ラグビーのルールがもたらした感動 サッカー脳で愉しむラグビーW杯(10月5日)
最後までボーナスポイントを目指した日本
最高に幸せな気分に浸りながら帰路につく人々。来週の横浜でも同じ光景を目にすることができるだろうか 【宇都宮徹壱】
後半35分、途中出場の福岡堅樹が、アイルランド戦に続くトライを決めてサモアを突き放す。田村のコンバージョンは失敗したものの、これで31−19。残り時間を考えれば日本の勝利は確実だろう。やがて、後半の40分終了を告げるホーン。しかし、あと1ポイントを得たい日本はもちろん、サモアもまた試合を終わらせようとはしない。サモア陣内の深い地点でスクラムを繰り返す中、ラストチャンスをモノにしたのは日本。松島の機転を利かせたプレーが4トライ目を生み、田村のコンバージョンキックもポールの内側に当たってゴールが認められた。そして、ノーサイドのホイッスル――。
個人的な実感としては、今回のサモア戦はアイルランド戦以上に、観る者に感動を与える試合だったと思う。その大きな要因となったのは、やはりボーナスポイントの存在。前回大会で3勝1敗としながら、ボーナスポイントの差でベスト8進出を果たせなかった苦い経験が、最後まで攻め続ける日本の原動力となった。これがサッカーであれば、最後は勝ち切るためのパス回しを選択しただろう。もちろん、ルールが違うのだから当然の話。この日の感動は、まさに「ラグビーのルールがもたらした感動」とも言えよう。
これで日本は予選プール3連勝。そして4トライでボーナスポイントがプラスされ、勝ち点14で再び首位に立った。2試合を残すスコットランドは、最大で勝ち点を15に伸ばす可能性があるため、日本は「まだ何も手にしていない」状態。それでも今は、2002年以来となる、最高に幸せな気分だ。国民の期待がさらに高まるのは間違いないが、今の日本代表であれば、そうした重圧をも力に変えてくれることだろう。来週日曜日のスコットランド戦では、さらに大きな喜びが私たちにもたらされますように。