全日本女子が世界に取り残されないために バレーW杯5位から学んだこととは?

田中夕子

全勝Vの中国をターゲットに

今大会全勝Vを遂げた中国を相手に互角以上の戦いをしてこそ、メダルへの道も開くのではないか 【写真:坂本清】

 内容もさることながら、結果が伴わず、自信を失いかけていた中での3連勝。安どする一方で、誰も、この結果に満足はしていない。

 特に全勝で優勝を遂げた中国の強さは圧倒的で、荒木絵里香が「自分たちも“メダル”と言っているけれど、こんな戦いをしていたらそういうレベルにいない、と改めて痛感させられた」と言うように、個の技術も精神力もチーム戦術や組織力に至るまで、すべてにおいて中国が完全に上回っていた。

 明確になった世界との差を埋めるために何が必要か。中田監督はこう言った。

「大阪での3連戦は良くなっていたと思いますが、この結果は全然。満足などできません。私が佐藤に伝えたいのは、とにかく中国戦だけ見なさい、と。あの試合、1本1本がすべてだと思う。それはセッターとして徹底的に分析すべきだと思うし、もちろんそれは私たちも同じ。中国をターゲットとして課題と反省、分析をしないといけないと思います」

 中国を筆頭とする上位国もさることながら、最下位のカメルーンも常に4枚攻撃を仕掛ける意識を持ち、これまでは攻撃が偏る傾向が強かった韓国もイタリア人のステファノ・ラバリーニ監督が就任し、「誰かの打数を増やすのではなく、全員が攻撃するバレーを目指している」と言うように、変貌の兆しは今大会でも十分感じさせた。

 世界が目まぐるしい変化を遂げる中、取り残されないために何をすべきか。他国の指揮官が日本の長所として掲げる「レシーブ」や「スピード」を個々の技術として考えるのではなく、世界と戦うために、いかに「組織」として形成できるか。選手たちが「個々のレベルアップ」を課題として口々に掲げるように、トップチームのみならず、バレーボール界全体に突き付けられた課題と捉え、組織として選手選考からコンセプト。10カ月後に迫る東京五輪へ向け、もう一度、徹底検証が必要であるのは間違いない。

 横浜、札幌での苦しさ、悔しさと向き合い、大阪で光を見出した要素は何だったのか。敗れた5試合、そして最終戦で与えられたヒントが、この先へつながる道しるべになるはずだ。

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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