プレミア12優勝へ、投打のキーマンは? 侍ジャパンの真価が試される

中島大輔

沖縄のファンが酔いしれた新たな主軸の快音

30日の前日練習で快音を響かせた鈴木誠也。カナダ戦、そしてプレミア12では4番での活躍が期待される 【写真は共同】

 時計の針が19時に近づき、沖縄セルラースタジアム那覇の空の色がグレーからダークブルーにすっかり変わった頃、「侍ジャパンシリーズ2019」のカナダ戦に向けた前日練習に詰めかけたファンの声援は一際大きくなった。

 日本代表の稲葉篤紀監督が4番を明言した鈴木誠也(広島)が右打席に、クリーンアップでの先発が予想される吉田正尚(オリックス)が左打席に代わる代わる入り、鋭い打球を外野の頭に飛ばしていく。目の肥えた沖縄のファンは、侍ジャパンの新たな主軸たちの快音に酔いしれた。

「(4番の期待感?)もちろん感じます。でも、あまり4番にこだわりはないので。もともとホームランバッターではないですし、とにかく塁に出てスキがあれば走ったり、得点圏だったら何かしら仕事をできればと思います」

 そう話した鈴木に対し、前日会見に出席した稲葉監督は「ホームランという長打も打てますし、勝負強さもあります」と最大限の期待を寄せた。

 4番・鈴木、そして長らく侍ジャパンを1番としてけん引してきた秋山翔吾(埼玉西武)の打順は各紙でも報じられるなか、東京五輪の前哨戦として優勝を狙うプレミア12に向けて、10月31日からのカナダとの2連戦で稲葉監督はどんな打線を組むのだろうか。

「調子も含めいていろいろ見ていきたい部分はあります。明日(31日)は、ある程度自分の中で構想を持ったメンバーでラインアップを組みたいと思っています。明後日(11月1日)に関しては、実戦という意味ではこの先大会が始まるとなかなか全員にはチャンスがありませんので、その意味でもう一つのパターンをやったほうがいいのか、2試合とも同じようにラインアップを組んだほうがいいのか。今日、明日の時点でしっかり考えながらやっていきたいと思います」

 31日のカナダ戦で組まれるオーダーは、稲葉監督の理想に限りなく近いものだろう。以下、打順を予想してみた。

1(中)秋山翔吾(埼玉西武)
2(遊)坂本勇人(巨人)
3(指)山田哲人(東京ヤクルト)
4(右)鈴木誠也(広島)
5(左)吉田正尚(オリックス)
6(一)浅村栄斗(東北楽天)
7(三)松田宣浩(福岡ソフトバンク)
8(捕)甲斐拓也(福岡ソフトバンク)
9(二)菊池涼介(広島)

 菊池を2番に置くことも考えられるが、坂本が入ったほうが打線全体の破壊力が高まる。今季巨人で2番に入り、打率.312、40本塁打、94打点の成績を残した坂本ほど“最強2番”にふさわしい打者はいないだろう。

打線のポイントになりそうな左打者

外国人投手の“動くボール”や“重いボール”に対し、日本打線がどんなバッティングを見せることができるか 【写真は共同】

 もっとも理想はあくまで理想であり、短期決戦では調子やかみ合わせを含めて臨機応変に動くことが重要になる。そこで今回の侍ジャパンでポイントになるのが左打者だ。
 上記スタメン予想では左打者が二人しかいない。秋山は1番で固定されることが予想され、もう一人の左、吉田の起用法や調子が打線全体に大きな影響を与えるだろう。

「(左がポイント?)どうですかね(笑)。自分の役割というか、ランナーがいなかったらチャンスメーク、ランナーがいたらかえすというバッティングを心がけていければいいかなと思います」

 国際試合で毎回決まってテーマになるのが、“動くボール”や“重いボール”を操る外国人投手への対策だ。実際、稲葉監督はカナダ戦のポイントについてこう挙げている。

「外国人投手を打つのはこの2試合しかありませんので、その中でどうアジャストしていくか。この2試合でしっかりやってもらいたいと思っています」

 その意味でも吉田にかかる期待は大きい。ボールを身体近くのポイントに引きつけ、卓越したスイングスピードと身体の捻転から生み出す力で強い打球を飛ばしていく。今季打率.322を残したように、アベレージの高さも持ち味だ。

 外国人投手対策を聞かれた吉田は、こう答えた。

「早くアジャストして、かつ消極的にならずに。打席の中での修正だったり、対応だったりが大切だと思います。しっかり打席の中で甘い球を仕留められるようにというところですね」

 個人的には菊池を外して山田をセカンドで起用し、球界屈指のコンタクト能力を誇る近藤健介(北海道日本ハム)を指名打者で起用しても面白いと考えている。カナダとの2戦目以降で稲葉監督がどんな使い方をするか、興味深く見ていきたい。

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著者プロフィール

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『プロ野球 FA宣言の闇』。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』(ともに亜紀書房)がミズノスポーツライター賞の優秀賞。その他の著書に『野球消滅』(新潮新書)と『人を育てる名監督の教え』(双葉社)がある。

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