「ラグビーどころ」の威信を懸けた運営 サッカー脳で愉しむラグビーW杯(10月9日)

宇都宮徹壱

驚くほどスムーズだったシャトルバス運行

試合終了後、観客に笑顔でハイタッチを繰り返す熊谷会場のボランティア。米国とアルゼンチンの観客もうれしそうだ 【宇都宮徹壱】

 それぞれの国技がサッカーとアメフトという、アルゼンチンと米国。どちらもラグビーでは、真正面からぶつかっていくスタイルなのが興味深い。しかし真っ向勝負では、アルゼンチンに一日の長があった。後半3分、8分、15分、そして30分にもトライとゴールに成功(このうち2トライを決めたフアンクルス・マリアはMOMに選出された)。米国も19分に負傷を抱えたラシケが、そして40+1分にはスカリーがトライを決める。しかし最後のコンバージョンに失敗して、そのままノーサイド。スコアは47−17だった。

 アルゼンチンは、これが今大会最終戦。この勝利で、プールCの3位を確定させた。敗れた米国は、中3日でトンガと東大阪で最終戦を戦う。文字通りの消化試合となるが、どちらも今大会初勝利を目指して頑張ってほしいところだ。一方、この日訪れた熊谷会場も、これが最後の試合開催。スタジアムを出る時に印象的だったのが、ボランティアスタッフの対応である。笑顔で手を振りながら観客を見送り、外国人には英語やスペイン語で声をかけてハイタッチする。実に素晴らしい運営であった。

 埼玉県では昔から「サッカーは浦和、野球は大宮、ラグビーは熊谷」と言われている。サッカーの取材で訪れる際、熊谷といえば、天皇杯などで訪れると必ずと言っていいほどバスが渋滞に巻き込まれ、行きも帰りもうんざりする記憶しかなかった。しかし今大会は「ラグビーどころ熊谷」の威信を懸けて、シャトルバスの運行は驚くほどスムーズ。交通規制がかかっていたこともあり、10分ほどの乗車でスタジアムに到着することができた。その「奇跡」を体感できただけでも、熊谷を訪れる価値はあったと思う。

 さて、この日は他に2試合が行われ、ウェールズがフィジーに29−17で勝利して決勝トーナメント進出を決めている。一方、ロシアと対戦したスコットランドは、サモア戦から先発14名を入れ替えながら61−0で圧勝。ボーナスポイントを加えて、日本に4ポイント差の勝ち点10とした。日程的に不利な状況にあるスコットランドは、選手層の厚さを生かしながら日本との直接対決に臨む。しかし試合が行われる日曜日は、やはり台風19号の関東上陸は不可避な情勢だ。「別会場での無観客試合」という報道もあるが、果たしてどのような決定が下されるのだろうか。続報を待ちたい。

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著者プロフィール

1966年生まれ。東京出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。旅先でのフットボールと酒をこよなく愛する。著書に『ディナモ・フットボール』(みすず書房)、『股旅フットボール』(東邦出版)など。『フットボールの犬 欧羅巴1999−2009』(同)は第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞。近著に『蹴日本紀行 47都道府県フットボールのある風景』(エクスナレッジ)

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