豪華メンバーがそろった侍ジャパン 4年前のリベンジへ、鍵は稲葉監督の見極め

中島大輔

先発3本柱で台湾ラウンドを乗り切れ

岸の台湾ラウンドでの登板がないと予想される中、投手の軸として期待される今永 【写真は共同】

 投手陣では、初戦から山口俊(巨人)、高橋礼(ソフトバンク)、今永昇太(横浜DeNA)の先発が予想される。

 10月31日のカナダ戦で2回6失点と炎上した山口だが、11月3日のブルペン練習後、建山義紀投手コーチは「ストレートの球威、コントロール、フォークボールの精度、すべてにおいて段階が上がっている」と話した。山口自身も「真っすぐのコーナーへの制球と、フォークの感触に取り組みました。感覚は良くなっているので、ゲームでバッターの反応を見ながらできると思います」と手応えをつかんでいる様子だ。

 6日のプエルトリコ戦で先発が予想される高橋は、シーズン中と同様に好調を維持している。

「マウンドの傾斜がそこまで高くなく、若干フラットな感じがします。平地に近いようなイメージで入っていけば楽かなという感じです」

 低いリリースポイントから投げるアンダースローにとって、桃園国際野球場の環境はプラスに働くかもしれない。

 そして7日の台湾戦は、今永の先発が確実だ。1日のカナダ戦では3回を投げて完璧な内容だった。

「やりたいことはすべてできたと思います。真っすぐもカットボールもカギで、特に右のインコースのカットボールの精度ですね。引っ張ってのファウルを打たせましたし、空振りも取れました。国際大会で手足の長い打者に対して、良い攻め方をできたと思います」

 沖縄でのカナダ戦前に発熱し、台湾ラウンドで岸孝之(楽天)の先発がなくなったなか、今永は今大会で先発の軸になってくるだろう。

山本‐山崎にどうつなぐか?

 ただし、いずれの先発投手とも、環境の異なる国際大会では何が起きるか分からない。例えば試合序盤で捕まったとき、ベンチがどんな継投策を打っていくのか。豊富なコマがそろっているだけに、その手腕が注目される。

 先発が早めに崩れた場合、第二先発を任せられるのが大野雄大(中日)と山岡泰輔(オリックス)だ。1日のカナダ戦で3イニングを無失点に抑えた大野が「もともと先発タイプというのもありますし、尻上がりにいくタイプだと思う」と話した一方、山岡は「いつでもいける状態を作っておくのが役割。先発も中継ぎもできることが武器だと思っています」と語った。相手打者の右と左も絡んでくるが、首脳陣がどういう意図でどちらを選択するかもカギになる。

 試合終盤の8回は山本由伸(オリックス)、9回は山崎康晃(DeNA)が控えるだけに、どうやって必勝リレーをつなぐかも見どころになる。7回を任されそうなのが、今季の巨人を支えた大竹寛、中川皓太の二人だ。

 大竹は10月31日のカナダ戦後、「だいたいの自分のピッチングはできたと思うので、あとはコントロールだけ。無駄球が何球かあったので、詰めていければ」と課題を挙げた。対して中川は翌日の試合後、「どんどんストライク先行でいくことが、良いピッチングにつながると思うので、そこはブレずに。(相手は)パワーもあると思うけど、自分の力を信じてどんどん投げ込んでいきたい」と平常心を誓っている。

 さらにポイントになるのが、大竹と中川の前だ。2017年のワールド・ベースボール・クラシックでは平野佳寿(ダイヤモンドバックス)が5、6回を任され、ストレートとフォークで抑える投球で流れを引き寄せた。今回、同じ役割を任せられそうなのが甲斐野央(ソフトバンク)だ。平野と同じタイプの右腕投手で、ルーキーながら大きな役割を担っている。

 豪華メンバーをそろえた今回の侍ジャパンは、きょう5日から始まる台湾ラウンドでチームの形をいかにつくり、東京でのスーパーラウンドに向けて完成度を高めていけるか。選手個々の適応力とともに、首脳陣の手腕が4年前のリベンジに向けて重要になる。

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著者プロフィール

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『プロ野球 FA宣言の闇』。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』(ともに亜紀書房)がミズノスポーツライター賞の優秀賞。その他の著書に『野球消滅』(新潮新書)と『人を育てる名監督の教え』(双葉社)がある。

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