U-18侍J・林優樹の“打たれない”投球術 小柄で細身でも世代屈指の左腕に
昨冬から春にかけては宝刀を封印
昨夏の甲子園では最後こそ2ランスクイズでサヨナラ負けを喫したものの、金足農・吉田輝星と互角の投げ合いを見せた 【写真は共同】
チェンジアップ、カーブなどの緩い球を小気味よく投げ、何よりコントロールがいい。昨夏は先輩投手の中で主にリリーフも務めたが、3回戦の常葉大菊川戦では先発マウンドに立って強力打線を5回まで完璧に抑え、敗れた準々決勝の金足農戦でも相手エース・吉田輝星(現北海道日本ハム)に引けを取らないピッチングを見せた。
近年は150キロを超える剛速球投手が毎年のように話題になり、高校野球界を沸かせているが、林のようなコントロールの良さと変化球で勝負できる投球術は一層目を引く。
伝家の宝刀はチェンジアップだが、昨冬からはチェンジアップに頼らないピッチングをテーマに据え、ストレートの精度を上げるために体作りから見直して、トレーニングにも励んだ。春先の練習試合からチェンジアップを封印しながら、新球をマスターするなど武器を増やし、ピッチングのバリエーションも広げた。
春の近畿大会で、智弁学園や神戸国際大付など、強打のチームとの接戦をものにして優勝。その勢いを武器に、より重圧のかかる夏の滋賀大会も制した。
乗り込んだ今夏の甲子園。初戦の東海大相模戦は、味方の6失策もあって失点が重なり1対6で敗れたが、東海大相模打線が放った安打数は6本と、決して打ち込まれた訳ではない。徹底的に林を研究した東海大相模でも“打ち勝った”という印象は少なかったと言える。
つまり、分かっていても打てない緩急の使い方、強振されてもその上を行くコントロールができる林の投球術は、小柄でも細身でもピッチャーをやってみようと思う野球少年の大きな参考になる。
世界の野球ファンに“HAYASHI”の勇姿を
子どもたちと笑顔でシャッターに収まる林。小柄でも、細身でも“打たれない”投球術を身につければ世代屈指の投手になれることを証明している 【Getty Images】
「軟投派だろうが、自分の持ち味を今日の試合は最大に出してくれた」
敗れた試合でも林を一番よく知るチームメイトがそう言えたのだから、結果的に点を取られても“打たれない”ピッチングができる林は、やはり今年の世代を代表する左腕と言っていい。
アメリカ戦の先発マウンドは志半ばに終わったが、5日からスーパーラウンドが始まるなど、試合はまだまだ続く。苦い経験があったからこそ生きるものもある。高校野球最高峰のマウンドで放った輝きを世界の大舞台でも放ち、マウンドで奮闘する“HAYASHI”の背中を、1人でも多くの世界の野球ファンに見てもらいたい。