ZOZOチャンピオンシップ2019連載

石川遼は今季、なぜ復活できたのか? 復活の軌跡と2年ぶり米ツアー参戦の期待

北村収

日本に戻った直後に5試合連続予選落ち

日本に戻ってきてからも苦しみ続けた石川だが、今季2勝を挙げるなど見事に復活を果たした 【写真は共同】

 2017年10月、米国・フロリダで開催された米ツアー入れ替え戦、賞金ランキングで上位に入れなかった石川遼は、13年から主戦場としていた米ツアーの出場権を喪失した。とても厳しくつらい思いをした石川だったが、日本に帰ってからの試練はさらに過酷だった。

 帰国後すぐに秋の日本ツアーに参戦するが、まさかの5試合連続予選落ち。将来の活躍を見据えたスイング改造が、早速暗礁に乗り上げた。「練習場では結構良い感じで打てている」というショットが、なぜか石川に注目する大ギャラリーの前では曲がることが多かった。

 次のダンロップフェニックストーナメントでは、「自分からお願いして入れてもらった」と中嶋常幸、松山英樹と一緒に練習ラウンド。復調の手がかりを探した。さまざまな努力の成果か、この試合でやっと決勝ラウンドに進出。「予選落ちがずっと続いていたので、精神的な落ち込みが少なからずあった。ただ、そういうのも覚悟の上でやりたいことがあったし、遅かれ早かれ自分の中で取り組まないといけないことだった」と振り返った。

 その結果、ホストプロとして参加したカシオワールドオープンで優勝争いに加わるという明確な成果を残す。最終日に追い上げ2位タイに入る活躍を見せたのだ。「(4日間で)20アンダー近くを目指してやれそうな内容」とスイング改造、そして課題だったショートゲームに手応えを感じた状態で、17年のシーズンを終えた。

 日本ツアーの選手会長にも就任した18年シーズン、幸先の良いスタートを切った。4月の国内開幕戦では最後まで優勝争いを展開。結果は2位だったが、近い将来の優勝を期待させる活躍だった。しかし、18年は3位以内が3回あったものの、勝ち星には恵まれなかった。最終戦の日本シリーズでもプレーオフまで持ち込んだが、惜しくも2位に終わった。

1カ月の休みが復活への土台を作る良い機会に

日本プロゴルフ選手権で3年ぶりの優勝。トロフィーを手に大喜びの石川 【写真は共同】

 そして2019年。石川は序盤から故障で苦しんだ。4月の国内開幕戦「東建ホームメイトカップ」を腰痛で欠場。5月頭の「中日クラウンズ」の初日に悪化させ、2日目のスタート前に棄権。その後は約1カ月試合から離れることになった。

 復帰戦となったのは6月の「日本ゴルフツアー選手権」だった。「やっぱり緊張しました。どんな酷いプレーになるのかなとか、そういう気持ちもあった」という初日は、62位タイと出遅れ。しかし、徐々に順位を上げていき、ギリギリで予選通過を果たし、最終的には20位タイに入った。「これだけ自分の中で変化を感じられて、足を使ってスイングするということに対して、腰の怖さがなくなっているというのは、良いスイングになってきているサイクルに入ってきている感じがする。正直、この次の試合も楽しみ」と試合後に語った。

 今回テレビ解説を行う米ツアー3勝の丸山茂樹も、1カ月の休みが石川復活のポイントだと話す。

「1カ月の休みの間に、体を作ったり、違う練習方法を取り入れたりして、この何年間かすごく苦労してきたことに少し良い材料が見つかったように思います。僕も彼がラウンドを終わった後にインタビューした時に、『あ、もうバレていますね』と言われました。今のところ継続して成績が出ているので、そこにもしかしたら良い方向に向かった何かがあるのかな。ヒントがあるのかなとは思う」(丸山)

 石川が感じた復活への手応えは、すぐに明確な結果となって現れた。日本ゴルフツアー選手権の約1カ月後に開催された「日本プロゴルフ選手権」で優勝を果たしたのだ。

「自分なんかよりも、ギャラリーの皆さんの方が信じて待ってくださっていて、どんな時でも応援をしてくださっていたので、本当に皆さんの力で勝てました。ありがとうございます」

 本人だけでなく、ギャラリー、関係者の多くも涙した3年ぶりの復活優勝だった。

 さらにファンを喜ばせたのは、2試合連続となる8月の「長嶋茂雄INVITATIONALセガサミーカップ」の優勝。復活どころか、09年に18歳で達成して以来の賞金王、さらには来年の五輪出場まで期待させる活躍ぶりだった。

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著者プロフィール

1968年東京都生まれ。法律関係の出版社を経て、1996年にゴルフ雑誌アルバ(ALBA)編集部に配属。2000年アルバ編集チーフに就任。2003年ゴルフダイジェスト・オンラインに入社し、同年メディア部門のゼネラルマネージャーに。在職中に日本ゴルフトーナメント振興協会のメディア委員を務める。2011年4月に独立し、同年6月に(株)ナインバリューズを起業。紙、Web、ソーシャルメディアなどのさまざまな媒体で、ゴルフ編集者兼ゴルフwebディレクターとしての仕事に従事している。

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