セブンズでの代表入りを目指す福岡堅樹 リオ五輪で感じた「メダリスト」との差

斉藤健仁

オリンピックに出場できる選手はわずか12名

セブンズは「究極の鬼ごっこ」とも言われる 【写真:Enrico Calderoni/アフロスポーツ】

 現在、男子セブンズ日本代表は合谷和弘、彦坂匡克、副島亀里ララボウラティアナラ、後藤輝也、羽野一志といったリオ五輪組、そしてリオ五輪ではバックアップメンバーだった藤田慶和と松井千士らが躍動している。オリンピックに出場できる選手は12名のみと狭き門であり、当然、チームスポーツのため長く一緒にプレーしている方が有利に働く。

 オリンピックは今から約5カ月後。そんな中で、「現在のチームに福岡はフィットできるか、間に合うのか?」という問いに対して、個人的には「YES」であり、「間に合う可能性が高く、オリンピックで勝つために必要なメンバーのひとり」と考える。

 福岡は15人制ラグビーと7人制ラグビーの違いについて聞かれて「15人制ではWTBであっても、よりフィジカルが重要になってくる。ブレイクダウン、空中戦で当たり負けないといったことが求められる。7人制ではよりスピード、走る方に特化していく。実際に競り合う場面というのも少ないですし、広いスペースを与えられた中で勝負する。何度も何度もトップスピードで走れる体が必要になります。自分の体を7人制へシフトしていけたらと思います」と話していた。

 実際、その通りである。7人制ラグビーの大会は2〜3日にかけて行われ、1日に7分ハーフを2〜3試合こなすためフィットネスはもちろんのこと、単純な早さだけでなく、攻守にわたってトップスピードで何本も走る能力が欠かせない。ただボールを持ってから2歩目、3歩目でトップスピードになれる瞬発力を持つ世界でもトップレベルの福岡のスピードは、当然、セブンズの日本代表でも大きな武器となる。

 体力自体は1〜2カ月もあれば、セブンズに十分にフィットしていくはずだ。またチームメートと試合中のコミュニケーションや意思の疎通は、現在のメンバーはリオ五輪組が中心であり、同じくリオ五輪に出場している福岡にとってはおなじみのメンバーも多く、さらに、もう1カ月ほどあれば問題ないと予想している。

 また、セブンズは「究極の鬼ごっこ」とも言われるものの、現在、世界のトップレベルはまるで15人制のようなフィジカル、ブレイクダウンのスキルも必要となってきている。福岡はリオ五輪後、トップリーグだけでなく、サンウルブズ、ワールドカップで研鑽(けんさん)を積んできた。高校時代からタックル、ジャッカルも得意であり、ジェイミー・ジャパンでは空中でのボールキャッチも得意になった。

 もちろん、セブンズは7人対7人で戦うため、1人でタックルしてからジャッカルしたり、スペースやギャップを1人で攻めて局面を突破したりする選手は重宝される。15人制のW杯を2大会、スーパーラグビー、そしてリオ五輪にも出場した福岡の国際舞台で培った経験やスキル、スピードはセブンズのトップレベルでも間違いなく通用する。

 最初は、もしかしたらスーパーサブ的な起用方法になるかもしれないが、3月中に復帰することができれば、7月末のオリンピックには間に合うだろう。

日本開催の「アドバンテージはすごく大きい」

リオ五輪ではメダルにあと一歩届かず4位。福岡は「メダルを取るか取らないか」の差を感じた 【斉藤健仁】

 東京五輪のメダル獲得への思いを聞かれて、福岡は「まずは前提としてメンバーに入ることが大変だと思っていますが、リオを経験したメンバーとして、日本ではオリンピックで『メダルを取るか取らないか』で、その後の扱いの差を感じました。僕たちの中では、(リオ五輪で)4位でも今まで成し遂げられなかったことを成し遂げたと思っています。それでも周りの活躍に埋もれて少し悔しい思いをしました。やるからにはメダルを取りたいと思いますし、そのための努力をしていきたい」と腕を撫(ぶ)した。

 昨今のコロナウイルスの影響で、4月に予定されていた香港セブンズ、シンガポールセブンズは東京五輪後の10月に延期された。日本代表は3月のワールドシリーズのカナダ大会に招待されたが、福岡がセブンズの試合で実際に見られるのは、早くても4月25〜26日、オリンピックでセブンズが実際に行われる東京スタジアムで開催の「アジアインビテーショナル2020」となりそうだ(編注:3月4日、アジアインビテーショナル2020の中止が発表された)。

 昨年、日本での15人制ラグビーのW杯を経験している福岡は、地元の日本でオリンピックが行われることに関しては「(昨年のW杯では)選手がみんな素晴らしいコンディションで大会を戦うことができたので、その部分でのアドバンテージはすごく大きい。(東京五輪で)7人制ラグビーの注目が少しでも高まれば」と日本開催の意義を話した。

 27歳の福岡は2度目のオリンピック出場に向けて「必ず、自分にできる最高の結果を出せるように、一つひとつ目の前のことを大切にして、最高の時間にしたい」と静かに闘志を燃やした。日本ラグビー史の歴史を塗り替えてきた韋駄天(いだてん)は、東京五輪をラガーマン、そしてアスリートとしての集大成とする。

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著者プロフィール

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)、「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「ラグビー語辞典」(誠文堂新光社)、「はじめてでもよく分かるラグビー観戦入門」(海竜社)など著書多数。

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