プレミア12優勝へ、投打のキーマンは? 侍ジャパンの真価が試される

中島大輔

国際大会で武器となる下手投げ投手の存在

過去、渡辺俊介や牧田和久が国際試合で活躍したように、貴重な下手投げ投手として先発・中継ぎとフル回転の起用が予想される高橋礼 【写真は共同】

 一方、投手陣のポイントについて、建山義紀投手コーチはこう話した。

「まずはボールへのアジャストですよね。結構いろいろと気を使っているピッチャーも何人かいるので、そこが第一。あとは相手バッターの反応ですね。それぞれのピッチャーに特徴があるので、その特徴を最大限に生かしたピッチングをしてくれればと思います」

 特徴という意味で、アンダースローという唯一無二の武器を誇るのが高橋礼(ソフトバンク)だ。

「(国際球の感じ?)真っすぐは大丈夫です」

 そう言って笑った高橋は、変化球に不安を残している様子だった。実際、「スライダーも課題になってくるので、そこをしっかり頑張りたい」と語っている。
 渡辺俊介や牧田和久のように、下手投げは国際大会で大きな武器となる。高橋は希少性という自身の強みを最大限に生かしたいと話した。

「アンダースローは他の国を見ても少ないと思いますし、日本のピッチャー陣の中でも一人しかいないので、試合の流れを変えられるような投球をしたいと思っています。先発するとなれば、1イニングでも長く僕のボールを見た後に速球派のボールを見るようになれば、よりゲームが締まっていくんじゃないかと思います」

 31日のカナダ戦では先発の山口俊(巨人)が2イニングを投げた後に登板予定だが、「先発するとなれば」と話したのは、30日、チームをアクシデントが襲ったからだ。山口、今永昇太(横浜DeNA)とともに先発3本柱と見られていた岸孝之(楽天)が38度超の発熱で練習を欠席し、今後先発ローテーションをどう組んでいくか、首脳陣は考え直す必要が出た。

 しかし、「我々はいつも最悪から想定しています」と言った建山コーチは、問題なしを強調している。

「岸は日々の経過を見ながらですけど、例えば岸の先発の予定があったところで誰かが代わりになると言っても、そんなことを含めて『国際試合はみんな臨機応変に』と言っている。周りが何か大きな影響を受けることはないと思います」

 岸の復帰が遅れた場合、先発候補の一人が高橋だ。

「中継ぎも、もしかしたら(大会中の)試合が長くなって決勝に行けば、先発もあり得ると言われていました」

 昨年の日米野球で、高橋は当時プロ未勝利ながら招集されて話題になった。そこでメジャーリーガー相手に威風堂々とした投球を見せ、今季はいずれもリーグ4位の12勝、防御率3.34と飛躍を果たしている。昨季まで苦手だった左打者への対策を施したというサブマリンは、今回の国際試合でも強気の攻めを誓った。

「左バッターに外(の球)を踏み込ませないように。インコースをしっかり突くことによって、左の外が踏み込まれなくなるので。怖がらずにインコースに突っ込んでいくことが大事だと思います」

 昨年の代表招集から成長曲線を描く高橋や、大学時代から日の丸を背負って戦ってきた吉田、そして2017年のワールド・ベースボール・クラシックで最年少野手として出場した鈴木がチームの顔になっていけば、侍ジャパンというプロジェクトはグラウンド面において意義深かったと言えるだろう。

 若き侍たちが鍵を握る現代表は、東京五輪の前哨戦であるプレミア12でどんな結果を残すのか。その一歩目となるカナダ戦が、いよいよ幕を開ける。

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著者プロフィール

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『プロ野球 FA宣言の闇』。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』(ともに亜紀書房)がミズノスポーツライター賞の優秀賞。その他の著書に『野球消滅』(新潮新書)と『人を育てる名監督の教え』(双葉社)がある。

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