完全アウェーで光った會澤翼の老獪さ 台湾戦・勝負を分けたポイント

中島大輔
 今永の球数は3回終了時点で64球だったが、稲葉篤紀監督は流れを変えるべく、4回から大野雄大(中日)を二番手に送る。しかし1死から二連打を浴び、一、三塁と二人の走者を背負った。

「ツーシームがもうちょっと低めにいけば良かったんですけど、(今大会)初登板ということで力んでいました」

 台湾戦の投球全体について大野がそう明かしたなか、女房役の會澤は敵地の中で冷静だった。1死一、三塁から右打者のワン・シェンウェイに対し、初球は外角低めのツーシームでストライク。すると、外角に3球続ける(ストレート2球、ツーシーム1球)。そして2ボール、2ストライクから勝負球に選んだのは、内角低めのストレートだった。

大野はピンチを招くも、要所を抑えて無失点で切り抜けた 【写真は共同】

 これが見逃し三振となり2アウト。続く1番ワン・ウェイチェンには「2アウトになったら力勝負で後は抑えようと思っていた」と大野が振り返った通り、高めのストレートでセンターフライ。5回はイレギュラーによる守備のミスも絡んでピンチを招いたが、この回も無失点に抑えた。

 侍ジャパンは6回から山岡泰輔(オリックス)、甲斐野央(福岡ソフトバンク)、岸孝之(東北楽天)、山本由伸(オリックス)と1イニングずつ刻み、相手に1点しか与えず序盤のリードを守り切った。稲葉監督は試合後、完全アウェーの中で仕事を果たした投手陣を称えている。

「今永投手はこれだけのアウェーの中で自分の投球をしてくれました。その他のピッチャーも、ランナーを出しながらもみんなが粘り強く、いいピッチングをしてくれたと思います」

 侍ジャパンは3連勝を飾り、グループB1位でスーパーラウンド進出が決定。なかでもオープニングラウンド最終戦は相手ファンの熱狂的な声援に包まれたなか、序盤のリードをしっかり守り切ったのは大きい。

 日本の武器である投手陣が粘り強く必勝リレーをつないだ一戦で、光ったのが最年長捕手・會澤の老獪(ろうかい)さだった。

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著者プロフィール

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『プロ野球 FA宣言の闇』。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』(ともに亜紀書房)がミズノスポーツライター賞の優秀賞。その他の著書に『野球消滅』(新潮新書)と『人を育てる名監督の教え』(双葉社)がある。

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