全日本女子が世界に取り残されないために バレーW杯5位から学んだこととは?
それぞれが責任にかられ、悪循環が続く
セッターの佐藤美弥(12番)は「自分が試合を壊してしまった」と自責の念にかられた 【写真:RASP/RYUMAKINO】
「自分の中で前の試合とは違う位置からの攻撃を増やしていきたいと思いつつ、うまく絡められなかった。特に前衛2枚の時、ミドルの攻撃をどこに入れるか。いろんな選択を考えていたんですけれど、なかなかリズムがつくれず、レフト、レフトになってしまってブロックが偏る。相手もマークしてくるけれど、そこで1本外すとか、使い分けていかなきゃいけないのに使えない。セッターの自分が試合を壊してしまったと思います」
大会前は、課題克服に向け、攻撃力を高めるべく黒後愛をセッター対角の位置に入れるパターンも形成してきた。だが大会直前に黒後がケガで前半は出場がかなわず、同様の役割を期待された長内美和子が出場し、活躍する試合もあったが相手も限られ、上位国のチームに対してはさまざまなパターンを実践できたわけではない。
では新鍋を代えればいいのか、といえばそうでもない。バックアタックへの攻撃参加という一面で見れば、確かに新鍋が入れば枚数は減る。だが、相手の強打に備えるレシーブや、サイドブロックの位置取り。中田監督が言う「ここ一番の決定力」など、最終日のオランダ戦で見せたように、新鍋の果たす役割は誰にでも担えるものではない。
とはいえ攻撃の枚数は減る。新鍋もその矛盾と、葛藤していた。
「自分が打つ時に誰もフォローがいない状況になるのが、スパイカーからすると不安なんです。特に今回は『被ブロックが多い』と言われていたので、しつこくフォローに入ったほうがいいと思ったし、点数を取れる選手は他にもいっぱいいる。攻撃参加も大事だけれど、それよりフォローが手薄になることのほうが怖い、という気持ちのほうがありました」
各々が役割を果たしているのだが、負けが続いて黒星が先行すれば気持ちに焦りや不安が生まれる。トスが短くなったり、本来の守備位置とは違う位置まで突っ込んだり、連携面のイージーミスも生じる。決してそれが誰かのせいではないにもかかわらず、佐藤は「セッターの自分の責任」と背負い、古賀は「自分のタイミングがつかめず、思い切り入れないし、どこかで『ミスをしたら交代させられるから、ミスをしないように』という発想が先行した」とネガティブなイメージをぬぐいきれない。
それぞれが自分に責任を抱え、黒星が増えていく。悪循環は続いた。
リベロ小幡の進言で光明差す
リベロの小幡真子(写真左)が「1本目のパスを高くしよう」と進言。これが光明となる 【写真:坂本清】
2セットを取られ、第3セットに入る直前、リベロの小幡真子が、サーブレシーブやチャンスボールの返球を含めた「1本目のパスを高くしよう」と進言した。
「札幌ラウンドまでは、ファーストタッチ(1本目のパス)を突いて返すバレーが浸透していた。チームのコンセプトとして、いける時は速く返して、相手ブロックが完成する前にたたこう、というのがあったので、バタバタしている状態でもとにかく速く、速く、と思っていました。でも、それでは準備ができず、攻撃枚数が減る。パスが速くなると、どうしてもレフトに偏ってしまっていたけれど、少し間をつくることでライト、ミドルも使える。当たり前のことですが、改めて徹底してできたのが、いい方向へ行ったと思います」
ほんのわずかな間ではあるが、そのわずかな違いが佐藤にも余裕を与えた。
「それまではファーストタッチが速いという意識はなく、自分が間をつくれていないと思っていました。でもパスに余裕ができたら多くの選択肢ができて、相手を迷わせることにつながった。自分がうまくいっていないからチームを壊していると思っていましたが、『高くしよう』と言ってもらったことで変わったし、もっと自分も要求することでお互いが生きる方法を見つけられる。大会を通して見れば結果を残せなかったのが現実ではありますが、それは一つ、これからにつながる収穫になりました」