クライミング勢、苦手種目の克服に自信 五輪「金」へ、スキップ技磨く選手たち

平野貴也

日本勢の課題だったスピード種目

スポーツクライミングのスピードジャパンカップが開催。選手たちが語った手ごたえとは 【写真:森田直樹/アフロスポーツ】

 スポーツクライミング日本代表が苦手種目の克服に自信を持ち始めている。

 東京五輪で初めて正式競技に採用されるスポーツクライミングは、3種目を行うコンバインド(複合)が行われる。15メートルの壁を登り切るタイムを競う「スピード」、4メートルの壁の攻略数を競う「ボルダリング」、制限時間内で登れた高さを競う「リード」の3種目を行い、各種目の順位を掛け算して、数字の少なさで順位を争う。

 日本は、昨年8月に行われたIFSCクライミング世界選手権のコンバインドで男子の楢崎智亜が優勝、女子の野口啓代(ともにTEAM au)が準優勝して東京五輪の代表に内定。国際大会で実績を挙げており、五輪で金メダルを狙える力を持っているが、戦略が重要になる他の2種目に比べて、フィジカル勝負になりやすい「スピード」は、課題としている。世界記録と日本記録を比べると、男子は5秒48と6秒159、女子は6秒99と8秒404。以前より縮まってはいるが、まだ差がある。単一種目だけに強い選手と同じ記録を出す必要はないが、唯一、相手と直接競争する種目で、平均的な記録を上げておかなければ、プレッシャーを受けやすく、ミスが起こりやすくなる。

 その「スピード」の日本一決定戦、第2回スピードジャパンカップが22日に東京都昭島市のモリパークアウトドアヴィレッジで行われた。男子は、楢崎が6秒台を3度出すなど順当に勝ち上がっていたが、決勝戦で足を滑らせるミスが出て準優勝。予選12位だった土肥圭太(鹿児島県山岳・スポーツクライミング連盟)が「驚きしかない」と本人もビックリの初優勝を飾った。女子は、2週間前のボルダリングジャパンカップに続いて伊藤ふたば(TEAM au)が優勝した。

選手、指導者がレベルアップに手ごたえ

ハイレベルな争いの中、男子は土肥(左)、女子は伊藤がそれぞれ優勝した 【写真:森田直樹/アフロスポーツ】

 男子は、ボルダリングジャパンカップとの2冠目を狙った男子の原田海(日新火災)が強風の影響を大きく受けて予選で敗退するアクシデントがあったが、悪天候の中でも7秒前半の争いが多く見られた。女子も優勝した伊藤が8秒台を2度記録するなど、日本全体のレベルアップを感じさせた。日本代表の安井博志ヘッドコーチは「選手も私も、自信を持って戦える種目になってきたと思っています。タイムだけ見ると、コンバインド選手の中では上位に来る」と成長を認めた。

 スピード種目のスペシャリストとして、日本代表選手の指導に携わっている男子前回王者の池田雄大(順天堂大)も「暖かくなってくれば(男子は)みんな、6秒前半とかになってくる。楢崎選手あたりは、夏くらいには『5秒台を出したい』じゃなくて『出せるな』という感じになっていると思います。(自身が教えている女子の)野口さんもタイムが上がっている。(2人とも)かなり良い状態で五輪を迎えられるんじゃないかと楽しみ。最近は、日本が(スピード種目は)苦手だと誰が言ったんだろう、みんな、もうできるよというラインまで(力が)上がって来ている」と全体のレベルアップを確信していた。

 女子の野口は4位だったが「国内大会で課題を吸収して、ピークは夏場に持っていきたいので、今は練習を充実させたい。今日は寒かったり、風があったりでなかなかタイムが出ませんでしたが、大きなミスなく安定していたと思う。練習で9秒2とか自己新を安定して出せていた。夏になればもっと出ると思う」と手ごたえを示した。

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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