ラグビーW杯を楽しむために大切なことは? 組織委員会、ミック・ライト氏が存分に語る
組織委員会事務総長代理のミック・ライト氏を講師に招き、ラグビージャーナリストの村上晃一氏の進行で講演が行われた 【スポーツナビ】
今回は「ラグビーワールドカップ2019の楽しみ方!」というテーマのもと、組織委員会事務総長代理のミック・ライト氏を講師に招き、ラグビージャーナリストの村上晃一氏の進行で講演が行われた。
「日本全国で最高峰のプレーが見られる」
「今は15年大会の素晴らしい瞬間を見ていただきましたが、今年はより良いものを皆さんにお見せできると思います。ラグビーW杯はオリンピック、サッカーW杯に続いて世界で3番目に大規模なスポーツイベントです。ラグビーの伝統国と呼ばれる地域から離れ、初めてアジアで行われる大会になります。ラグビーW杯の素晴らしいところは、北海道から九州まで、12の開催都市で行われるという点です。全国で最高峰のチームがプレーしているところを見ることができます」
選手たちも、各地に移動しながら連戦をこなすことになる。それだけに、どの場所でも最高のパフォーマンスを出せるような環境を整えることが、組織委員会の大切な仕事だ。
「私たち組織委員会の責任としては、きちんとメンバーに来日してもらって、チームが言い訳できないほどのパフォーマンスができるような環境を提供する必要があります。チームキャンプや試合会場の設営、移動のアレンジを含め、世界トップクラスの競技運営を、世界トップクラスの会場で提供することを、私たちは目指しています」
イングランドと日本、3つの大きな違い
サモア代表の歓迎セレモニーの様子 【写真は共同】
また、ライト氏は日本と前回の開催地だったイングランドについて、3つの大きな違いがあると述べた。
1つ目は、チケットの売れ行きの見通し。イングランド大会はオペレーションの計画時から、全てのチケットが完売できるという確信があったが、今回は「本当に皆さんにチケットを買っていただけるのか、本当に確信を持てるまで、どれだけの支出をしていいのか分からなかった」と明かした。
次に組織委員会のメンバー構成。イングランド大会の時は12年のロンドン五輪で運営を経験した人材もいて、そこからラグビーの運営に回ったメンバーも多かった。だが、今回はラグビーW杯の後に五輪が行われる形で、海外のイベント運営に携わったメンバーが少ない。なので、組織委員会の中にサプライヤーやコンダクターと呼ばれる、請負事業者から出向してきたメンバーを多く配置。そうした人材を混ぜながら、経験の浅いメンバーには短期間で多くのことを学んでもらう形をとった。
最も大きな違いは、当然のことではあるが地理的な側面だ。ライト氏は次のように話している。
「日本は地図で見るとそれほど大きくは見えませんが、実際は本当に広大な敷地です。そうした場所で大会を開催しようとすると、ロジスティックス面では非常に大きな課題があります。その点、オリンピックは東京だけでやるので簡単だと思います(笑)。
大きなラグビー選手たちを、飛行機や電車、バスで移動させなければいけません。そして、それが20チームもあるのです。イングランドではバス1台でチームが移動していたのでこうした問題は全く起きませんでしたが、今回は結構チャレンジングな状況です」
それに加えて、日本独特の気候は無視できない問題だ。
「9月は台風の季節になってきます。イングランドではよく雨は降りますが、台風はありません。強風が吹けば国自体が停止するという状況になりますが、そうしたことはほとんど起きません。頻繁に台風が来る難しい気候の中、どのような対応をすればいいか、その計画に多くの時間を費やしました」
「ラグビーは本当に特別なスポーツ」
W杯は日本で最高のプレーが見られるチャンスだ 【写真:ロイター/アフロ】
「イングランドでは、ラグビーのお客さんは本当に大量のビールを飲むんです。なので、通常の試合を行う時の4倍の数の売店を用意し、食べ物や飲み物を販売することを計画しています。また、ビールをちゃんと冷えた状態にするため、追加の冷蔵施設も用意しなければなりません。
また、野球のアイディアを少し盗んで、ラグビーの世界ではこれまでに見たこともないような、ビールの売り子さんに活躍してもらおうと考えています。北海道から九州まで、1650人の売り子さんを活用していきます。これはラグビーW杯では今までにないことですし、二度とこうしたことはないかもしれません(笑)」
さらに、パブリックビューイングやステージイベントが楽しめるファンゾーンを、全ての開催都市に設置する。
「東京にはスタジアム近くの調布と、有楽町に設けます。試合当日にオープンするのはもちろんですが、そうでない日もラグビーW杯の拠点として、毎日オープンするような形で考えています。また昨日(8月21日)、新宿でメガストアをオープンしました。本当に楽しみたいのなら、色々なグッズを購入して、大会に備えたほうがいいと思います」
そして、日本のラグビーファンが今大会をどう楽しんだらいいか、ライト氏は次のようにその答えを教えてくれた。
「ラグビーが好きな皆さんであれば、どうやって楽しめばいいのかは本当に簡単なことだと思います。ラグビーは本当に特別なスポーツで、比べられるような競技は他にないと思っています。ファンが一緒に座って、両チームの応援をして、拍手を送ります。そして試合中も、試合後も一緒になって交流して、仲間意識のようなものが生まれ、お互いにリスペクトをします。
日本も非常に素晴らしい、ユニークな国です。ラグビーのリスペクトを送る精神と、日本のおもてなしを組み合わせていくと、これは他に類を見ない大会になるというように思い、考えるだけで非常にワクワクしてきます。なので、皆さんには色々な形で関わっていただいて、心から楽しんでいただきたいです。まずはチケットを用意して、試合に行くというところから始まるでしょう」