白熱の3位決定戦と今大会の「日本らしさ」 サッカー脳で愉しむラグビーW杯(11月1日)
もしもサッカーW杯が日本の単独開催だったなら
取材終了後にファンの写真を撮っていたら、なぜか一緒に記念撮影することに 【宇都宮徹壱】
かくして、40-17でノーサイド。試合が予想以上に白熱したのは、オールブラックスのスティーブ・ハンセン、レッドドラゴンズのウォーレン・ガットランド両HC(ヘッドコーチ)にとってのラストマッチだったことも大きかった(前者は8年、後者は12年の長期政権)。その後、銅メダルの授賞式が行われた。勝利したニュージーランドの選手、スタッフ全員にメダルが授与される間、ウェールズの選手はずっとその様子を見守り続け、最後には全員が一列になって東西南北に深々とお辞儀をしてみせた。試合終了まで勝負をあきらめなかったウェールズは、最後までリスペクトの象徴のような存在であり続けたのである。
ところでこの試合では、後半から上皇ご夫妻が臨席されている。ご夫妻は天皇・皇后時代の3年前にも、同じく東京スタジアムで行われた日本対スコットランドのテストマッチをご観戦。これがわが国で初めての、ラグビーの国際試合での天覧試合となった。皇室とラグビーとの関係で言えば、まず「聖地」東大阪市花園ラグビー場の建設を提案した、秩父宮雍仁親王の名が思い浮かぶ(没後、東京ラグビー場は秩父宮ラグビー場となった)。その甥(おい)に当たる三笠宮寛仁親王も、ラグビーファンとして有名であった。
大会の開会を宣言した秋篠宮皇嗣殿下が、その後も釜石会場を訪れるなど、今回のラグビーW杯では皇室の存在感が目を引いた。これなども「日本らしさ」を象徴するトピックスと言えよう。ふと、17年前のサッカーW杯に思いを巡らせる。もしも2002年大会が日韓共催ではなく、日本の単独開催であったなら、今大会のような「日本らしさ」が随所に感じられるものとなっていただろう。日韓共催が良い面をもたらした点は認めるが、共催そのものがFIFA(国際サッカー連盟)の政治的妥協で押し付けられたという事実に変わりはない。そう考えると、今回のラグビーW杯が何ともうらやましく思えてしまう。