松坂の衝撃デビュー、辻の“伝説の走塁”… 東尾修と石毛宏典が選ぶライオンズ名場面
石毛宏典氏が選ぶライオンズ名場面
石毛宏典氏が選ぶライオンズ名場面は? 【(C)SEIBU Lions】
藤井寺球場で行われた近鉄との一戦。5点を追いかける8回表、先頭の西岡良洋の本塁打から始まり、清原和博、石毛宏典、ブコビッチ、秋山幸二と続き、最後は大田卓司が放ち、1イニング6本塁打のプロ野球新記録を樹立した。
「1イニング6本だからね! 日本記録だからね! これはすごいよ。昔の藤井寺球場は外野フェンスが低くて、この後に金網の部分ができて高くなった。それもすごいことだよね。僕もしっかりと右中間に打ち返して、我ながら見事なバッティングだったね(笑)。こういう記録を作ると、自分の名前も残るし、引退後も映像などで振り返ってもらえたりするからうれしいね。自分の記憶も蘇(よみがえ)る。この記録も含めて、ライオンズの一員だということに誇りを持てるよ」
3勝2敗で日本一に王手をかけて迎えた巨人との日本シリーズ第6戦。1点リードで迎えた8回裏の2死から辻発彦が三遊間を破るヒットで出塁。すると次打者・秋山幸二のセンター前へのヒットで、辻が一塁から一気に三塁も蹴って本塁生還。中堅手・クロマティの守備の隙を突いた好走塁は、「伝説の走塁」として語り継がれている。
「あの走塁は素晴らしかったね。正直、辻が三塁をまわった時は、ベンチで『えっ!?』とは思ったけど、クロマティの守備、返球を受けたショートの川相(昌弘)が打者走者を気にした体の向きを瞬時に判断した(三塁コーチャーだった)伊原春樹さんのファインプレー。相手もまさか単打で一塁から一気に本塁を狙うはずがないと思っていた。練習はしてなかったけど、伊原さんから『常に全力疾走で』と言われていたし、広岡監督時代から秘伝の『必勝法・必敗法』の書を読みながら、ミーティングで細かいことまで話し続けてきたことが、あの走塁に繋(つな)がったと思います」
「バッティングは東尾さんも良かったけど、工藤も良かったね。津田(恒実)から打ったのは大したものだよ。あのシリーズは広島相手に引き分けから3連敗して、宿舎での晩飯の時にみんなで鍋をつつきながら『ひとつぐらい勝とうや!格好悪いぜ!』って開き直ってたような感じだった。このサヨナラ勝ちから流れが変わって、チーム全体が『よし、やるか!』って雰囲気になった。個人的にも印象深いシリーズだったね」