連載:スポーツマネジャーという仕事

ラグビーに根付く特有のファミリー文化 対戦相手もレフェリーも“みんな家族”

構成:大島和人

15人制ラグビーの演出がセブンズに寄ってきた部分も

ファン同士もこの通り、試合が終わればみんなファミリーになる 【Photo by Tokyo 2020】

 観客や大会の雰囲気は、セブンズのほうがよりフェスティバル感があります。試合会場のスポーツプレゼンテーションに大きな差があります。ただ昨年のラグビーワールドカップを見ていると、ラグビーワールドカップでも「ドラムカム」「ダンスカム」など、日ごろセブンズ大会で見られる光景がありました。

 私の持っているイメージは15人制のラグビーワールドカップは、オーセンティックなセレモニー感、儀式感があります。一方でセブンズのラグビーはフェスティバル感があります。

 セブンズは終日試合を行うという特性から、ファンとのエンゲージメント(巻き込み)が大切になります。オリンピックでもMCの選定が大事な要素になりますし、音楽の選曲もそうです。あとは「何とかカム」で観客の皆様にスポットを当てて、盛り上がってもらうのも大事な要素になります。

 それから、セブンズは観客の皆様が仮装して応援に来る文化があります。まるでハロウィーンのようなコスチュームで来場して歌って、踊って、試合を観戦しています。五輪でも皆さんにセブンズならではのユニークなカルチャーを経験していただきたいと思っています。

 競技としてもセブンズは分かりやすいと思います。1チーム7名の選手がプレーするので、密集が少なく、フィールドをダイナミックに使い走り抜けて得点が入る、スピード感のある展開が特徴です。

 15人制ラグビーでは主にパシフィックの国々がウォークライ(文化的儀式)をキックオフ前に行います。皆様になじみがあるものとしては、ニュージーランドのハカ、フィジーのジンビ、トンガのシピタウ、サモアのシバタウです。セブンズですと、メダルセレモニーの後のみ行われます。(もちろん、該当チームが優勝した場合に限ります)。1日の中で多くの試合がスピード感のあるなかで行われるので、各試合キックオフ前にはウォークライは行いません。

ラグビーの文化や観戦ガイド、五輪に向けて発信していきたい

 また、セブンズは何が起きてもおかしくない、どこが優勝してもおかしくない競技です。参加国を見ていただくと、15人制ラグビーではあまり聞かないケニアがワールドシリーズの大会で頂点を取ったこともあります。15人制ラグビーでティア2のカナダやUSAもワールドシリーズの大会で優勝したことがあります。

 セブンズは時間が短いので、15人制ラグビーに比べるとアップセットが起こりやすいのかなと感じます。男子日本代表も前回のリオ五輪で強豪ニュージーランドを破り、4位という結果を残しました。

 今後、ラグビーセブンズの観戦の仕方やカルチャーを事前に発信して、ご来場いただくお客様により一層楽しんでいただきたいと考えています。お客様に向けたガイドも、組織委員会で発信して行く予定です。

 前年に15人制のラグビーワールドカップがあり、今年はオリンピックでセブンズがあります。競技はもちろん、選手にも注目が高まると思いますし、15人制、7人制と異なる種目を観戦いただける、良い機会だと感じています。多くの皆様に、両方のラグビーファンになっていただけることが、我々ラグビー関係者にとっての喜びです。

プロフィール

松尾 エイミ(まつお えいみ)
1981年、神奈川県出身。17歳から22歳まで、ニュージーランド・オークランド、米国・南カリフォルニアで学生時代を過ごす。帰国後、公益財団法人日本ラグビーフットボール協会に勤務。直近では大会運営部にて来日する各対戦国のチームサービスに関する業務を担当。2016年5月より公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会に勤務。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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