富澤慎が疾駆する江の島沖のメダルレース 大海原に帆を立てるセーリングの壮大感
セーリングRS:X級(ウィンドサーフィン)で4大会連続の五輪出場を決めた富澤慎に、競技の魅力や五輪への思いを聞いた 【写真:C-NAPS編集部】
日焼けした肌に、長身でスラリとした引き締まった体型。海がよく似合うこの男が期待されている理由は、セーリングの会場が江の島ヨットハーバーであること。「大会が行われる場所の特徴を知ることが非常に大切」と自身が語るように、学生時代から慣れ親しんだ地が五輪会場であることは、富澤にとってこの上ないアドバンテージだ。果たして東京五輪本番では上位10艇で順位を争う「メダルレース」に進出することはできるのか。富澤にとって「ホームの海」である江の島沖で開催される五輪への意気込みと競技の魅力について語ってもらった。
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大海原を舞台に行われる「海上のマラソン」
富澤が専門とするRS:X級は唯一のウィンドサーフィンの種目。ボードに帆を立てて縦横無尽に海上を駆け巡る 【Getty Images】
ただ、「低得点制」という採点方式がセーリング独自のルールだと言えます。セーリングは着順によって1位は1点、10位は10点が加算され、複数日にかけて10レース以上行われた合計得点が低いほど総合順位で上位になります。そして、その総合点で上位10艇に入ると、「メダルレース」と呼ばれる他の競技でいうところの決勝戦に当たるレースに出場できる点も見どころですね。
セーリングは男女合わせて計10種目ありますが、僕はRS:X級に属しています。RS:X級の大きな特徴としては、唯一のウィンドサーフィンの種目であること。ウィンドサーフィンは、50〜60年前にサーフボードにヨットの帆を付けたら面白いんじゃないかという発想から生まれたそうです。ちなみにセーリングの他の種目はすべてヨットで、種目によって艇種や規格、一人乗り・二人乗りなどの人数の違いがあります。
真剣な表情でセーリングについて説明する富澤だが、観戦を楽しむためには「まずはやってみて面白さを体験することが一番」とも語る 【写真:C-NAPS編集部】
沖合では常に風も波も変化しているため、帆の勢いをうまくコントロールするには情報や知識、経験が重要になります。そのため、レース期間中の風速や風向きなどをインターネットで逐一チェックしたり、天気図を見たり、目視で風を読んだりするなど常に情報収集が欠かせません。五輪では日本のセーリングチームにも気象予報士がついているので、雲や潮の動きについていろんな角度から調べてデータを出してくれます。
セーリングは大海原で行う競技なので、大会が行われる場所の潮の流れや風の吹き方などの特徴を知ることも非常に重要です。僕の場合は、大会の1カ月前からその場所で合宿し、実際にセーリングをして波や風向きなどの特徴や傾向を体感するなど、下調べをしたうえでレースに臨むようにしています。自然を味方につけることができるか否かが、結果を残すうえでも大きな鍵を握ると思います。
五輪観戦においてセーリングを楽しむためには、本番前に実際に海上で風を受けてみるのが一番だと思います。風を体感すること、言葉ではなかなか伝えられない楽しさや感覚を味わうことができるはずです。ウィンドサーフィンであれば、湘南の海岸線に来れば誰でも気軽に体験できます。特に疲れている方は、自然と触れることでリラックスできるのでおすすめです。