連載:スポーツマネジャーという仕事

コート準備で砂粒の大きさや色の管理も ビーチバレーボール、テスト大会の裏側

構成:平野貴也

7月にオリンピックのテストイベントを兼ねて行われたビーチバレーボールワールドツアー東京大会で、各種テストが行われた 【Getty Images】

 東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(以下、組織委員会)で活躍する「スポーツマネジャー」。各競技の運営責任者として国内・国際競技連盟等との調整役を務め、大会を成功に導く重要な責務を担っている。

 バレーボールのスポーツマネジャーを担当する藤野隆弘さんは、7月にオリンピックのテストイベントを兼ねて行われた「FIVBビーチバレーボールワールドツアー2019 4-star東京大会」で、各種テストを行ったほか、急きょ確認が必要になった事項の調整等に奔走(ほんそう)していた。テストイベントでは、どのようなことを行ったのか。藤野さんに話してもらった。

本大会でも使う砂を3000トンも輸入

1コートで約400トンが必要になる砂は、本番と同様のものが使用された 【Getty Images】

 東京2020大会のテストイベントでは各競技とも、主に「競技運営、テクノロジー、運営スタッフ」の3点に重点を置いてテストを行っています。ビーチバレーボールにおいてはまず、競技運営の部分では、備品となる砂のテストを行いました。

 ビーチバレーボールで使う砂は、粒の大きさが1〜2ミリが6%以下、0.25〜0.5ミリと0.5〜1ミリの砂が80%以上92%以下など、粒度やバランスなどの規定が細かく決まっています。砂の色が白すぎると太陽の光が反射してまぶしいですし、黒すぎると光を吸収して砂が熱くなってしまいます。使用する砂は、国際バレーボール連盟(F1VB)が指定する海外にある砂の検査機関のチェックを通過したものでなければなりません。本大会も想定しながら、国内外から8つの地域の砂をサンプルとして検査機関に提出し、そこで合格した中からベトナム産の砂を使用することになりました。

 1コートで約400トンが必要です。オリンピックでは7面を使用するので、本大会用では予備も含めて約3000トンが必要になります。前回、スポーツマネジャーは、各機関の調整を行うということをお伝えしましたが、今回の砂に関しても、大会を主催するFIVBからさまざまなアドバイスをもらい、本大会での使用も想定してテストを行いました。砂の感触は選手にとってプレースタイルが変わるほど大事なポイントとなります。また砂の水はけのよさなどの確認も行いました。今回使用した砂はFIVBからも好評を得ることができたので一安心といったところです。

東京2020大会のイメージを印象づけるスタッフたち

大会時は日光で砂の温度が非常に熱くなるため、いかに短い時間で効率的に水をまけるかが重要となる 【Photo by Tokyo 2020】

 テクノロジーに関しては、本大会と同様の機器・システムを用意し、選手の情報、得点経過、プレイの情報などを入力して、スコアボードやWEBサイトなどに表示される情報がきちんと得られることを確認しました。

 スタッフに関しては、普段、国内で開催されるビーチバレーボール大会の運営を手伝っていただいている方々を中心にご協力いただきました。

 試合中に砂をならしたり、水を撒いたりするのですが、試合が遅延しないように素早く対応していたことなどがFIVBから高く評価されていましたし、選手へのアンケートでも「とてもフレンドリーで、なおかつきちんと仕事もこなしていたことを高く評価する声が多くありました。海外から来る選手やスタッフがどう感じるかが、東京2020大会のイメージがどんなふうに心に残るかを決めると思っているので、スタッフが高評価を受けたことは、スポーツマネジャーとしてすごくうれしかったです。

本大会に向けて、さまざまな会議に参加している藤野さん(奥の左から2人目) 【Photo by Tokyo 2020】

 もちろん、表舞台の確認や調整だけでなく、裏側では今回も組織委員会とFIVB役員とのミーティングを急きょ設けるなど、いろいろな調整も行っていました。大会に関わる方が一堂に会する機会で、ミーティングができる良いチャンスでもあり、本大会に向けたさまざまな調整を行うことができました。

 今回は、過去のオリンピックに出場した選手に集まっていただき、国際オリンピック連盟(IOC)が浸透を促進している「OLY(オーリー)」(元オリンピック選手)の呼称を周知するイベントも行いました。実は大会の2週間前くらいに出てきた話でしたが、無事に行うことができてよかったです。

まだまだ多くのシミュレーションが必要

暑さ対策など、天候の影響も考えた多くの対策が必要となってくる 【Getty Images】

 テストイベントは概ね順調に進んだのですが、試合中にリオデジャネイロ2016大会王者のブラジル人選手が暑さで体調不良に陥っていました。選手に関しては、冷房の効いた部屋、アイスバス、氷などさまざまな準備をしていますが、本大会になれば、試合数が増えるので試合開催時間も期間も長くなります。観客やスタッフの数も今大会よりさらに増えることになります。暑さ対策に関しては、現在、テストイベントを通して得た課題を検証し、組織横断的にさまざまな対策が検討されていますが、私たちも体調管理を考慮したスタッフのシフト管理を行うことがより一層重要だと感じました。

 天候の影響が心配なのは、暑さばかりではありません。今回は大会期間中に台風直撃のおそれがあり、気象庁や組織委員会の気象チームの情報などを活用しながら、さまざまなシミュレーションをしました。

 また、日本に住み慣れた方なら「少し揺れたな」としか感じない程度の地震があったのですが、これまで地震を経験していない外国の選手や役員が動揺するといったこともありました。イレギュラーなケースにどうやって対応するかは、もう一度、シミュレーションをしていきたいと思います。

 今回のテストイベントで得たこれらの学びを生かして、東京2020大会の成功を目指して引き続き最善を尽くしていきたいと思います。

プロフィール

藤野 隆弘(ふじの たかひろ)
1987年、神奈川県出身。成城大学卒、筑波大学大学院修了。高校、大学とバレーボール部に所属。2010年より公益財団法人日本バレーボール協会において世界選手権、ワールドカップ、ワールドグランドチャンピオンズカップ等の主要バレーボール国際大会の運営に携わる。現在は、公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会のバレーボールスポーツマネジャーとしてバレーボール、ビーチバレーボールの競技運営を統括している。
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