プレミア12

重い雰囲気を振り払った菊池の一打
ベネズエラ戦・勝負を分けたポイント

開幕戦は終盤まで苦しい展開に

2本のタイムリーを放ち初戦勝利に貢献した菊池(写真右)と稲葉監督
2本のタイムリーを放ち初戦勝利に貢献した菊池(写真右)と稲葉監督【写真は共同】

 プレミア12のグループB開幕戦は、侍ジャパンにとって苦しい展開で幕を開けた。4回表に1点を先制され、5回裏に2点を取って勝ち越した直後にベネズエラに3点を奪われる。打線がなかなかつながらず、8回表を終えて2対4でリードされていた。


 逆に言えば、ベネズエラのカルロス・スベロ監督にとって会心の展開だった。グループBのオープニングラウンド前日会見に登壇した直後、舞台脇でシュークリームを頬張ってリラックスした指揮官はこう話している。


「オリンピックに出ることができれば、われわれにとって初出場になる。だから、この大会は非常に重要だ。われわれのチームには優れたスカウティング網があり、日本の情報も手に入れているよ」


 各国が東京五輪への出場権をかけて臨むプレミア12は、メジャーリーガーが参加していないとはいえ、やはり一筋縄にはいかない。メジャー通算31勝の実績を誇る相手先発ドゥブロンの好投、そして初戦の緊張感も重なり、試合終盤まで侍ジャパンは重い雰囲気に包まれていた。


 そんな展開を打破したのは、強化試合のカナダ戦で受けた死球で戦線離脱した秋山翔吾(埼玉西武)とともに侍ジャパンを引っ張ってきた2番・菊池涼介(広島)だった。

【動画】8回、菊池の同点タイムリー(0:23〜)

「ピッチャーもいっぱいいっぱいだっただろうし、その中で初球からガンガン打っていこうという思いが良かったと思います」


 2点を追いかける8回裏、侍ジャパンは4つの四球で1点差とし、なお一死満塁。ここで打席に入った菊池は初球、外角高めに投じられた147キロのストレートを振り抜き、レフトへの同点タイムリーで試合を振り出しに戻した。続く3番・近藤健介(北海道日本ハム)の押し出し四球で勝ち越すと、さらに3点を加えた。


 土壇場で何とか逆転勝利した稲葉篤紀監督は、今後もデータの少ない相手との対戦が続くことについてこう話した。


「なかなかみんなが調子良く打って、というのは難しい。1つのフォアボールを選んだりする野球をしっかりやっていきながら、みんなが試合に慣れていきながら、打っていければいいと思います」

右打ちの意識がつながった5回のタイムリー

 チーム全体が初戦独特の緊張感に包まれるなか、指揮官の狙いをまさに遂行したのが菊池だった。1点を追いかける5回表、1死一、三塁からライトに技ありの同点タイムリー二塁打を放っている。


「セカンドでもファーストでも、ゴロを転がせば1点入ると思っていました。1点入ればいいなという意識がすごくあった。結果的に野手の頭を越えてくれたので良かったけど、セカンドゴロでもいいと思って入ったのが良かったです」


 相手の2番手・ソティレットが投じたのは内角への146キロツーシームで、難しい球だった。右方向への意識があったからこそ、菊池はうまく回転してライトへ運ぶことができた。


「自チームでも右打ちとか進塁打を毎年やっています。2番に入ったということは、そういうことも期待されていると思います。何とか後ろにつなげられるように。ノーサインでもセーフティ(バントヒット)をしようかなと思う打席もいっぱいありますし、自分ができることをやる。今日はそれがいい方にいっただけなので、また切り替えて、自分のできることをやれればいいかなと思います」

中島大輔
中島大輔

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に野球界の根深い構造問題を描いた『野球消滅』(新潮新書)。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』がミズノスポーツライター賞の優秀賞。