ラグビーW杯2019特集

「ラグビーどころ」の威信を懸けた運営
サッカー脳で愉しむラグビーW杯(10月9日)

熊谷ラグビー場に向かう途中でアクシデント

熊谷駅前に立つ、ラグビーボールと少年のモニュメント。熊谷市は関東随一の「ラグビーどころ」として知られる
熊谷駅前に立つ、ラグビーボールと少年のモニュメント。熊谷市は関東随一の「ラグビーどころ」として知られる【宇都宮徹壱】

 ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会2019は17日目。プール予選も終盤戦に入り、すでにイングランドとフランス、ニュージーランド、南アフリカが決勝トーナメント進出を決めている。オーストラリア、そしてウェールズといった伝統国がこれに続くのは時間の問題だろう。最も混戦状態となっているのが、日本とアイルランドとスコットランドが同居するプールA。プール予選最終戦、日本がスコットランドに勝利すれば文句なしの1位通過となるのだが、心配なのが台風19号の進路である。


 天気予報によれば、勢力が強いこの台風は、今週末に関東地方に上陸する可能性が高いとのこと。福岡でアイルランド対サモアが行われるのが土曜日、そして横浜での日本対スコットランドが日曜日である。プール予選では中止となった場合、再試合は行わずに引き分け扱いとなる。このうち1試合でも中止になれば、その時点で日本のベスト8進出が決まるわけだが、やはり歴史的な瞬間はスタジアムで迎えたいもの。今はただ、台風のコースがそれてくれることを願うばかりである。


 さて、この日は埼玉県の熊谷ラグビー場で開催される、アルゼンチン対米国の試合を取材することになっていた。キックオフは13時45分。平日の昼開催に、果たしてどれだけの観客が集まるのだろうか。それでも新宿駅4番線ホームには、熊谷に向かう湘南新宿ラインを待つ、アルゼンチンと米国のファンの姿で溢れていた。問題は、ダイヤの乱れで列車の到着がかなり遅れていること。結局、ホームで20分近く待たされたが、その間に英語でのアナウンスは一度もなかった。彼らは無事、熊谷までたどり着けただろうか──。


 そんなことを考えながら車内で原稿を書いているうちに、窓の向こう側に田園風景が広がっていることに気づく。嫌な予感がして顔を上げると、次の停車駅が「古河」と表示されているではないか! 何と、同じ湘南新宿ラインでも、私は宇都宮行きに乗ってしまったのである。他人の心配をしている場合ではなかった。慌てて古河駅で下車して、上り電車に乗車。大宮駅で特急草津に乗り換え、13時1分に熊谷駅に到着する。幸い、シャトルバスがスムーズだったので、ぎりぎりキックオフに間に合うことができた。

平日昼開催でも入場者数は2万4377人!

ラグビータウン熊谷のコンセプト 「スクマム!クマガヤ」の関連グッズ。街のガイドブックとうちわを兼ねたすぐれもの
ラグビータウン熊谷のコンセプト 「スクマム!クマガヤ」の関連グッズ。街のガイドブックとうちわを兼ねたすぐれもの【宇都宮徹壱】

 アルゼンチンと米国が所属するプールCは、前述のとおりイングランドとフランスがベスト8進出を決めており、その意味では「消化試合」である。しかしながら、今大会でプール3位となれば次回2023年大会の予選は免除される。現在、アルゼンチンが3位で米国は5位。1試合少ない米国が2連勝すれば、4試合を終えているアルゼンチンを抜いて3位に浮上する可能性がある。逆にアルゼンチンとしては、南半球では4番目の伝統国としての誇りに懸けて、今大会のラストゲームを勝利で飾りたいところだろう。


 興味深いのが米国である。4大メジャースポーツに加えて、開幕から間もなく四半世紀を迎えるMLS(メジャーリーグサッカー)も、すっかり人気コンテンツのひとつとなった。そんな中、長年にわたりマイナースポーツに甘んじてきた、かの国のラグビー。しかしここに来て、MLR(メジャーリーグラグビー)なる新たなプロリーグが誕生して、今年で2年目になるという。MLSのビジネスモデルを参考にしたMLRが、どのような影響力を発揮するのか。スポーツ大国でのラグビーの今後が気になるところだ。


 この日のアテンダンスは2万4377人。平日の昼間にこの人数が集まったことに、あらためて驚きを禁じ得ない。最近の報道によれば、今大会のチケットはほぼ完売とのこと。つまり、平日昼でも日本絡みの試合でなくても、スタンドが埋まることが約束されたということになる。ざっと見たところ、この日の観客の8割くらいは日本人。残り2割は当該チームのファンといったところか。アルゼンチンのファンは「オレオレオレオレ・ラララララ」とサッカーと同じ歌声。対する米国は「USA! USA!」の大合唱である。


 開始2分、いきなり米国12番のポール・ラシケが負傷でピッチを離れる。5分後に治療を終えて復帰したラシケだったが、包帯に少し血がにじんでいるのが気になるところ。試合はアルゼンチンが優位に試合を進め、18分、24分、34分に連続トライ。このうち2本のコンバージョンを決めて、19−0と米国を圧倒する。それまで劣勢に回っていた米国も前半38分、機転を利かせたキックから、バウンドしたボールをブレーン・スカリ−が飛び込んでトライに成功。しかしコンバージョンには失敗し、前半は19−5で終了した。

宇都宮徹壱
宇都宮徹壱

1966年生まれ。東京出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。旅先でのフットボールと酒をこよなく愛する。著書に『ディナモ・フットボール』(みすず書房)、『股旅フットボール』(東邦出版)など。『フットボールの犬 欧羅巴1999−2009』(同)は第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞。近著はスポーツナビでの連載をまとめた『J2&J3 フットボール漫遊記』(東邦出版)

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