データ回顧 キングカメハメハの蹄績 日本競馬史上でも屈指の万能種牡馬

JRA-VANデータラボ
 8月10日、キングカメハメハが前日の夜に死亡したことが報じられた。7月9日に体調不良のため種牡馬を引退し、余生を送ることが明らかになったばかりだったが、それからわずかに1カ月。先だってのディープインパクトに続く悲報となってしまった。今回はこの名馬が残した偉大な蹄跡をデータとともに回顧したい。データ分析にはJRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。

現役時代の成績

表1 【画像提供:JRA-VANデータラボ】

 表1は、競走馬としてのキングカメハメハの成績をまとめたもの。2003年11月のデビュー戦を勝利で飾ると、出世レースとして知られるエリカ賞も制し、2歳時を2戦2勝で終える。3歳初戦の京成杯で結果的に生涯唯一の敗戦となる3着に敗れたものの、オープン特別のすみれSですぐさま巻き返し、続く毎日杯で重賞初勝利を飾る。

 普通なら、次走は牡馬クラシックの一冠目となる皐月賞。ところが、管理する松田国英調教師は1600mのNHKマイルCから2400mのダービーを目指すローテーションを重視しており、クロフネとタニノギムレットでは叶わなかった夢をこの馬に託す。そして、NHKマイルCを5馬身差で圧勝すると、ダービーでも2着のハーツクライをはじめとする強豪を下して「変則二冠」を見事に達成。余談になるが、この年のダービーは5月ながら真夏のような暑さで、カメハメハ大王には実にふさわしい一日だと思ったものである。

 夏を越し、秋は古馬路線への参入を選択した。復帰戦の神戸新聞杯を危なげなく勝ち、天皇賞・秋へ向かって順調そのものにも思われたが、2週前に屈腱炎を発症。これにより1年たらずの現役生活に終わったものの、その中身は非常に濃いものだった。

中央G1を制したキングカメハメハ産駒

表2 【画像提供:JRA-VANデータラボ】

 競走馬として抜群の能力を示したキングカメハメハだが、より成功したのは種牡馬として、と言っても過言ではない素晴らしい成績を収めている。表2は中央のG1を勝った産駒をまとめたもので、上から世代順、世代が同じ場合はG1を勝った順に並べている。

 初年度産駒の2006年生まれからはG1馬が出なかったが、2世代目からは史上3頭目の牝馬三冠馬アパパネ、ジャパンCを制したローズキングダムという大物2頭が登場。続く3世代目からは、年度代表馬にも輝く名スプリンターのロードカナロアが出た。中央G1のみを対象とした表2には載っていないが、日本馬が勝つのは不可能とさえ言われた香港スプリントを連覇した偉業は永遠に語り継がれるだろう。

 以降も連綿と活躍馬を送り出し、2015年の二冠馬ドゥラメンテ、現役のレイデオロなど牡馬のチャンピオン級も輩出。芝だけでなく、史上初のG1(Jpn1を含む)10勝を達成したホッコータルマエという砂の王者も出している。そのほか、海外ではルーラーシップ、地方交流ではタイセイレジェンド、ハタノヴァンクールがG1を制覇。3000m級の長距離G1で未勝利という点を除けば、ほぼすべてのジャンルでG1馬を送り出しており、種牡馬としての万能性は日本競馬の歴史上でも屈指となっている。

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