「プランB」と「逆算」で大会を制した侍J 決勝の韓国戦・勝負を分けたポイント

中島大輔

これ以上ない嫌な立ち上がりも……

写真に収まる侍ジャパン投手陣。大会を通して安定した投球を披露した 【写真は共同】

 2日連続の日韓戦となった「プレミア12」決勝は、侍ジャパンが想定しているなかでも最悪の展開で幕を開けた。

 今大会の過去2試合で状態の良くなかった先発・山口俊(巨人)が1回表、思うように制球できずに先頭打者のイ・ジョンフを四球で歩かせると、続くキム・ハソンにツーランを浴びる。2死後、5番のキム・ヒョンスにライトスタンドへ運ばれた。

 プレイボールの直後に3失点──。これ以上なく嫌な展開で始まったが、そこから盛り返すことができたのは、「プランB」と「逆算」があったからだ。

「1本目のホームランが出た時点で、これは(登板が)あるなと思いました」

 5日前のアメリカ戦で先発した高橋礼(福岡ソフトバンク)は2番手としていつでも行けるようにブルペンで待機するなか、即座に準備を整えた。初回に2本目の本塁打を打たれると、首脳陣は次のイニングからの登板を告げる。

「先発ピッチャーを早々に代えられたのは、後ろがしっかり決まっているからというのがありました」

 2回からの継投という決断について、建山義紀投手コーチはそう振り返っている。

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2番手の高橋が流れを引き寄せる

2回からマウンドに登った高橋。2回を無失点に抑え、流れを引き寄せた 【写真は共同】

 日本は1回裏に鈴木誠也(広島)がレフトにタイムリー二塁打を放って1点を返すと、高橋は2回表を無失点で抑えた。すると2回裏に2死から下位打線がチャンスをつくり、1番・山田哲人(東京ヤクルト)のスリーランで逆転に成功する。

 3回表は高橋にとって、流れを引き寄せる意味でも大事なイニングとなった。

 ソフトバンクで今季23登板がすべて先発だったこのサブマリンは、昨季は主に中継ぎで投げた経験がある。先発と二番手で投げる違いについて聞かれると、こう話した。

「(二番手としては)ビハインドで出ていく場面が多いので、そこでどうやって相手の打線を止められるかに気を使います。ストライク先行でどんどん来られるとバッターは差し込まれることもありますし、準備ができていない可能性もあるので、ストライク先行でどんどん投げられるといいと思います」

 この日は思うようにストライクを取れなかったものの、捕手の會澤翼(広島)はストレート主体で組み立て、「要求通りに投げられたと思う」と高橋は振り返った。

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著者プロフィール

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『プロ野球 FA宣言の闇』。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』(ともに亜紀書房)がミズノスポーツライター賞の優秀賞。その他の著書に『野球消滅』(新潮新書)と『人を育てる名監督の教え』(双葉社)がある。

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