日本代表の工夫を抑え込んだ南アの戦略 データで振り返るW杯準々決勝
苦しんだスクラム、ラインアウト
スクラムは予選プールでは安定していたが、南アフリカ代表相手には苦しんだ 【Photo by Yuka SHIGA】
また相手に身長2メートルを超えるLOがそろうラインアウトでは、南アフリカ代表は成功率100%だったが、日本代表は13回中、5回ボールを失っており62%の成功率に終わった。ラインアウトが安定しなかったことも、いいアタックができなかったことの大きな要因となった。また相手の武器だったドライビングモールに対して、後半26分には40メートルほどの前進を許してしまい、そのまま失トライにつながった。
日本代表のジェイミー・ジョセフHCも「まずスピードをこちらがつくらないといけないが、セットプレーでもミスをしたし、ディフェンスも強かった」と南アフリカ代表を称えた。アタッキングチームである日本代表がトライを取れなかったのは、やはり、相手のキックとディフェンスを主体とした戦略、強力なセットプレーにやられたことが大きかった。
9月の試合とは違ってWTBやFBのキック処理も安定しており、No.8の姫野和樹を下げてカウンターアタックを仕掛けたり、攻めに勢いがなくなった際はハイパントキックを使って崩そうとしたり、WTB福岡にスクラムのボールを投入させてアタックさせたりと工夫を見せたが、結局、ゴールラインは遠かった。
コンディション、選手層の差
今大会の全5試合に先発し、素晴らしい活躍を見せたCTB中村亮土 【Photo by Yuka SHIGA】
予選プール突破を目標にしていたチームと、決勝トーナメント以降をターゲットにしてきたチームとのコンディション、選手層の差が出てしまったことは否めない。相手の強力なタックルを受けたことも相まって、後半はチームにエネルギーがあまり残されてなかった。それでも最後まで戦う姿を貫いたことは、ホームの大声援の後押しがあったからに他ならないだろう。
財産になる決勝トーナメントの経験
試合後、ファンに感謝を伝える田中史朗(中央)と田村優 【Photo by Yuka SHIGA】
ラグビー界では欧州の「シックスネーションズ」こと6カ国と南半球の「ザ・ラグビーチャンピオンシップ」の4カ国の計10のチームを「ティア1」と呼んできたが、日本代表も十分に「ティア1」に肩を並べる強さを見せたことは間違いない。
予選プールで3試合が行われなかったものの、準々決勝までの観客は140万人を超えた。テレビ視聴率も南アフリカ戦は平均41.6%を記録し、海外メディアは日本代表の戦いを称賛した。日本だけでなく世界のラグビーシーン、スポーツシーンに日本代表が大きなインパクトを残すことに成功した大会となった。