手本は大迫傑 冷静さが五輪内定のカギ 野口みずきが語る名古屋ウィメンズ展望

構成:スポーツナビ

東京五輪の女子マラソン代表最後の1枠が懸かる名古屋ウィメンズマラソンを、アテネ五輪金メダリストの野口みずきさんが展望する 【写真は共同】

 名古屋ウィメンズマラソン2020が8日、愛知・ナゴヤドームを発着とする42.195キロのコースで行われる。東京五輪の女子マラソン代表最後の1枠を決める最終選考会を兼ねており、一山麻緒、福士加代子、安藤友香(いずれもワコール)、岩出玲亜(アンダーアーマー)ら有力選手がエントリーに名を連ねた。

 代表に内定するには、1月の大阪国際女子マラソンで松田瑞生(ダイハツ)がマークした2時間21分47秒を上回って日本人最上位になる必要がある。ハイレベルな争いを抜け出し、五輪切符をつかむ選手は現れるのか。2004年アテネ五輪女子マラソン金メダリストの野口みずきさんに展望を聞いた。

後半ほど展開が変わる可能性も

――名古屋ウィメンズマラソンは、自身も過去3度走られています。好記録が生まれやすい大会とも言われていますが、コースの特徴は?

 ほとんど平たんなのですが、30キロ過ぎてからの名城公園近くの上りが唯一キツいポイントであり、展開が変わるところでもあります。30キロ手前で下って、折り返して上る部分で、私自身、状態が良い時と悪い時で両方走っているので分かるのですが、調子が良ければ相手を引き離せるポイントになって、気持ちよく上れるのかなと思います。でも、調子が悪いと、短い上りなのにとてつもなく長く感じてしまう。良い時と悪い時とで、かなり印象が変わってくる坂です。ですから、後半になればなるほど展開が目まぐるしく変わるのが、コースの特徴かと思います。

――有力選手が名を連ねましたが、特に注目している選手は?

 6日の記者会見に出席した選手はみんな落ち着いていましたが、その中でも一山選手、福士選手、岩出選手が自信を持っていて、調子が良さそうに見えました。顔の表情が良く、やってきたことを語る時にもマイナスなコメントは全くありませんでした。

 数年前、女子マラソンが低迷していると言われていた頃は、「笑顔でゴールテープを切りたい」とか「自信はないけれど準備してきたことを出し切りたい」といった曖昧な言葉が多かったのですが、今回はほとんどが「東京五輪を意識して、課題を克服してこの大会に臨んできた」「2時間21分47秒をしっかり頭に置いてトレーニングできた」という言葉でした。マラソンは何が起こるか分からない競技なので、実際に走ってみないと分かりませんが、選手たちに良い練習ができたという手ごたえが感じられる、良い記者会見だったと思います。

野口さんは注目選手の一人に、MGCで序盤からレースを引っ張った一山麻緒(左から3番目)を挙げた 【写真:松尾/アフロスポーツ】

――名前の挙がった選手についてそれぞれ伺いたいのですが、まず一山選手はどのような印象ですか?

 彼女は22歳と若いですが、トラック、ハーフマラソン、マラソンとどの記録も平均的に良い選手です。最近、トラックは遅いけれどハーフマラソンなどロードのタイムは良いなど、差が激しいタイプの選手もいますが、一山選手はバランスが良いタイプです。また、物怖じしないところも良いと思います。(昨年9月の)マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)での走りもそうでしたが、最初からぐいぐい押していけるので頼もしいですし、今回も調子が良さそうに感じました。今回は特にタイムを狙わないといけないので、MGCの時のような積極的な走りに期待したいと思います。

――福士選手は1月の大阪国際を途中棄権して、名古屋に再挑戦となります。

 福士選手は昨年も大阪国際で転倒して途中棄権し、名古屋にスライドしましたが、うまく合わせることができて、MGCへの切符を獲得しました。ですから、今回のこの流れも、良い印象なのではと思います。記者会見でも落ち着いていましたし、的確に答えていて、明るい感じでした。周囲からも調子が良さそうだと聞いていますし、面白い存在かなと思います。

――岩出選手はいかがでしょうか?

 彼女はフォームを課題としてきました。自分では手を加えていないと話してはいましたが、所属チーム移籍後から取り組んでいるフィジカルトレーニングをしっかりやってきて、実感として以前のフォームより今のフォームの方が走れる感覚がだいぶできてきたようです。前回のこの大会で自己ベスト(2時間23分52秒)を出したように、MGC(9位)での悔しさをバネに、一段階上げてトレーニングできているんじゃないかなと思います。

1/2ページ

著者プロフィール

スポーツナビ編集部による執筆・編集・構成の記事。コラムやインタビューなどの深い読み物や、“今知りたい”スポーツの最新情報をお届けします。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント