連載:アスリートに聞いた“オリパラ観戦力”の高め方

石島雄介が示す“砂浜のバレー”への適応 白鳥との最強ペアで挑む東京五輪のビーチ

C-NAPS編集部

ビーチバレーボールで東京五輪出場を目指す石島雄介に、競技観戦のポイントやインドアとビーチの違いについて聞いた 【写真:C-NAPS編集部】

 バレーボールの基本ルールをベースとしながらも、インドアとはプレー環境も観戦スタイルも大きく異なるビーチバレーボール。体育館と砂浜というコート環境の決定的な違いがあるものの、砂の上で躍動する選手たちは、実はインドアのバレーボールからの“転向組”が多い。中でも、バレーボール日本代表の主力として2008年の北京五輪に出場した石島雄介(トヨタ自動車)は、東京五輪のビーチバレーボール日本代表筆頭候補と言える存在だ。

 しかし、バレーボール選手として一時代を築いた石島でさえ、ビーチ転向はすべてが順調というわけではない。転向後すでに3年が経過したが、「未だに自分の思い通りに動けないこともある」と砂への適応の難しさを吐露している。今回はインドアとビーチの2種目での五輪出場を目指す石島に、競技の魅力や観戦のポイント、インドアとの違い、東京五輪への思いについて聞いた。そして、ペアを組むパートナーであり、ビーチバレーボール界のレジェンド・白鳥勝浩(トヨタ自動車)の存在やプレーぶりについても語ってもらった。

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踏ん張れば踏ん張るほど砂に埋もれるコート環境

ビーチ転向後、3年以上が経過したが、砂の上でのプレーは未だに難しい面があると語る石島 【写真は共同】

 ビーチバレーボールは、砂浜にある8メートル×8メートルのコートで1試合3セットマッチ(1セット21点の2セット先取、3セット目は15点)を行う競技です。基本的なルールはインドアのバレーボールと同じですが、1チーム2人でプレーする点が決定的な違いと言えますね。ただでさえ動きづらい砂の上をたった二人で守ったり、攻めたりするのでかなりハードなスポーツです。

 砂の上は、みなさんの想像以上にプレーしにくい環境だと思います。僕は体重が100キロちょっとあるので、踏ん張れば踏ん張るほど砂に埋もれてしまうんです。「力を砂にしっかり当てて体を運ぶ」のがコツですが、初めのころはその意味をまったく理解できませんでしたね(笑)。力めば力むほど砂に埋もれますし、力を入れずに砂の上を移動しようとしても、まったく跳ぶことができない。砂の上の感覚をつかむのには時間を要しました。

 もちろん、力を入れて踏み込めば跳べますが、逆を突かれてしまうとまったくボールに対応できません。そうしたコート環境なので、インドアと比べて強打だけではなく、ブロックの上を抜くショットや相手がいないところに落とすプレーを効果的に決めることを心がけています。意表を突いたり、相手の裏をかいて翻弄(ほんろう)したりするプレーがたくさん観られるのが、ビーチバレーボールの面白いところだと思います。

 また、屋外なので天候や日差しの影響も受けますね。特に難しいのが風の影響です。「ここだ!」と思って動いても風でボールの軌道がズレることがよくあります。風上にいるのか、風下にいるのか、あるいは横から吹いていたらどう影響するのかをしっかり予測したうえで動くことが大切です。特にゆるいショットだと風に影響されやすいですしね。

ビーチバレーボールは、会場全体の独自の雰囲気が特徴と語る石島。お酒を飲みながら観戦することも可能だ 【写真:C-NAPS編集部】

 ビーチバレーボールは、10代から40代までの幅広い年齢層の選手がプレーしているのも特徴です。選手寿命が長いのは日本だけではなく、世界各国に共通していますね。僕自身も32歳でインドアからビーチに転向しました。インドアはコートが硬いため、100パーセントの力で練習をしたとしたら、次の日に膝、肩、腰にダメージが残ることがありました。そのため、次の日の練習をセーブしなければならないこともあったんです。関節や体のさまざまな部分に負担がかかっていましたね。

 一方、ビーチ転向後は体への負担に関しては少し軽減された気がします。砂の上は気持ち良いですし、足元が柔らかいのでケガのリスクは少なくなりました。ただ、運動量はむしろ増えた気がします。砂の上なので必要以上に労力がかかりますし、より多く走り回っている印象です。それなのに、年齢層の高めの選手がひょうひょうとしている事実があるので、砂の上での体の使い方が重要なのだと思います。観戦する際は、そうした老獪(ろうかい)なプレーヤーにも注目してみてください。

 また、東京五輪で初めてビーチバレーボールを観るという方には、独自の観戦スタイルを楽しんでもらいたいですね。試合の合間にダンスする人たちによるショータイムがあったり、DJがいてその場を盛り上げたりします。堅苦しさは一切ないですし、会場でお酒を飲むこともできます。これってすごく珍しいことなんですよね。08年の北京五輪でビーチバレーボールの会場に行った時に、「同じ五輪なのに何でこんなに違うの?」とびっくりしました。会場にいる人たちもみんな、楽しそうでしたね。

 初めて試合を観る日本人の方は、衝撃を受けるかもしれませんね。でも応援しに来てくれる方も、最初から最後までお酒を飲んで楽しんでいますし、選手のプレーを観つつ、観客のみなさんも存分に開放的になれます。そうした面白さがビーチバレーボールにはあると思います。

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著者プロフィール

ビジネスとユーザーを有意的な形で結びつける、“コンテキスト思考”のコンテンツマーケティングを提供するプロフェッショナル集団。“コンテンツ傾倒”によって情報が氾濫し、差別化不全が顕在化している昨今において、コンテンツの背景にあるストーリーやメッセージ、コンセプトを重視。前後関係や文脈を意味するコンテキストを意識したコンテンツの提供に本質的な価値を見いだしている。

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