13年夏Vの前橋育英・荒井直樹監督が語る エースに投げさせ続けることへの思い

松尾祐希
 球児たちの真夏の祭典も履正社(大阪)の初優勝で幕を閉じた。選手たちは懸命にプレーし、多くのファンに感動を与えてくれた。ただ、その一方で暑さは厳しく、彼らの体力を容赦なく奪った。今年から準々決勝後だけではなく、準決勝後に休養日を設けていなければ、決勝に挑む選手たちはよりダメージを受けていたに違いない。

 では、実際に今大会に出場したチームは現在の甲子園の日程や在り方についてどう考えているのか。今大会は国学院久我山(西東京)に一回戦負けを喫したものの、2013年に高橋光成(現埼玉西武ライオンズ)を擁して初めて夏を制した経験がある前橋育英の荒井直樹監督に話をうかがった。

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「休養日をどう過ごすかの難しさもある」

2013年に夏を制した経験がある前橋育英の荒井監督に、甲子園の日程や在り方について聞いた 【松尾祐希】

――大会のフォーマットについて、高野連(日本高等学校野球連盟)側も迅速に改革を進めている印象があります。どのように感じていますか?

 昨年までの大会も含めて、試合前から室内練習場の涼しいところで練習をさせてもらいました。暑さで選手も大変でしたけれど、試合後も涼しいところに移動できるので、初めて甲子園に行った時に比べても選手が結構守られていると感じました。ベンチも涼しい風が出るようになっていますし。

――昔と比べると、選手に対する負担は大きくなっていますか?

 そうですね。昔と比較しても暑さが異なりますね。(夏の甲子園で)優勝した2013年と今でも違う気がします。優勝した時はベンチの前の柵に手を置けたのですが、今回は熱くてできなかった。当然、何試合目かにもよりますけれど、それぐらい暑いなと感じます。

――この数年でも暑さが変わってきた中で、今年から休養日が増えました。この点はどのように考えていますか?

 準々決勝の後に休養日ができたのは6年前で、僕たちが初優勝をした年でした。今年は準決勝後にも休養日ができましたが、実は群馬も同様の形にしたんです。やっぱり1日休みが増えるのは大きいですよね。ただ、休みの期間をどう過ごすかの難しさもある。けがや熱中症の可能性もあるので、気は使いますよね。

――逆に投手は休めるので、負担が減りますよね。

 負担は減ります。ただ、決勝で対戦した相手の投手はほとんど完投していて、準決勝は延長12回まで投げていたんです。相手投手は良かったのですが、やっぱり終盤は球威が落ちましたね。

エースの起用法は「難しい問題」

――休養日が増えれば、投手はラクになりますし、複数の投手で継投ができるようになれば、エースに掛かる負担も減ります。去年の大阪桐蔭(大阪)は複数の投手で夏の甲子園を制しましたが、一方で過去に金足農業の吉田輝星選手(現日本ハムファイターズ)は一人で投げて決勝で力尽きました。一人の投手に全てを委ねる戦い方についてはどう感じられますか?

 一概に何が良いとは言えません。球数制限が良いのかなと思うところもありますが、選手層で決まってしまうところもあります。カットとかボールを見る耐久作戦で、たくさん投げさせるチームも出てくるかもしれません。次の投手がいなければ、早く降ろすための策をうってくるとなれば、対応が難しい。

 また、今年の甲子園・3回戦で奥川(恭伸)くんが23奪三振の快投で完投しましたけれど、あそこまで良いピッチングをしていれば代えられない雰囲気もあります。交代させれば、場がシラけてしまう。でも、投げさせれば負担になる。良いところと悪いところ両面あるし、難しい問題ですよね。

 ただ、球数制限はあり。ルールができれば、2番手以降の投手を作る意識が出てくるはずです。逆に新たな才能を見いだすきっかけになるかもしれないですし。3年前、うちには140キロ台のボールを投げる投手が4人いました。うち3人は野手もできるので、投手以外のポジションでも起用しながらマウンドに上げていたので、一人に負担が掛からなかったんです。調子が悪ければ、思い切って交代できる。投手一人では負担が大きいですし、そういう意味では複数の投手を育てるのはありですよね。

――140キロを投げる投手が4人いたのは偶然だったのでしょうか?

 たまたま良い投手が4人来たからですね。4人全員が1度1番を付けました。秋の地区大会、春の選抜、春の地区大会、最後の夏。これは監督になってから初めての経験でした。秋に1番を付けたら、そこから変えることはほとんどないのですが、毎回変わったんです。

 選手の調子に波があったからですが、最後の夏も4人で戦いました。予選の準決勝は一人が完投して、決勝は別の選手を先発させて、継投策で勝ちましたけれど、確かにその時は負担が少なかった。偶然、そうなりましたが、良い投手をたくさん作れればベストですよね。

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著者プロフィール

1987年、福岡県生まれ。幼稚園から中学までサッカー部に所属。その後、高校サッカーの名門東福岡高校へ進学するも、高校時代は書道部に在籍する。大学時代はADとしてラジオ局のアルバイトに勤しむ。卒業後はサッカー専門誌『エルゴラッソ』のジェフ千葉担当や『サッカーダイジェスト』の編集部に籍を置き、2019年6月からフリーランスに。現在は育成年代や世代別代表を中心に取材を続けている。

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