ZOZOチャンピオンシップ2019連載

タイガーだけじゃない、日本が見せた底力 PGAツアー初開催の手応えと今後の課題

北村収

優勝を決めギャラリーの歓声にこたえるタイガー・ウッズ 【Getty Images】

 タイガー・ウッズの優勝で幕を閉じたZOZOチャンピオンシップ(通称ゾゾチャン)。ウッズはこの優勝でPGAツアー82勝という歴代最多勝記録を達成した。サム・スニードが1965年に打ち立てた記録に肩を並べる偉業。しかもスニードは52歳だったが、ウッズは43歳の若さで到達した。

「他の人は誰もかなわないと思っていることを、彼(ウッズ)はかなうと信じてやってきた。そして、またそれをやってのけた。膝の手術を乗り越えて、日本に来て、このコースで。82勝を達成して、みんなその次の83勝を期待していると思うよ」

 ロリー・マキロイはラウンド終了後、ウッズの偉業をたたえた。

 最後まで追い上げたが惜しくも2位に終わった松山英樹も、「とてつもない数字なので普通の人には分からない」とウッズの82勝についてコメント。また、石川遼はいろいろなイベントがあって忙しかった中でも試合にフォーカスできる切り替え力や、43歳になっても体力的な部分が充実している点を、「いろいろな意味ですごい」と称賛した。

盛り上がった大会は「メジャー大会のような雰囲気だ」

 大会自体も日本のトーナメントとしてはアメイジングだった。

 それは大会前、日本の男子トーナメントではほとんど売り切れることがない前売チケットが完売したことからスタートする。日本のトーナメントの入場チケットの値段は3,000円〜5,500円(1日)。一方、ZOZOチャンピオンシップのチケットの値段は駐車場を利用する権利がなくて12,000円〜14,000円(1日)と高額だった。

 この数倍の値段のチケットが、開幕2カ月前の8月末に完売。しかも日本のトーナメントでは販売されない練習日の6,000円のチケットも9月上旬には売り切れ。8万枚のチケットが開幕より1カ月以上も前に完売してしまった。

「メジャー大会のような雰囲気だ」と話したのは、今年の全米オープンの覇者であるゲーリー・ウッドランドだ。「われわれが来ることによって、興奮して幸せそうなギャラリーを見るのは素晴らしい」と大会を褒めたたえた。

 ウッドランドが話したように、今回のZOZOチャンピオンシップのギャラリーの歓声は日本のトーナメントにはない大きさだった。初日のスタートホールから、最終日最終組のような歓声が朝から沸き起こった。

 特に多くのギャラリーを引き連れたていたウッズの組では、「タイガー!」というギャラリーからの声援が絶えることはなかった。世界中で多くの声援を受けているウッズも、「声援がとても大きかった」と終始、上機嫌だった。

 もう一つ、普段の日本のトーナメントのとの違いは、比較的若いギャラリーや女性が多いこと。「マキロイのスイングについて友人に力説している」アスリート系の男性や、「アダム・スコットが見れたわ!」と喜んでいる女性など、PGAツアーに興味があるギャラリー層は日本のトーナメントのギャラリーとは必ずしも一緒ではなかった。

 日本のトーナメントでは1日当たりのギャラリー数が1万人を超えることはまれだが、日本で初めてとなるPGAツアーには練習日で11,063人、初日の木曜日で18,536人、金曜日が中止、土曜日が無観客試合となったが、日曜日には22,678人が訪れた。しかも前売券は売り切れ当日券も販売しなかったので、他にも会場に来たかったファンは大勢いたはず。ゴルフトーナメントをやっても人は集まらないといわれる日本でも、PGAツアーのように数万人のファンを集めることができるのだ。

ウッズを追走し、最後まで優勝争いに絡んだ松山 【Getty Images】

 日本のツアーより盛り上がっていたのは現地だけではなかった。いつもより明らかに投稿数が多かったのが、Twitter、Facebook、InstagramなどのSNS。そもそも、国内男子ツアーでは練習場やクラブハウス周りを除いて撮影は禁止されている。一方でPGAツアーでは撮影は原則OK。ただ日本の場合はシャッター音の問題もあり、日本でもスキンズマッチが行われた月曜日と練習日の火曜日はOK、本戦に関しては一部の限定ホールのみ撮影がOKとなった。「歓声がすごい!」「生タイガーを見れて感激!」など、現地からの興奮の声がSNSで拡散していった。

 参加した選手たちもさまざまな投稿を実施。ウッズの頻繁なツイートには世界中のファンが反応。バッバ・ワトソンは自らのミラクルショットの動画投稿を行うなど、選手が率先してさまざまな投稿を実施。その投稿をファンもシェアすることで盛り上がりは多くの人に拡散していった。

 SNSで見たいと思った人々を受け入れる放送や、ネットの体制も整っていた。ゴルフのテレビ中継は1〜2時間くらいの編集したものを放送するのが通常だが、大会を放送したテレビ朝日ではCS、BS、地上波で、早朝のスタートから全選手がホールアウトするまで中継。月曜日の早朝に実施された最終ラウンドの残りホールも、朝のワイドショーなどに割り込む形で異例の緊急生中継が行われた。また、ネットでは「GOLFTV」が毎日ライブ配信を行っていた。

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著者プロフィール

1968年東京都生まれ。法律関係の出版社を経て、1996年にゴルフ雑誌アルバ(ALBA)編集部に配属。2000年アルバ編集チーフに就任。2003年ゴルフダイジェスト・オンラインに入社し、同年メディア部門のゼネラルマネージャーに。在職中に日本ゴルフトーナメント振興協会のメディア委員を務める。2011年4月に独立し、同年6月に(株)ナインバリューズを起業。紙、Web、ソーシャルメディアなどのさまざまな媒体で、ゴルフ編集者兼ゴルフwebディレクターとしての仕事に従事している。

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