません。

「ファイナルは横浜で」という文化を

ファイナルの会場、「横浜アリーナ」というブランディングを大切にしていると数野マネージャーは言う 【(C)B.LEAGUE】

――地方のファン、ブースターからリーグ主管のビッグゲームが首都圏に集中してしまうことへの不満を耳にします。

 Bリーグオールスターゲームは基本的にクラブの本拠地を回ろう、地域を盛り上げてリーグの発展につなげようという考えです。逆にポストシーズン、Bリーグファイナルに関していうと中立地という条件もありますし、まずは首都圏側で熱を高めていくことが全体に熱を広げる考えでやっています。終わってそのままテレビの番組に行けますし、メディアさんの集まりも、首都圏でやっているメリットです。

 関西や愛知にアリーナがないわけではありません。ただ横浜アリーナというブランディングを、われわれは大切にしています。bjリーグが最後に有明を据えていたことは良かったと思っていましたし、われわれも横浜でそういう文化を作りたい。「最後に横浜アリーナへ行きたい」という言葉を、新人研修などで選手の口から聞かれるようになっています。

――今後さらなる日程変更、調整が必要となる可能性もあります。現時点でどういう用意、準備をしていますか?

 Bリーグは4月1日まで中止という判断をしました。そこでわれわれがやらなければいけないことは、大河(正明チェアマン)も話していた通りリーグとクラブと選手が一丸となってやっていく体制の構築です。

 外的な要因でどういう変動が起こるかは、われわれのコントロールができない部分です。コントロールできる指針的なものをより充実させて、選手やクラブときっちり共有して理解を深めることが必要です。

 このままリーグ戦を全休しなければいけない場合もあると想定していますし、ポストシーズンにそれが及んでしまう可能性もあります。ポストシーズンのフォーマットも、何が起こりうるかを考えていくつかパターンを用意しておかないといけないでしょう。最終的に昇降格がレギュレーション通りに履行できない可能性もゼロではないと考えているので、来シーズンのリーグ構造がもともとの規定通りにいくのか検証もしなければいけません。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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