新境地に達した中村剛也の存在感
パV2の西武打線に与えた大きな意味

主力が抜け、苦戦が続いた前半戦

パ・リーグ連覇を果たし、喜ぶ西武ナイン
パ・リーグ連覇を果たし、喜ぶ西武ナイン【写真は共同】

 連覇を目指して春季キャンプに臨む10日ほど前、今季からキャプテンに就任した秋山翔吾がある“予言”をしていた。前年に本塁打王、打点リーグ2位の活躍で年間MVPに輝き、“山賊打線”をけん引した山川穂高についてだ。


「山川は去年みたいにうまくいくことばかりではないと思うんですよ。相手からの攻められ方も厳しくなると思うし。4番に座るのは中村(剛也)さんという(競い合う)存在がありながら、いろんな悩みや壁にぶち当たると思います。それを今年打破した上で、来年以降チームを引っ張っていく側に回ってきてくれればいい。逆に、自分のことを考えてやっておく年数もある程度必要なんですよ。今年はまだ、その年でいいよって感じですね」


 10年ぶりのリーグ優勝を飾った昨年オフ、エースの菊池雄星(現・マリナーズ)、野手ではWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)などで日本代表捕手を務めた炭谷銀仁朗(現・巨人)と打点王の浅村栄斗(現・東北楽天)がチームを去った。打ち勝つスタイルでペナントレースを制した埼玉西武にとって、キャプテンの浅村はもちろん、経験豊かな炭谷が抜けるのは痛い。彼らはプレーで貢献するばかりでなく、チーム全体を高める役割も担っていたからだ。


 秋山が続ける。


「浅村と銀さん(炭谷)がいなくなったので、下を引き上げるパワーが二つ手から離れたわけです。去年まで栗山(巧)さん、中村さんという2人と僕と合わせて5人いたとすれば、2人いなくなった。だから3人で、若い子たちが思い切ってやれる雰囲気を醸し出していかないといけない。僕らがカバーするけど、心細くなっているよねって。その中で、『僕もチーム全体を見るほうに行きますよ』っていう人間が出てくればありがたい」


 3人の主力が抜けた反面、新人と外国人を除いて大きな補強がなかったチームは7月までなかなか貯金を蓄えることができなかった。

潮目が変わったのは8月、4番に座った中村

中村(写真)が4番に座って以降、チームは快進撃を続けた
中村(写真)が4番に座って以降、チームは快進撃を続けた【写真は共同】

 潮目が変わったのは8月だ。シーズン序盤から首位打者争いをリードする森友哉を3番に据え、打線のテコ入れを図る。さらに、なかなか状態の上がらない4番・山川と、主に下位打線を任されてきた中村の打順を入れ替えた。


 森の打順変更について、阿部真宏打撃コーチが意図を説明する。


「開幕当初、山川があれだけ打っていると後ろのバッターがすごく重要だったので、森を5番に置いていました。それから他のバッターについて調子の良い、悪いを考えて、森を3番に据えるのがベストかなと思いました」


 山川は3、4月に11本塁打、31打点といずれもリーグトップの成績で月間MVPを獲得すると、6月までに27本塁打を放った。しかし、厳しい内角攻めにあった影響などで、7月は月間打率1割7分3厘と調子を落とす。8月に入っても思うように状態が上がらず、辻発彦監督は8月11日の千葉ロッテ戦から中村を4番に据え、山川を7番に回した。ここから山賊打線は上昇気流に乗り、8月にはプロ野球史上2位の月間172得点。チーム防御率は4点台でリーグワーストながら、打ちまくることで8月の27試合は17勝10敗と首位・福岡ソフトバンクとの差を一気に縮めていった。


 この間、好調の森とともに打線をけん引したのが4番・中村だ。7月19日のオリックス戦で史上20人目の通算400号本塁打を達成した主砲は、36歳になった今季、打撃スタイルをアップデートしている。


「無理にホームランを狙わなくなったのはあります。来た球に、素直に打っている。結果、いいところに飛んでいます」


 今でも理想は全打席本塁打だが、それを目指すのは現実的でないと受け入れた。甘い球は長打を狙うが、厳しい球はヒットでつなぐ。結果、リーグの打点王争いでトップに立ち、4年ぶりに30本塁打を記録。特筆すべきは、優勝決定時点(9月24日時点、以下同)でキャリアハイの打率2割8分6厘を残したことだ。

中島大輔
中島大輔

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。著書に『人を育てる名監督の教え すべての組織は野球に通ず』(双葉新書)。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』がミズノスポーツライター賞の優秀賞。

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