IDでもっと便利に新規取得

ログイン

「今回のW杯でポッドがメジャーになる」
野澤武史氏が最新ラグビー戦術を解説

提供:(公財)日本ラグビーフットボール協会

J SPORTSのラグビー中継解説でおなじみの野澤武史氏が講演
J SPORTSのラグビー中継解説でおなじみの野澤武史氏が講演【スポーツナビ】

 公益財団法人港区スポーツふれあい文化健康財団と、公益財団法人日本ラグビーフットボール協会が主催する「みなとスポーツフォーラム 2019年ラグビーワールドカップ(W杯)に向けて」の第98回が8月29日、東京都港区で行われた。


 今回は「世界大会を楽しむための戦略・戦術、専門用語を学ぶ」というテーマのもと、ラグビー協会リソースコーチの野澤武史氏を招き、ラグビージャーナリスト・村上晃一氏の進行で講演が行われた。


※第97回の講演レポートは後日公開予定

プロップが随分変わってきた

 この日はちょうどジェイミー・ジョセフヘッドコーチ(HC)率いる日本代表のメンバー発表日。野澤氏は冒頭からラグビー中継でもおなじみの、専門用語を交えたしゃべりで聴講者を引き込んでいく。


「一つ思ったのは、プロップがこの4年で随分変わったかなと。ポッドラグビーをやるとどうしてもハンドリングができて、キャリーができるフロントが必要になってきます」


 プロップは従来、体が大きく、スクラムに長けた選手が担うポジション。現在の日本のラグビーでは、それだけでなく、ボールを持って前に出られる選手が必要だという。ヴァルアサエリ愛や中島イシレリといった選手が該当する。


 では、ポッドラグビーとは? ここから野澤氏の深いラグビー講座が始まった。

見えないものを見る

「見えないものを見る」。これが、野澤氏が持ち込んだ講座のテーマだ。


 最初に聴講者に見せたのは、あるバスケットボールのパス動画。「この中で白チームが何回パスを回すか当てる」というもので、再生が終わると「12回!」「14回!」などと次々に声が上がった(答えは13回)。しかし、続けて「ムーンウォークする熊がいるのに気づきましたか?」と問いかけると、答えられた人はわずか数人しかいなかった。


 なぜ、こうなったのか。この動画は人々の注意力を測るテストで、1つの物事に集中していると全体が見えなくなる旨を伝えたいもの。野澤氏いわく「ラグビーの戦略・戦術も一つの目線だけではなく“補助線”を引けば、『こういうことをやっているのね』と案外分かりやすくなります」と、“補助線”を引けば見えないものが見えてくる、ラグビーの面白さが分かってくると熱弁した。

リーチのトライがポッドの最たる例

野澤氏は昨年11月のイングランド戦、リーチ(写真左)のトライを例に「ポッド」を解説した
野澤氏は昨年11月のイングランド戦、リーチ(写真左)のトライを例に「ポッド」を解説した【写真:ロイター/アフロ】

 本題に入り野澤氏はアタック、つまり攻撃面についての説明を始めた。そのキーワードが「ポッド」である。


 2015年の前回大会、南アフリカを撃破した「ブライトンの奇跡」もあって、エディー・ジョーンズ前HCの戦術は全国のラグビーシーンに浸透。野澤氏がどの地方にラグビーを教えに行っても、エディー前HCの代表的な戦術「シェイプ(型)」は指導者の間で当たり前のように使われていたという。


 翻って今回の日本大会で、メジャーな戦術になると目されるのが「ポッド」。ポッドという言葉自体は豆などのサヤを意味するが、ラグビーにおけるポッドのコンセプトは“一人はみんなのために”。選手はそれぞれ明確に役割が決まっており、“塊”の一員として機能していく。


「例えば、今までだと “One for all,All for one”で戦うことで、一人が仲間の前で倒れたら他の選手のサポートに行くことがチームワークでした。けれど、ポッドのチームワークは自分の役割を100%果たすことでしか体現できない」


「ポッド」の例として野澤氏が挙げたのが、昨年11月にラグビーの聖地・トゥイッケナムで行われた日本とイングランドのテストマッチの一幕。前半31分にリーチ・マイケルがトライを決めた場面だ。


「最後、リーチがトライしましたね。リーチがいて、山田(章仁)がいて。多分このときはシンプルなポッドで、フォワードが3人ずつだったと思います。毎回9番(スクラムハーフ)と10番(スタンドオフ)、12番(左センター)が後ろについていました」


 何人かのフォワードとバックスが混在して、塊を作る。これがポッドだ。上記の場面では4つのポッドがあって、そこに9番や10番、12番がパスでボールを動かす。各ポッドの構成員はそれぞれのテリトリーからボールが出たら、自陣方向へ下がっていく。パスした方向にサポートするのがかつてのセオリーなら、今はポッドに沿って上下動するのが主流となっているのだ。

15人全員が司令塔という考え方

 野澤氏は「誰がどうトライするかはほぼ決まっている」と言い切る。別の表現をするなら、「“設計”されている」とも。同時に、15人全員が司令塔であることが求められている。


「10年ぐらい前のラグビーは、司令塔が正直9番と10番だけで十分でした。後の13人は全員兵隊で、『お前ら全員走れ、俺たちが一番いいボールをデリバリーするから』と2人の司令塔が指示していた。今はそうじゃなくて、15人全員が判断して指揮者にならなきゃいけない。オーケストラであり、なおかつプレーヤーとしても機能する。これが面白いところです」


 メンバー発表の際にもジョゼフHCが「アンストラクチャー(崩れた局面)の中で判断できる選手を選び、自分たちの強みを発揮する」とコメント。まさに戦術理解度の高さが優先された格好だ。野澤氏は以下のように続ける。


「ユース世代を育てていても、戦術をどれだけ理解できるかが、指標の一つに入ってきています。心技体・フィジカル・メンタル・スキルの次になりますね。戦術を理解して体現できない子は落選してしまいます」


 時代は確実に進んでいて、ラグビーもアップデートされているのだ。

スポーツナビ

スポーツナビ編集部による執筆・編集・構成の記事。コラムやインタビューなどの深い読み物や、“今知りたい”スポーツの最新情報をお届けします。

スポナビDo

新着記事一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント