「楽勝」タワーオブロンドン千二の頂点 夏転戦を血肉にスプリンター資質が開花

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中団追走から直線一気の差し切り

タワーオブロンドンがスプリンターズSを快勝! 新短距離王者に就任だ 【写真:中原義史】

 JRA秋のGIシリーズ開幕戦、第53回GIスプリンターズステークスが29日、中山競馬場1200メートル芝で争われ、クリストフ・ルメール騎乗の2番人気タワーオブロンドン(牡4=美浦・藤沢和厩舎、父レイヴンズパス)が優勝。中団追走から直線一気の差し切りで新スプリント王者となった。良馬場の勝ちタイムは1分7秒1。

 タワーオブロンドンは今回の勝利でJRA通算14戦7勝、重賞は2017年GII京王杯2歳ステークス、18年GIIIアーリントンカップ、19年GII京王杯スプリングカップ、19年GIIセントウルステークスに続き5勝目となり、GIはうれしい初勝利。騎乗したルメールはスプリンターズS初勝利で、同馬を管理する藤沢和雄調教師は1997年タイキシャトル以来の同レース2勝目となった。

藤沢和雄厩舎にとってはあのタイキシャトル以来のスプリンターズS制覇となった 【写真:中原義史】

 なお、半馬身差の2着には松若風馬騎乗の3番人気モズスーパーフレア(牝4=栗東・音無厩舎)が逃げ粘り、さらにクビ差の3着に川田将雅騎乗の1番人気ダノンスマッシュ(牡4=栗東・安田隆厩舎)が入った。

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「外に出したときにはもう勝てる」

 最後の直線に入り、外に進路をとったタワーオブロンドンの馬体がグッと沈み込んだとき、モズスーパーフレアの3連単1着軸流しの馬券を握りしめていた僕は「あ、これはもうアカン……(つまり僕の馬券は紙くずと化した)」と観念した。ゴールまでまだ200m以上残っているのに、そう思ってしまうほどにタワーオブロンドンの末脚は圧倒的だった。

「最後はすごくいい脚を使ってくれました。外に出したときにはもう勝てると自信がありましたし、ラスト200mはトップスピードになってくれました」

最後の直線に入ってすぐ、「外に出したときにはもう勝てると思った」とルメール 【写真:中原義史】

 ホームストレッチの手応えをそう語った鞍上のルメール。実際に馬にまたがっているジョッキーと外から見ているだけの僕の感覚が同じだったことに、馬券は外れたけどちょっぴり嬉しくなってしまったのだが、藤沢和調教師に至っては「4コーナーを回るあたりで」勝利を確信したのだという。どっちにしても、今年のスプリンターズSはタワーオブロンドの強さ、速さが際立っていた。

中1週、中2週……きついローテはすべて予定通り

ルメールは早くからタワーオブロンドンのスプリンターとしての資質を見抜いていた 【写真:中原義史】

 戦前、6月の函館スプリントステークス3着を皮切りに、8月札幌キーンランドカップ2着から中1週で9月阪神セントウルS1着と来て、とどめの中2週でこの中山スプリンターズS。その勢いは認めるものの、レース間隔が短いローテーションと全国各地への転戦の影響から来る疲れが懸念されていた。だが、終わってみればこの勝ちっぷり。

「今日勝ったから(このローテーションは)完ぺきでしたね(笑)。まったく無駄ではなかったと思います」とルメール。トレーナーも「当初の予定通り」と話しており、夏の上り馬にありがちなイケイケドンドンのローテとは次元が違うことをうかがわせた。

 というのも、今夏の転戦はタワーオブロンドンをスプリンターとして覚醒させるために組まれたもの。しかも、マイルで頭打ちだから目先を変えて千二へ……というわけではなく、ルメールは「最初からスプリンターだと思っていた」という。2〜3歳戦はビッグレースがマイルで行われているからそれに合わせていたためで、いわば満を持してのスプリント路線参戦だったというわけだ。特に自身の騎乗では初のスプリント戦となったキーンランドCの2着は、敗れたとはいえルメールにとって“スプリンターとしての自信”を深めるレースだった。

「函館はまだトップコンディションではなかったみたいだけど、札幌でとても良くなっていました。スプリントレースは普通のレースとは違うので、2着でしたけど、この経験でとてもいいスプリンターになると喜びましたね」

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