石島雄介が示す“砂浜のバレー”への適応 白鳥との最強ペアで挑む東京五輪のビーチ
ビーチバレーボールで東京五輪出場を目指す石島雄介に、競技観戦のポイントやインドアとビーチの違いについて聞いた 【写真:C-NAPS編集部】
しかし、バレーボール選手として一時代を築いた石島でさえ、ビーチ転向はすべてが順調というわけではない。転向後すでに3年が経過したが、「未だに自分の思い通りに動けないこともある」と砂への適応の難しさを吐露している。今回はインドアとビーチの2種目での五輪出場を目指す石島に、競技の魅力や観戦のポイント、インドアとの違い、東京五輪への思いについて聞いた。そして、ペアを組むパートナーであり、ビーチバレーボール界のレジェンド・白鳥勝浩(トヨタ自動車)の存在やプレーぶりについても語ってもらった。
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踏ん張れば踏ん張るほど砂に埋もれるコート環境
ビーチ転向後、3年以上が経過したが、砂の上でのプレーは未だに難しい面があると語る石島 【写真は共同】
砂の上は、みなさんの想像以上にプレーしにくい環境だと思います。僕は体重が100キロちょっとあるので、踏ん張れば踏ん張るほど砂に埋もれてしまうんです。「力を砂にしっかり当てて体を運ぶ」のがコツですが、初めのころはその意味をまったく理解できませんでしたね(笑)。力めば力むほど砂に埋もれますし、力を入れずに砂の上を移動しようとしても、まったく跳ぶことができない。砂の上の感覚をつかむのには時間を要しました。
もちろん、力を入れて踏み込めば跳べますが、逆を突かれてしまうとまったくボールに対応できません。そうしたコート環境なので、インドアと比べて強打だけではなく、ブロックの上を抜くショットや相手がいないところに落とすプレーを効果的に決めることを心がけています。意表を突いたり、相手の裏をかいて翻弄(ほんろう)したりするプレーがたくさん観られるのが、ビーチバレーボールの面白いところだと思います。
また、屋外なので天候や日差しの影響も受けますね。特に難しいのが風の影響です。「ここだ!」と思って動いても風でボールの軌道がズレることがよくあります。風上にいるのか、風下にいるのか、あるいは横から吹いていたらどう影響するのかをしっかり予測したうえで動くことが大切です。特にゆるいショットだと風に影響されやすいですしね。
ビーチバレーボールは、会場全体の独自の雰囲気が特徴と語る石島。お酒を飲みながら観戦することも可能だ 【写真:C-NAPS編集部】
一方、ビーチ転向後は体への負担に関しては少し軽減された気がします。砂の上は気持ち良いですし、足元が柔らかいのでケガのリスクは少なくなりました。ただ、運動量はむしろ増えた気がします。砂の上なので必要以上に労力がかかりますし、より多く走り回っている印象です。それなのに、年齢層の高めの選手がひょうひょうとしている事実があるので、砂の上での体の使い方が重要なのだと思います。観戦する際は、そうした老獪(ろうかい)なプレーヤーにも注目してみてください。
また、東京五輪で初めてビーチバレーボールを観るという方には、独自の観戦スタイルを楽しんでもらいたいですね。試合の合間にダンスする人たちによるショータイムがあったり、DJがいてその場を盛り上げたりします。堅苦しさは一切ないですし、会場でお酒を飲むこともできます。これってすごく珍しいことなんですよね。08年の北京五輪でビーチバレーボールの会場に行った時に、「同じ五輪なのに何でこんなに違うの?」とびっくりしました。会場にいる人たちもみんな、楽しそうでしたね。
初めて試合を観る日本人の方は、衝撃を受けるかもしれませんね。でも応援しに来てくれる方も、最初から最後までお酒を飲んで楽しんでいますし、選手のプレーを観つつ、観客のみなさんも存分に開放的になれます。そうした面白さがビーチバレーボールにはあると思います。