島川慎一が誓う「金メダル獲得の凱歌」 勝利への思いが衝突する車いすラグビー
車いすラグビーで5大会連続となるパラリンピック出場と悲願の金メダル獲得を目指す島川慎一に、競技の魅力を聞いた 【写真:C-NAPS編集部】
そんな大きな期待を背負う車いすラグビー日本代表において5回目のパラリンピック出場を目指すのが、45歳の島川慎一(バークレイズ証券株式会社/BLITZ)だ。21歳の時に交通事故により頸髄(けいずい)を損傷し、車いすの生活となった彼は、1999年に車いすラグビーとの出会いを果たすと、2004年のアテネパラリンピックで代表入り。以降は数々の国際舞台で活躍し続けてきた。競技歴は20年を超え、鍛え抜かれた体と激しいタックルは島川の代名詞となっている。
東京2020で目指すのは、まだ手にしたことのない「パラリンピックの金メダル」。今回は最高峰の舞台で頂点を見据える島川に、競技観戦のポイントや金メダルへの思いを語ってもらった。また、「永遠のライバル」であるオーストラリアの強さの秘訣についても聞いた。
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激しいタックルと障がいの程度によるチーム編成に注目
屋内開催や前方へのパスが許されるなどの違いはあるものの、ボールを持って前へ進む姿勢は健常のラグビーと変わらない 【Getty Images】
また、ボール保持者が10秒以内に1回、ドリブルかパスをしなければいけないのも独自のルールです。違反した場合は、10セカンド・ノー・ドリブル・バイオレーションという反則となり、相手チームにボールの所有権が移ってしまいます。そのため、常に攻撃的な姿勢が求められます。前へ前へと向かう姿勢が求められるのは健常のラグビーと一緒ですね。
ちなみにボールは楕円形ではなく、バレーボール5号球をアレンジした車いすラグビー専用球を使用します。表面がざらざらとしているので、選手たちは表面をゴムで加工された手袋を使ってボールを扱います。障がいの影響で握力があまりない選手が多いので、滑らないようにするための工夫が施されているんです。私の握力は右手が50キロで、左手が8キロほど。事故で障がいを負う前は、右手が70キロはあったので、昔ならリンゴを握りつぶすこともできるくらいだったんですけどね(笑)。
車いすラグビーの魅力は何と言っても激しいぶつかり合い。島川(左)もハードタックラーとして名を轟(とどろ)かす 【写真は共同】
ただ、車いすラグビーの魅力は激しさだけではありません。選手の障がいの程度によって持ち点が定められていて、コート上4人の合計点を8点以内でチーム編成する「ポイント制度」にも注目していただきたいですね。選手はそれぞれ0.5から3.5まで、0.5刻みで7段階に分けられていて、数字が少ないほど障がいが重くなります。障がいの重い選手と軽い選手をうまく組み合わせてチームを編成することが、勝利の重要な鍵となります。たとえば、持ち点が3.0の私が出ると、他の3人の選手の合計は5点以内にしなければなりません。
ちなみに車いすラグビーは男女混合の競技ですが、女子選手が出れば1人につき0.5点が加算されるんです。つまり、8.5点以内でチーム編成ができるようになります。日本にも持ち点が0.5の倉橋香衣選手(商船三井/BLITZ)がいますが、起用することで他の3人をより持ち点の高いメンバーで構成できます。守備の役割も彼女はしっかり果たしてくれるので、チームにとって大きな存在となっていますね。