帝京長岡の堅守を支える「声の力」 青森山田を抑え、新たな歴史を作れるか

Noriko NAGANO

準々決勝で仙台育英を破り、新潟県勢初のベスト4進出。3試合連続完封の原動力、GK猪越とDF丸山が喜びを爆発させる 【Noriko NAGANO】

 選手権でのベスト4進出は新潟県勢初。前回大会を含めて過去に二度、準々決勝で敗れている帝京長岡が、三度目の挑戦でついに「壁」を打ち破った。躍進を支える原動力は、3試合で9得点を挙げている攻撃力に加え、県予選からいまだ相手に1点も許していない堅守。守備の安定は、最終ラインから声を張り上げ、ディフェンスを統率するセンターバック(CB)丸山喬大の存在によるところが大きい。

 準決勝の相手は、連覇を狙う青森山田。爆発的な攻撃力を誇る王者を無失点に抑え、新たな扉を開くことができるか。

※リンク先は外部サイトの場合があります

部員やOBの思いなどいろんなものが乗っかって

「大会無失点で日本一になるのが目標」と語るGK猪越。青森山田の強力攻撃陣からゴールを死守できるか 【Noriko NAGANO】

 準々決勝の帝京長岡(新潟)対仙台育英(宮城)戦は、開始早々の1分に試合が動いた。左サイド高い位置からのスローインをペナルティエリア内で受けた帝京長岡の晴山岬(FC町田ゼルビア加入内定)が、ターンして中にマイナスのパスを送ると、フリーでゴール前に走り込んだ谷内田哲平(京都サンガF.C.加入内定)がゴールに流し込んだ。

 ゴールをアシストした晴山は試合後、谷内田との連係を振り返り、「ここにいてくれたらと思ったら、そこに哲平がいた。ずっとやってきたことが、全国大会の舞台でできた」とうれしそうに語った。

 試合はその後、決して諦めない仙台育英との一進一退の攻防が続いたが、「部員の思いやOBの思い、いろんなものが乗っかって、最後まで相手にゴールを割らせなかった」(古沢徹監督)帝京長岡が虎の子の1点を守りきり、新潟県勢初のベスト4進出を果たした。

「負けたら帰省せず、そのままどこかへ行ってしまおうと思っていた」と試合後に語ったのは、最後までゴールを守り抜いたGKの猪越優惟だ。仙台出身の猪越は、この試合を心底楽しみにしていた。

「もうわくわくしちゃって。仙台育英との対戦が決まってから、夜眠れなくなった。特別な思いがあったから。国体でも、練習試合でも、なんでも、宮城のチームとやりたいとずっと思っていた。自分の実力を試せる最高の場所で対戦できて、宮城のチームに勝ったことが、個人的にはめちゃめちゃうれしい」

 帝京長岡は前回大会でも準々決勝に駒を進めた。昨年の準々決勝も今回と同じ等々力陸上競技場が舞台で、福島の尚志に0-1で敗れている。だが今年、ベスト8の壁を破り、初めて準決勝まで勝ち上がった。

 試合前、地元の友達に「宮城のチームを応援するから」と言われた猪越は、「別に構わないけど、勝つのは俺らだよ」と自信を持って返したという。

 猪越が新潟の帝京長岡に行く決断をしたのは、自分に声をかけてくれ、いい評価をしてもらったから。故郷の仙台を離れ、慣れない土地での寮生活。最初は戸惑うことも多かったが、優しい先輩や明るい同級生たちに助けられ、そしてこの地で逞(たくま)しくなった。

「1年のときは雪がすごくて。校舎の1階くらいまで積もって、新潟ってこんなに雪が降るのかと。ゴールエリアの雪をどけるのがやっとという日が続いて、練習が1週間雪かきというときもあった。夏は仙台より暑くて、鍛えられた」

1/2ページ

著者プロフィール

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント