日本バスケ改革者たちが見たW杯と未来 「日常を世界基準に」する次の手は?
欠かせないBリーグの底上げ
昨季のBリーグファイナルでは、リーグ発足以来最大となる1万2972人の観客を集めた。リーグの活性化が代表の充実につながっていく 【写真:西村尚己/アフロスポーツ】
「ラグビーは今年度の代表強化予算が30億円です。代表にそれだけ懸けているという点で熱意、エネルギーはすごい。ただ、プロ化したBリーグと比べると未だにアマチュアリーグなので、運営の課題は山積している。普及も含めた本当の意味での強化体制は、バスケに大きく遅れていると思います。企業のメセナのような形で運営されているけれど、それはサステイナブル(持続可能)じゃない。マーケティングもラグビーがBリーグを見習わないといけないところです」
どんな競技も代表は普及、育成、そしてトップリーグという「基盤」に支えられて活動する。アカツキファイブの充実や盛り上がりは、Bリーグに還元される。そういう相関のサイクルをより大きくしていくことが、バスケも引き続いて重要だ。
リーグがどう代表強化に貢献するか。大河チェアマンはこう述べていた。
「フィジカル、コンタクトについて(大会後に)いろいろな話が出ていました。そこをどうしていくかという課題感はもちろん持っています。ガード陣が当たりの強さにまだまだ慣れていないことを考えると、(外国籍の)ガード陣が出られるようなオン・ザ・コートのルールも考えなければいけない。2019-20シーズンから変えるのは無理ですけれど、2020−21シーズンを目指して議論も重ねてきたので、それは実現したい」
2020年の先を考えれば特別指定選手制度、ユース組織の拡充といったリーグ戦に留まらない取り組みも必要になる。
「若い選手が大学時代に、最初は勝てないレベルの選手と戦える場の提供が大切です。そうやって1番(ポイントガード)2番(シューティングガード)3番(スモールフォワード)の層をもっと厚くしていくことは課題だと思っています。U15のような育成年代から、海外と戦う場も増やさなければいけない」
Bリーグにもまだ空調の無い体育館で練習をしているクラブ、十分に施設の利用時間を確保できないクラブもある。チェアマンはこう述べる。
「当然それも考えていかなければいけない。アリーナだけあればいいということではなくて、むしろ日頃の練習環境が重要。寮で良い食事を摂れるコート外の環境であるとか、サッカーがやってきた道はなるべく早くキャッチアップしたい。自主的にやって欲しいですけれども、そういうところは考えていきたい」
ラマスHCも帰国時の会見で「JBAのプランは素晴らしい。すごく野心的で実現性のあるもの」と述べていたように、協会の強化プランは回り始めている。ラマスHCは就任当初から強化試合の増大や、チームの大型化を強く訴えていたが、今夏はW杯のファイナリストであるアルゼンチンなど強豪との対戦も組まれた。
国際的な指揮官という人の利、W杯が開催される中国との距離という地の利、五輪の前年という時の利はそろっていた。とはいえ協会がそういう試合が組める国際性を獲得したことは大きな進歩だ。八村塁(ワシントン・ウィザーズ)のようなトッププロスペクトの代表招集も、実は決して容易でない。コミュニケーションを重ね、信頼を勝ち取り、日本バスケの評価を上げる愚直な作業が実を結びつつある。
ラマスHCも認める代表強化の体制づくり
東京五輪、そして2020年以降に向けて、まだまだバスケ界の伸びしろは多く残されている 【写真:松尾/アフロスポーツ】
「彼らは外から学ぶ気持ちが強いし、意欲がある。エネルギーもある。W杯はうまくいかなかったけれど、あの路線は続けるべきだと確信しています」
協会のプランを実現させるために欠かせないのが、リーグからの押し上げだ。東野技術委員長は帰国時の会見でこう強調していた。
「コーチからの報告書、数字での分析を突き合わせて技術委員会でディベートをしつつ、われわれの何が足りなかったのかを残していきます。テクニカルレポートを全国、全カテゴリーの皆さんに共有するということを考えています。私がいつも言っている『日常を世界基準にする』とは、W杯の5連敗という結果を踏まえて何をするかです。そこは候補選手、Bリーグの全選手がそれを受け止めてくれるだろうし、コーチも含めてどう過ごすかだと考えています」