ストイックな接戦を制したスプリングボクス サッカー脳で愉しむラグビーW杯(10月27日)
残り少なくなった大会を惜しむ人々
試合後の新横浜駅前はご覧のとおり。土曜日の決勝が終わったら、この界隈はどうなっているのだろうか 【宇都宮徹壱】
しかし、ウェールズの気持ちが折れることはなかった。後半24分、相手のファウルにスクラムを選択すると、左サイドできれいにパスがつながり、最後にジョシュ・アダムズがトライに成功。難しい角度からのコンバージョンキックも、リー・ハーフペニーが確実に決めて三度(みたび)ウェールズが同点に追いつく。何というスリリングな展開。しかし熱戦の終焉は、あっけなく訪れる。後半36分、南アフリカがペナルティーのチャンスをものにして3点リード。そしてホーンが鳴った直後、ボールがタッチラインを割ってノーサイドとなる。ファイナルスコア19−16。南アフリカのファイナル進出が決まった。
「タフな試合内容だった。最後の4〜5分にペナルティーがあり、そこで流れが変わった。スクラムとフィジカルが強い南アフリカに対し、われわれもいいラグビーはできていたと思う。前半はボールを回せたが、フィジカルのぶつかり合いで消耗してしまった。ボールのバウンドの運もあった。それでも今大会、ここまで来られたことを誇りに思いたい。そしてニュージーランドとの3位決定戦を楽しみたいと思う」
ウェールズ代表、ウォーレン・ガットランドHC(ヘッドコーチ)の試合後のコメントである。またしても決勝進出の夢を絶たれたレッドドラゴンズ。主力選手を負傷で欠く不運もあったが、オールブラックス(ニュージーランド代表の愛称)との3位決定戦は、モチベーションあふれるゲームが期待できそうだ。そして決勝のカードは、イングランド対南アフリカに決定。視察に訪れていたエディー・ジョーンズHCは、どんなプランを巡らせながら5日後のファイナルに臨むのだろうか。こちらについても興味は尽きない。
取材を終えて新横浜駅に向かうと、観戦を終えた各国のファンたちがビールをあおりながら盛り上がっている。ウェールズや南アフリカだけでなく、アイルランドやスコットランドやオーストラリアのファンの姿も見える。みんな楽しそうでありながら、間もなく閉幕となる大会を惜しんでいるようにも感じられた。残すは今週金曜日の3位決定戦、そして土曜日の決勝のみ。フィナーレの瞬間は、刻一刻と近づいている。