大谷翔平、二刀流復活へリハビリは順調 フォームの変化に透ける“理論と感覚”

丹羽政善
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提供:日本航空

オタースタッドさん(写真右)の絵のように、大谷は二刀流復活に向けて歩みを進めている 【丹羽政善】

 現地8月23日の午前、いつものようにアストロズの予定を眺めながら、どのチームが遠征で訪れるのかを確認していた画家のオピ・オタースタッドさんは、それがエンゼルスであることを確認すると、ふと、思い至った。

「まだ、ショーヘイ(大谷翔平)は描いたことがないな」

 ストックしてある参考となりそうな資料をパラパラめくっていると、俄然、創作意欲をかき立てられた。

「よし、描こう」
 オタースタッドさんは、ヒューストンを拠点とするスポーツアーティストだ。ミニッツメイド・パークのビジタークラブハウスには、彼の描いた油絵が何枚も飾られている。

 2017年にアストロズが初優勝したときには、ワールドシリーズ全7戦に帯同。歓喜の瞬間をあらゆる角度から切り取り、何枚もの画を仕上げた。

「これまで他チームの優勝シーンは何枚も描いてきたが、地元チームの優勝に立ち会えて……」

 10年以上も前からワールドシリーズの公式アーティストとして活躍するオタースタッドさんは、そこで言葉を区切って、続けた。

「さらにそれを作品に仕上げることができたのは、特別なことだった」

「二刀流プラス岩手山」で完成した絵

 大谷の資料を手に机に向かったオタースタッドさんだったが、早々に問題に行き当たった。

「大谷は二刀流だから、2枚の絵を描かなきゃいけない」

 エンゼルスとのシリーズが終わりまでに、描き上げられるのか? 

 ただ、それは杞憂に終わる。

「描いていて楽しかったし、止まらなくなった」

 23日の午後2時から描き始めると、翌日の正午にすべてが仕上がった。

「明け方に2時間ぐらい仮眠して、シャワーを浴びたけど、それ以外はずっと描いていた」

 画そのものは3枚になった。

「真ん中の山は、彼の故郷にある岩手山。何か、彼のバックグラウンドとなるような要素を加えたくて、彼のことを調べているうちに山のことを知った。最後のピースがはまった」

 24日の試合前、大谷に見せて絵の前で一緒に写真を撮った。

「彼は、喜んでくれた。私のような人間にとって、それが最高に幸せな瞬間だ」

 見せてくれたスマートフォンの画面には、画を挟んで大谷と一緒に写真に収まるオタースタッドさんの姿があった。

ブルペンではスライダーを解禁

ブルペンで投球練習を行う大谷。速球だけでなく、カーブやスライダーといった変化球も解禁している 【写真は共同】

 ところで、その写真を撮る少し前、絵の横にあるちょっとしたスペースで大谷はメディアに囲まれていた。

 ちょうど、ブルペンで34球を投げたあと。リハビリの進捗が主なテーマだった。

 そのブルペンセッションでは、スピードガンで球速も測ったが、どのくらいだったかと聞かれて、「7(87マイル=約140キロ)です」と答えた大谷。その表情はやや不満げで、「あんま出なかった。元々ブルペンでは速くないですけど、もうちょっと速い球を投げたいな、っていう思いがある」とも口にした。

 もちろん、まだ100%ではない。それでも、手応えとしてもう少し出ていてもおかしくない、ということか。

 もっともリハビリそのものは順調。その日は、スライダーも解禁した。

「キレもいいですし、(曲がり)幅もまずまず納得――それ以上の感覚でいっているので、いいんじゃないかな」

 すでにカーブも投げ始めている。手術前はカーブを投げるときに痛みがあったそうだが、それも消え、前に進んだ感覚を得た。

 チームとしては今後、ブルペンでの球数が60〜65球ぐらいに達したら、シミュレーションゲームなどで打者と対戦させたいという考え。それが、シーズンの終わりまでに実現すれば、その後のオフはもう、通常通りという流れか。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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