連載:アスリートに聞いた“オリパラ観戦力”の高め方

瀬立モニカが魅せる剛柔一体のパドリング 地元に誓うパラカヌー日本人初のメダル

C-NAPS編集部

海外選手に打ち勝つために体づくりで10キロ増量

取材中も屈託のない笑顔を見せてくれた瀬立。その明るい性格ゆえに海外のライバル選手からも好かれている 【写真:C-NAPS編集部】

 パラリンピックで注目なのは、ウクライナ人のマリーナ・マズーラ選手ですね。私は「マリーナ姉さん」と呼んでいます。「姉さん、姉さん」と日本語で呼びかけているので、きっと彼女は「何言ってんだこの子は」と思っているでしょうね(笑)。でも「モニカ〜」と話しかけてくれて、すごく包容力があるんです。

 リオ後に出てきた30代後半の選手なんですが、そこから負けなしでダントツに強いですね。私たちのように障がいが重いクラスでは、体を動かせる箇所が限られているだけに体力と同じくらいにスキルが重要。だからこそベテランの選手でも十分に輝けるんですよね。

 ただ、マリーナ姉さんは体力もすごい。体も大きくて軸がぶれず、スタートからすごい力で水を漕げるんです。そして、それをフィニッシュまで継続できる。他の選手たちは流れに乗って進むタイプが多いんですけど、彼女の場合は「オラーー!」みたいなパワフルさが魅力です。観客の方も見ているだけで、「わ、この人力強いな」というのが分かるかと思いますよ。

 マリーナ姉さんのような海外選手と張り合うためにも、筋肉量を増やしているところです。実はリオ後から10キロ体重を増やしました。障がいを負った後は、女優になれるかと思うくらいにめちゃくちゃ痩せたんですよ(笑)。でも競技を始めてからは継続的にケガをしない体づくりに励んでいて、リオ後に今の体のベースができました。18年の冬くらいからようやく追い込んでも壊れない頑丈な体に仕上がってきたと思います。今後、さらに力強さを増していきたいですね。

 筋量アップのかいもあって、東京パラリンピックの内定を決めたハンガリーでの世界選手権では、5位入賞を果たせました。これまでは世界のトップの選手たちには 5秒差くらいつけられて負けていたのですが、世界選手権では何人かには僅差で競り勝つことができました。19年の一番の収穫になりましたね。

パラリンピックでのメダル獲得で「チームモニカ」に恩返しを

「チームモニカ」の体制で協力してくれている地元・江東区には、メダル獲得での恩返しを目指す 【写真は共同】

 19年9月に本番と同じ場所でテストイベントが行われ、メダルを獲れたことは自信につながりました。コースは、「風が強い」というのが第一印象でした。そして、海が近いので波を抑える装置がありましたが、うねりが出ましたね。そういう環境にも負けず、いかにパドルに体重をかけられるかは、本番でメダルを獲得するうえでポイントになると思います。

 私にとって2回目となる東京パラリンピックですが、ドキドキワクワクしています。会場の「海の森水上競技場」がある江東区は、私の生まれ育った場所です。まさに地元開催なだけに、道を歩いていてもたくさんの人が「モニカちゃん来年頑張ってね」「チケットとれたよ」と話しかけてくださるんです! また、川は練習の様子が見られる開放的な場所なので、橋の上を通る人や河川敷の横で犬の散歩している人からもよく声をかけらますが、「ああ、ここは地元なんだな」と実感しますね。

 私は、母やトレーナー、メカニック、監督、コーチ、栄養士ら、たくさんの方にサポートしていただいていて、本当に幸せなパラリンピアンだなと感謝しています。まさに「チームモニカ」ですね! また、江東区長さんを筆頭に、パラカヌー選手に対して目をかけてくれているのもひしひしと感じています。私自身がパラカヌーを始めたのも江東区の選手発掘事業がきっかけだったこともあり、一から育ててもらった恩を結果で返したいです。

 本番が近づくにつれて、「めっちゃ、メダル獲りたい!」という思いが頭の中の90%くらいを占めるようになりました。今までの自分の頑張りを最大限に表現できるのは、やっぱり地元の方々の目の前でメダルを獲ることですよね。獲得できたら地元のみなさんに触っていただき、喜んでもらいたいと思います。

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著者プロフィール

ビジネスとユーザーを有意的な形で結びつける、“コンテキスト思考”のコンテンツマーケティングを提供するプロフェッショナル集団。“コンテンツ傾倒”によって情報が氾濫し、差別化不全が顕在化している昨今において、コンテンツの背景にあるストーリーやメッセージ、コンセプトを重視。前後関係や文脈を意味するコンテキストを意識したコンテンツの提供に本質的な価値を見いだしている。

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