「初めてのラグビー」への戸惑いと発見 サッカー脳で愉しむラグビーW杯(9月20日)

宇都宮徹壱

サッカーファンもラグビーを楽しめる?

ロシアとの初戦に勝利し、安堵の表情でスタジアムを後にする日本のサポーター。次は28日のアイルランド戦だ。 【宇都宮徹壱】

 ラグビーの勝ち点は、勝利が4、引き分けが2、敗戦が0。4トライ以上を挙げた場合と7点差以内の負けには、ボーナスとして1ポイントが与えられる。日本はウイングの松島の3トライ(やはりハットトリックと言うそうだ)に加えて、後半7分にもピーター・ラブスカフニがトライを決めているので、初戦で5ポイントを得ることとなった。何かと当惑ばかりのラグビー取材。それでも、試合そのものは興奮しながら観戦できた(個人的には「名前と顔とポジションが一致する」数少ない日本代表、松島が活躍してくれたのがうれしい)。

 普段、サッカーの話題で埋め尽くされているタイムラインも、この日ばかりはラグビーW杯で盛り上がっていた。その多くは、私と同じく普段はラグビーと縁遠い人々だが、むしろサッカーとの違いを楽しんでいる様子。かくいう私も、そのひとりだ。松島のトライが取り消されたビデオ判定は、VARではなくTMO(テレビジョン・マッチ・オフィシャル)と言うこと。選手交代では、ベンチ入りした全員を起用できること。そしてジャッジへの異議やブーイングがないこともまた、いちサッカーファンにとって新鮮な発見であった。

 もともと1863年に枝分かれするまで、サッカーとラグビーは同じ「フットボール」。その後、それぞれ独自の進化を遂げる中、ラグビーはサッカー以上にルール改正を重ねていく。その結果として複雑化したラグビーのルールが、われわれサッカーファンを遠ざけることとなった(ように感じる)。しかし両者は、最も血のつながりが濃い兄弟の関係。ならば、今回のW杯で観戦を重ねるうちに、サッカーファンもラグビーを楽しめるようになるのではないか──。そんな仮説を実証していくのが、当連載の目的である。

 実は連載を始めるにあたり、ラグビーのルールに関する本を数冊読んでみたのだが、なかなか頭に入ってこない。そのうち「生半可な知識を仕込んでも仕方ない」という結論に達した。むしろ20年以上のサッカー取材での経験をベースに、ラグビーに関しては「知ったかぶりをしない」、そして「サッカーとの違いを愉しむ」という姿勢を貫いていきたい。試合の分析や解説はプロにお任せして、当連載では「サッカー脳で愉しむラグビーW杯」というテーマを、とことん追求してゆく。最後までお付き合いいただければ幸いである。

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著者プロフィール

1966年生まれ。東京出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。旅先でのフットボールと酒をこよなく愛する。著書に『ディナモ・フットボール』(みすず書房)、『股旅フットボール』(東邦出版)など。『フットボールの犬 欧羅巴1999−2009』(同)は第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞。近著に『蹴日本紀行 47都道府県フットボールのある風景』(エクスナレッジ)

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