今季引退のロッテ・伊志嶺コーチが少年時代にイチローさんに教わった事とは?【千葉ロッテ選手が大切にDOする言葉】
それは小学校2年の時の出来事だ。地元・宮古島では毎年春にオリックスがキャンプを張っていた。当時のオリックスのスーパースターといえば言わずと知れたイチロー。野球にのめり込んでいた伊志嶺少年もまた、大ファンだった。
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伊志嶺少年がイチローに教わった事
「サインをください」と色紙を差し出すと気軽に応じてくれた。嬉しさのあまりに受け取るとすぐさま立ち去った。するとイチローに呼び止められた。
「ちょっと待って。もらった後はちゃんとお礼を言わないとダメだよ」
この言葉が30歳を超えた今も鮮明に残っている。
憧れのスーパースターはサインをもらったお礼を言わずに立ち去ろうとした自分を呼び止め、お礼、挨拶の大切さを教えてくれた。幼い心にも自分の行いが間違っていたこと、そして伝えてもらった言葉の価値はすぐに理解できた。忘れることの出来ない出来事であり、その後の人生を変えた。
「ボクは子供の時にイチローさんに言われたことを今も覚えている。本当に感謝をしていますし今でもあの時、お礼を言わずに立ち去ろうとした自分の事を想うと恥ずかしくなります。嬉しさのあまり舞い上がって立ち去ってしまったんですよね。それからは大きな声で感謝の気持ちを伝えることを大事にしてきました」
コーチとして鴨川での秋季キャンプに参加をしている伊志嶺は懐かしそうに当時を振り返った。
プロ野球選手になった時に意識した事
イチローには道具の大切さも教わっている。毎年キャンプ中に行われていた小中学生を対象にした野球教室。教えてくれたのは技術論ではなかった。グラブの型の作り方、手入れの仕方を熱く語ってくれた。自分のグラブを見せ「こうやって型を作るんだよ。こういうのが理想だよ」と教えてくれた。それが当時の伊志嶺少年にとって印象深い事だった。だから、道具を大切にしてきた。
それでも一度だけ悔しさのあまりバットを地面に叩きつけたことがある。プロに入って3年目。チャンスで空振り三振に倒れた場面。後にも先にもその一度だけだ。決して強い勢いで叩いたのではなく周囲からは遠慮気味に地面をボンと当てた感じに見えたが、それでも本人は強く悔いた。今でもその事を恥じている。
「道具を大切にすると決めていたのに思わずやってしまいました。プロで1度だけ。でも見ている子供たちもいたと思う。本当に悔いています」
このエピソードからも分かるように伊志嶺という男は礼儀正しく謙虚で実直。それは子供の時に出会ったイチローなどのプロ野球選手から受けた影響が大きい。
だからこそ指導を任される立場になった今、若い選手には人としての姿勢も求める。プロは見られる側であり子供たちの憧れとして影響を与える存在であることを誰よりも知っている男は指導者として次代を担う選手たちに技術論だけではなく、人としての在り方をしっかりと伝えれる人間になると決めている。
礼を重んじ道具を大事にする伊志嶺の第2の人生が始まった。
[文:千葉ロッテマリーンズ・広報 梶原紀章]
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※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。
梶原紀章(かじわら のりあき)
千葉ロッテマリーンズ広報メディア室室長。大阪府出身。関西大学卒。99年に産経新聞社大阪本社に入社しサンケイスポーツ運動部でオリックス(99〜00)、阪神を担当(01〜04)。04年限りで同社を退社し05年2月より千葉ロッテマリーンズ広報に就任。11年の営業職を経て12年6月より広報部門の統括責任者として千葉ロッテマリーンズの情報発信を担っている。千葉日報、朝日新聞千葉版、文藝春秋社文春コラムなど連載コラムは多数。
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