花園で本領発揮「空飛ぶフィジー人」 サッカー脳で愉しむラグビーW杯(10月3日)
「聖地」花園ラグビー場について
花園ラグビー場で出会ったフィジーのファン。選手のような巨漢をカラフルなコスチュームが包む 【宇都宮徹壱】
今大会を取材するにあたり、日本代表の試合以外は、対戦カード以上に会場選びを重視している。決勝トーナメント以降の会場は、東京、横浜、大分のみ。ならばプール予選の間は、できるだけ多く地方の会場を訪れておきたい。サッカーのW杯がそうであるように、ラグビーのW杯もさまざまな土地を訪れる楽しみがあるし、とりわけ今大会は「2002年との比較」という視点は必須。今大会が特徴的なのは、17年前のレガシー(スタジアム)を活用しつつ、いわゆる「ラグビーどころ」もしっかり組み込まれていることだ。
今大会の12会場のうち、ラグビー専用のスタジアムは3つ。すなわち、釜石鵜住居復興スタジアム、熊谷ラグビー場、そしてこの日訪れる東大阪市花園ラグビー場である。このうち最も伝統と格式があるのが、花園ラグビー場。「花園」は高校野球の「甲子園」と同じくらい、高校ラグビーの聖地として有名である。その歴史は古く、1929年(昭和4年)に開場。サッカーのW杯が初めてウルグアイで開催された前年に、わが国でラグビー専用スタジアムが作られている歴史的事実に、まず驚かされる。
スタジアムへのアクセスは、近鉄けいはんな線吉田駅から徒歩15分、あるいは近鉄奈良線東花園駅から徒歩10分。この日は吉田駅から出ている、無料シャトルバスを利用した。いかにも大阪らしく、ボランティアスタッフの皆さんがフレンドリーなので、こちらも思わず頬が緩む。そして初めて訪れる、高校ラグビーの聖地。昨年の大規模な改修工事を経て、日本最古のラグビー専用スタジアムは、2万6544人収容の国際大会にふさわしい会場に生まれ変わっていた。
パワーのジョージアと機動力のフィジー
ジョージアのファン。以前の国旗はワインレッドを基調としており、今もジャージに採用されている 【宇都宮徹壱】
この日の対戦カードについて触れておこう。このところティア1(伝統国)対ティア2の取材が続いていたが、プール予選ではティア2同士のカードのほうに面白さを感じている。きっ抗した試合となることが多く、しかもそれぞれ持ち味を出しやすいからだ。2日時点での最新の世界ランキングでは、ジョージアが11位でフィジーが12位。いずれも2試合を終えており、ジョージアはウルグアイに勝利して5ポイント。フィジーは2敗しているものの、ウルグアイ戦で2つのボーナスを獲得して2ポイントとなっている。
ワインレッドのジョージアの愛称は「レロス」。もともとこの国には、レロという伝統球技があり、これがジョージアのラグビー人気に起因しているとされる。W杯出場は、2003年の第5回大会から。第1回大会が行われた1987年は、独立国家としてのジョージアは存在せず、「グルジア」の名前でソビエト連邦に組み込まれていた。もともとソ連代表に多くのラガーマンを供出していた歴史があり、また格闘技が盛んなお国柄ゆえに、パワーを前面に押し出したスタイルを身上としている。
一方のフィジーは、南太平洋に浮かぶ人口90万足らずの小さな島国。それでもオセアニアを代表する強豪のひとつで、W杯には95年大会を除いてすべて出場、ベスト8には2回進出している(87年と07年)。トンガやサモアとは異なり、フィジーはパワーよりもテクニックと機動力にストロングポイントを置いている。「フライング・フィジアンズ(空飛ぶフィジー人)」というニックネームは、そのプレースタイルに由来するらしい。今回のゲームは、パワーと機動力がぶつかり合う一戦が期待できそうだ。