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トーレスと過ごした幸福な時間
加藤恒平を支えるサプライズメッセージ

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友情を育んだ加藤恒平とフェルナンド・トーレス。トーレスは焼き肉やすき焼きがお気に入りだという
友情を育んだ加藤恒平とフェルナンド・トーレス。トーレスは焼き肉やすき焼きがお気に入りだという【写真提供:加藤恒平】

 2018年7月にサガン鳥栖に加入した元スペイン代表のスーパースターに、スペイン語で話し掛けたことから距離が縮まり、親交を深めたふたり。一緒に過ごしたのはわずか半年だったが、ふたりにとって大切な時間となった。8月23日の試合を最後に現役を引退するフェルナンド・トーレスと、スペインに憧れながら異国の地を渡り歩く加藤恒平が育んだ友情物語――。

スペイン語で「いつでも言ってね」

 スペインサッカーに憧れるあまり、大学4年次にはスペイン語圏のアルゼンチンに渡ったほどである。「エル・ニーニョ(神の子)」の愛称で親しまれるスペインサッカー界のスーパースターとチームメートになれるなんて、加藤恒平は信じられない思いだった。


 18年7月10日、加藤が所属するサガン鳥栖にフェルナンド・トーレスが加入した。


 そのトーレスが初めてチームに合流したとき、加藤はスペイン語で「ようこそ」と声を掛けた。するとトーレスは、驚いたような表情を見せた。ランニングの際にもスペイン語で「僕はスペイン語をちょっと話せるから、何かあったら、いつでも言ってね」と話しかけると、トーレスは柔らかな笑みをたたえて「ありがとう」と返した。


 トーレスといえば、言わずと知れたスペイン代表の元エースストライカーであり、アトレティコ・マドリー、リバプール、チェルシー、ミランなどのメジャークラブに所属した世界的なスター選手である。そんな選手を前にすれば、気後れしたり、遠慮しそうなものだが、加藤は普通の日本人選手ではなかった。大学時代のアルゼンチンを皮切りに、モンテネグロ、ポーランド、ブルガリアと異国の地を渡り歩いてきたのだ。


「僕も海外に出て、文化の違いに驚いたこともあれば、チームに溶け込むのに時間がかかったこともあって、難しさは痛いほど分かる。彼もこれまで何度か移籍を経験しているとはいえ、すべてヨーロッパ内だから英語が通じる。でも、日本では英語を話せる選手が少ないから、僕が何かできればなって。それに僕自身、彼からスペイン語を教えてもらいたかったですから(笑)」


 次第に距離を縮めたふたりは、トーレスの住む福岡で食事をともにしたり、サッカー談義をかわすようになる。トーレスが指導を受けてきた多くの名将たちは一体どんなトレーニングをするのかなど、加藤は気になることをどんどん質問した。

飯尾篤史
飯尾篤史

東京都生まれ。明治大学を卒業後、編集プロダクションを経て、日本スポーツ企画出版社に入社し、「週刊サッカーダイジェスト」編集部に配属。2012年からフリーランスに転身し、国内外のサッカーシーンを取材する。著書に『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』(ソル・メディア)、『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』(講談社)、構成として岡崎慎司『未到 奇跡の一年』(KKベストセラーズ)などがある。