世界が注目、17歳のメダル候補・中村輪夢 BMXで描く東京オリンピックの夢

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東京オリンピックでもメダルが期待される自転車BMXフリースタイル・パークの新星、中村輪夢にインタビュー 【スポーツナビ】

 開幕まで250日を切った東京オリンピック。各競技で日本代表選手が続々と内定していく中、新種目のBMXフリースタイル・パークでメダル級の新星が登場したのをご存じだろうか。その名は中村輪夢(なかむら・りむ)、17歳――2019年シーズンのワールドカップ(W杯)において、4月広島大会で日本選手初の表彰台となる2位になると、11月中国大会では見事に初優勝し年間ワールドチャンピオンも獲得。また、8月にはエクストリームスポーツの最高峰「Xゲームズ」で史上最年少の銀メダルに輝くなど、一躍、世界のトップライダーの仲間入りを果たした。

 輪夢という名前の通り、まさに自転車の申し子がBMXで描く東京オリンピックの夢。自慢の高さを誇るエアトリックのように、どこまでも高みを目指す中村に話を聞いた。(インタビュー日:11月28日)

広島大会が僕的には一番大きな出来事でした

11月に中国で開催されたBMXフリースタイル・パークのワールドカップで初優勝、年間チャンピオンにも輝いた 【写真は共同】

――本日はよろしくお願いします。改めまして、今シーズンはW杯中国大会で初優勝を達成し、年間チャンピオンも獲得。また、Xゲームズでも2位になるなど、中村選手にとって飛躍の1年になったと思います。この2019年を振り返って、どのようなシーズンでしたか?

中村 本当にいいシーズンでしたね。やっぱり結果が出るというのが一番分かりやすいと思うんですが、これまで頑張ってきたことが成果になって出たかなと思います。正直、広島大会のときは「まだ表彰台には立てへんかな」と思っていたんですけど、そこで2位になって表彰台に立つことができた。そこから自信もちょっとついてきて、今まで以上に練習もしましたし、その後のXゲームとかW杯中国大会とかでも結果を出すことができて、本当にいい1年でしたね。

――今シーズンが始まる前は、これだけの活躍ができる自信や予感めいたもの、手応えはあったんでしょうか?

中村 去年よりは上手くなっていると思っていましたし、去年よりはいい順位を取りたいという感じでした。ただ、「表彰台、行けるかも」とは正直思っていなかったですね。

――となると、広島大会での表彰台が中村選手にとって大きな自信になり、その後の演技の向上にもつながったということに?

中村 そうですね。その広島大会が僕的には一番大きな出来事でしたね。今年1年のターニングポイントは広島大会だったと思います。

――広島大会の結果で得た自信が、自分のその後の演技や走りに与えた影響、変化などはありますか?

中村 僕たちは1分間走って演技をするので、ルーティンというか流れが重要なんです。また、ジャッジの採点は技の難易度だけじゃなくて、完成度とか独創性など色々なカテゴリーで見られるんですが、僕自身、去年と比べると単純に難易度だけじゃなくて、全体的に成長できたなと実感していますね。

東京でやると決まってから、常にそのことが頭にある

東京オリンピックでメダルを目指すのはもちろんのこと、これをきっかけにBMXをメジャースポーツに! 【スポーツナビ】

――そうした上り調子の中で迎える2020年です。エクストリームスポーツの選手の中にはXゲームズやプロの大会をオリンピックよりも重要視している選手もいると思いますが、中村選手にとってオリンピックとはどのような位置づけになりますか?

中村 もちろんオリンピックという大会自体もすごく重要だと思っていますが、何よりも東京で開催される、しかもそれがBMXパークにとって第1回目のオリンピックということが大事ですよね。例えば次のパリオリンピックで初めてBMXパークが行われるというよりも、日本で初めてやるということにより一層気合が入るなという感じです。

――2020年のオリンピックが東京で開催されると決まったときは、まだ中村選手のBMXパークはオリンピックの正式種目ではありませんでした。そのときは東京オリンピックについてどのように思っていましたか? 「もしかしたら種目が追加になって自分も出られるチャンスがあるかも」とは考えていましたか?

中村 いえ、全然考えてなかったですね。「あ、東京でオリンピックやるんだ。なんでもいいから1競技でも見られたらいいな」と(笑)。自分とは別世界の出来事で、何か競技を見ることができたら面白そうやなぁと思っていたくらいです(笑)。

――それが2年前にBMXパークも追加になったときは、どのように思いましたか?

中村 やっぱり日本人として、日本代表として出場して頑張りたいなと思いました。新たなモチベーションにもなりましたし、東京でやると決まってから、常にそのことが頭にあるという感じですね。

―― 一方で、東京オリンピックまで1年を切った今、BMXパークやスケートボードなどエクストリームスポーツが近年にないくらい盛り上がっていると感じています。中村選手から見て、そのような盛り上がりを肌で感じる部分はありますか?

中村 ありますね。やっぱりテレビとか新聞、ネットなどメディアで取り上げていただくことがこれまでより多くなりましたし、大会だとこれまではBMXを知っている人だけが集まるような感じだったんです。でも、今はBMXを知らない方にも来ていただけるようになっているので、以前よりも盛り上がってきているなということを感じています。

――この波、チャンスを今後の自身の選手生活やBMX業界にどのように生かしていきたいですか?

中村 僕はもともと父がBMXをやっていたので、その影響で始めたんですが、例えば日本人では絶対に世界で活躍できひんという競技だと、積極的に始めようと思ってくれる人は少ないと思うんです。でも、日本人でも活躍できる、日本人でも世界一になれるということをたくさんの人たちに見せていくことができればと思いますね。

――例えば小さい子供たちが野球選手やサッカー選手を見て「自分たちもなりたい!」とあこがれるような、そうした状況がBMXでも出てきそうですね。

中村 そうですね、やっぱり野球やサッカーまではなかなかうまくいかないかもしれませんが、ああいう風になってほしいなと思いますね。

――そうなると今後、中村選手はBMXフリースタイルのアイコンのような存在としての期待もかかりますね。プレッシャーをかけるようで申し訳ないですが、東京オリンピックでBMXパークが初開催されるとなると、日本における注目度はこれまでとは桁違いになる可能性もあります。そうした“自分がBMXの顔に”という意識もすでに持っていたりしますか?

中村 もちろん、東京オリンピックには自分が出たいと思っていますし、他の日本人選手ではなくて自分が出場したいという気持ちでいます。本当に僕の結果とか行動とかがBMXのイメージにつながると思うので、いい結果もたくさん出してBMXをもっともっと盛り上げていきたいと思いますね。

――何よりもBMXパークやフリースタイルは見ていて分かりやすいですからね、カッコよさとかストレートに伝わってきますから。

中村 そうですね、ダイナミックですからね。実際にやっている側もそうですけど、自転車に乗らなくても見ているだけで楽しめる競技だと思います。

――また、競技や演技だけでなく、エクストリームスポーツはその“スタイル”や“ファッション”、それは“生き方”と言っていいのかもしれませんが、そうした部分で多くの、特に同世代の若い人たちや子供たちにたくさんの影響を与えるスポーツでもあると思います。

中村 まずはBMXを楽しむ人口がどんどん増えていってほしいなというのがあります。その点ではいい意味で言うと、BMXはまだそこまで競技人口がいない。例えばプロ野球選手に直接会えることってなかなか機会がないと思いますが、逆にBMXはスケートパークに行けば選手に会うことができますし、自転車に乗っていれば全世界の人たちとつながれます。誰でもできるスポーツだと思いますし、とりあえずたくさんの人にBMXに乗ってほしいなと思っています。

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