ラグビーW杯を楽しむために大切なことは? 組織委員会、ミック・ライト氏が存分に語る

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提供:(公財)日本ラグビーフットボール協会

組織委員会事務総長代理のミック・ライト氏を講師に招き、ラグビージャーナリストの村上晃一氏の進行で講演が行われた 【スポーツナビ】

 公益財団法人港区スポーツふれあい文化健康財団と、公益財団法人日本ラグビーフットボール協会が主催する「みなとスポーツフォーラム 2019年ラグビーワールドカップ(W杯)に向けて」の第97回が8月22日、東京都港区で行われた。

 今回は「ラグビーワールドカップ2019の楽しみ方!」というテーマのもと、組織委員会事務総長代理のミック・ライト氏を講師に招き、ラグビージャーナリストの村上晃一氏の進行で講演が行われた。

「日本全国で最高峰のプレーが見られる」

 イングランド出身のライト氏は、かつて英国ラグビーリーグのセミプロ選手だったこともあり、現在でもタッチラグビーを楽しむなど、ラグビー歴の長い人物だ。オリンピックなど、数々のスポーツにおける国際大会のコンサルタントに携わり、2012年からは国際オリンピック委員会(IOC)のテクニカルアドバイザーを務めている。また、15年のイングランド大会では、参加チームの宿泊や警備、ロジスティックス(運搬)を担う組織委員会のトーナメントサービス局長として活躍した。冒頭ではイングランド大会の映像を見ながら、下記のように話した。

「今は15年大会の素晴らしい瞬間を見ていただきましたが、今年はより良いものを皆さんにお見せできると思います。ラグビーW杯はオリンピック、サッカーW杯に続いて世界で3番目に大規模なスポーツイベントです。ラグビーの伝統国と呼ばれる地域から離れ、初めてアジアで行われる大会になります。ラグビーW杯の素晴らしいところは、北海道から九州まで、12の開催都市で行われるという点です。全国で最高峰のチームがプレーしているところを見ることができます」

 選手たちも、各地に移動しながら連戦をこなすことになる。それだけに、どの場所でも最高のパフォーマンスを出せるような環境を整えることが、組織委員会の大切な仕事だ。

「私たち組織委員会の責任としては、きちんとメンバーに来日してもらって、チームが言い訳できないほどのパフォーマンスができるような環境を提供する必要があります。チームキャンプや試合会場の設営、移動のアレンジを含め、世界トップクラスの競技運営を、世界トップクラスの会場で提供することを、私たちは目指しています」

イングランドと日本、3つの大きな違い

サモア代表の歓迎セレモニーの様子 【写真は共同】

 今回のW杯では、これまでに約180万枚のチケットが販売された(8月22日当時)。そのうち1/4は、海外のファンが保持している計算になるという。それだけの外国人ファンが日本にやってくるのは、ほぼ初めてといっていい経験だ。ライト氏は「特別なゲストやお客様が来日しますので、そういった方たちに向けて独自性のあるおもてなしをすることも大事になる」と語った。

 また、ライト氏は日本と前回の開催地だったイングランドについて、3つの大きな違いがあると述べた。

 1つ目は、チケットの売れ行きの見通し。イングランド大会はオペレーションの計画時から、全てのチケットが完売できるという確信があったが、今回は「本当に皆さんにチケットを買っていただけるのか、本当に確信を持てるまで、どれだけの支出をしていいのか分からなかった」と明かした。

 次に組織委員会のメンバー構成。イングランド大会の時は12年のロンドン五輪で運営を経験した人材もいて、そこからラグビーの運営に回ったメンバーも多かった。だが、今回はラグビーW杯の後に五輪が行われる形で、海外のイベント運営に携わったメンバーが少ない。なので、組織委員会の中にサプライヤーやコンダクターと呼ばれる、請負事業者から出向してきたメンバーを多く配置。そうした人材を混ぜながら、経験の浅いメンバーには短期間で多くのことを学んでもらう形をとった。

 最も大きな違いは、当然のことではあるが地理的な側面だ。ライト氏は次のように話している。

「日本は地図で見るとそれほど大きくは見えませんが、実際は本当に広大な敷地です。そうした場所で大会を開催しようとすると、ロジスティックス面では非常に大きな課題があります。その点、オリンピックは東京だけでやるので簡単だと思います(笑)。

 大きなラグビー選手たちを、飛行機や電車、バスで移動させなければいけません。そして、それが20チームもあるのです。イングランドではバス1台でチームが移動していたのでこうした問題は全く起きませんでしたが、今回は結構チャレンジングな状況です」

 それに加えて、日本独特の気候は無視できない問題だ。

「9月は台風の季節になってきます。イングランドではよく雨は降りますが、台風はありません。強風が吹けば国自体が停止するという状況になりますが、そうしたことはほとんど起きません。頻繁に台風が来る難しい気候の中、どのような対応をすればいいか、その計画に多くの時間を費やしました」

「ラグビーは本当に特別なスポーツ」

W杯は日本で最高のプレーが見られるチャンスだ 【写真:ロイター/アフロ】

 こうした日本独自の問題に対しての対策を考えるのと同時に、組織委員会ではさまざまな大会を盛り上げる施策を用意している。例えば、試合会場のスタジアムに設置される、飲食店を増やすことだ。

「イングランドでは、ラグビーのお客さんは本当に大量のビールを飲むんです。なので、通常の試合を行う時の4倍の数の売店を用意し、食べ物や飲み物を販売することを計画しています。また、ビールをちゃんと冷えた状態にするため、追加の冷蔵施設も用意しなければなりません。

 また、野球のアイディアを少し盗んで、ラグビーの世界ではこれまでに見たこともないような、ビールの売り子さんに活躍してもらおうと考えています。北海道から九州まで、1650人の売り子さんを活用していきます。これはラグビーW杯では今までにないことですし、二度とこうしたことはないかもしれません(笑)」

 さらに、パブリックビューイングやステージイベントが楽しめるファンゾーンを、全ての開催都市に設置する。

「東京にはスタジアム近くの調布と、有楽町に設けます。試合当日にオープンするのはもちろんですが、そうでない日もラグビーW杯の拠点として、毎日オープンするような形で考えています。また昨日(8月21日)、新宿でメガストアをオープンしました。本当に楽しみたいのなら、色々なグッズを購入して、大会に備えたほうがいいと思います」

 そして、日本のラグビーファンが今大会をどう楽しんだらいいか、ライト氏は次のようにその答えを教えてくれた。

「ラグビーが好きな皆さんであれば、どうやって楽しめばいいのかは本当に簡単なことだと思います。ラグビーは本当に特別なスポーツで、比べられるような競技は他にないと思っています。ファンが一緒に座って、両チームの応援をして、拍手を送ります。そして試合中も、試合後も一緒になって交流して、仲間意識のようなものが生まれ、お互いにリスペクトをします。

 日本も非常に素晴らしい、ユニークな国です。ラグビーのリスペクトを送る精神と、日本のおもてなしを組み合わせていくと、これは他に類を見ない大会になるというように思い、考えるだけで非常にワクワクしてきます。なので、皆さんには色々な形で関わっていただいて、心から楽しんでいただきたいです。まずはチケットを用意して、試合に行くというところから始まるでしょう」

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