日大三高・小倉監督が語る時代の変化 夏の甲子園で重要なのは「球数より休養」

松尾祐希
 夏の甲子園もあとは決勝を残すのみ。49校の代表校のうち、47校が甲子園を去ったが、高校球児たちは今夏もうだるような暑さにも負けず、日々グラウンドを駆けた。

 今年から準々決勝後に加え、準決勝の後にも休養日を導入。選手たちを酷暑から守るべく、負担を最小限に減らす施策が取られている。では、現場に立つ指導者たちは新たな取り組みによって、選手たちにどのようなメリットがあると感じているのか。今回は、夏の甲子園を2度制した経験を持つ日大三高の小倉全由監督に話をうかがった。

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「休養日を入れるのが最善の策」

「球数制限も話題になっていますけれど、僕は球数よりも休養」と休息日の重要性を示した小倉監督 【松尾祐希】

――現在の甲子園の大会日程について、どのように見られていますか?

 やっぱり、選手を思ってくれていると言うのはおかしいかもしれないけれど、すごく高野連(日本高等学校野球連盟)が考えてくれていると感じます。しっかり休養日を設けてもらっているので、僕たちは感謝をしないといけない。

 あと、甲子園に行って感じるのは、連盟の先生方がチームをしっかり案内してくれることですよね。昔は次の試合まで通路に座って待っていた時代もあったんです。今はスタンドの下にあるピッチング練習場で自由にウォーミングアップをやらせてもらえる。取材の時間が終われば、あとはみんなで好きなようにやっていいよと。リラックスができますし、そういうところから野球がやりやすくなっているんですよね。ピリピリして野球をやっている感じがしないというか、初めて甲子園に出場するチームは特にそう感じると思います。

 ただ、夏の気温は問題。熱中症を考えないといけない。環境の変化もある中で、日程に余裕を持って休養日を入れるのが最善の策ではないでしょうか。やっぱり、球数制限も話題になっていますけれど、僕は球数よりも休養。球数になると、選手層の問題も出てくる。レギュラークラスの投手が複数名いればいいですけれど、そこはすごく難しいですよね。

――球数制限よりも休養日を設けているほうがありがたいわけですね。

 リトルリーグやシニアリーグなど、身体ができていない時の球数制限は絶対に必要ですが、高校生もいくら投げてもいいわけでもない。ただ、制限すると、選手層の厚いところはいいけれど、そうではないチームの対応が難しい。

 また、2011年の夏の甲子園では決勝まで行かせてもらいました。その時は吉永健太朗が全試合投げましたが、疲労を考慮して準決勝の先発を外したんです。ただ、理学療法士の方が「吉永は投げられますよ」と言っていたんです。肩と肘の張りがないですよと。やっぱり、球数制限も一つの方法ですが、肩と肘の専門家が必要。僕たちも監督だから専門家じゃないといけないけれど、肩と肘を見られる人の存在が心強かったんです。

――今は都大会も含めて、故障のチェック体制はどのようにやられていますか?

 うちはトレーナーに見てもらっているので、相談してどうするかを決めています。練習をやっていても、「彼は肘に張りがあるから3日ぐらいは休ませてください」と言われれば休ませる。その形でしっかりとやっています。

――トレーナーの方は常に帯同されているんですか?

 帯同ではなくて、うちは1週間に1度来ていただいて状態を見てもらっています。トレーナーがいない場合でも、グラウンドで状態がおかしいなと判断すれば、連絡を入れてアドバイスをもらっています。なので、うちは無理をさせない。

「絶対に暑さの中で無理はさせていけない」

日大三高では練習の休憩時にスイカやアイスを食べるなどをしている 【松尾祐希】

――話は戻りますが、夏の気温は昔と比較してどうでしょうか?

 気温が1度、2度上がったとかではなく、昔は毎日35度まで上がる日はほとんどなかったです。これは人間として対応できない。グラウンドに出ると暑さが全然違うんですよ。だから、選手に無理をさせないようにしないといけない。頑張って自分の限界を超えないと成長はできないけれど、絶対に暑さの中で無理はさせてはいけない。それは思っています。

 選手の顔色から朝の食事の量。食べられていない子には無理をさせないとか。そういうところは見ています。特にうちは合宿生活で自分も常駐しているので、朝食時から誰が食べられていないなというのを把握して、選手にも具合が悪いかを聞いたりしています。

 あとは「あまり頑張るなよ」と話しています。自分たちも見て気を付けていますけれど、選手たちも自分たちでおかしいなと感じれば、すぐに言いなさいと。へたしたら死んじゃうからなと。

――暑さに対応するために、取り入れている施策はありますか?

 うちは今年の夏の大会前に栄養士に来てもらいました。水分の取り方を教えていただいて、練習が始まってからではなく、練習が始まる30分前に必ず水分をとって練習に入るようにしました。そういうところから選手たちにも、身体について勉強をしてもらっている。

 そして、練習中は喉が乾く前に水を飲む。あとは僕の方で休憩を入れて、スイカを食べさせたり、アイスを食べさせたりはしていますね。

――そういう取り組みの中で練習のやり方を変えた点はありますか?

 午後の食事を取ってからの2時間は休ませていますね。昔はお昼を食べたらすぐに練習をしていましたけれど、今の暑さは異常なので。練習試合の時はダブルヘッダーで午前と午後になりますが、今年は1試合目に全部出た選手を2試合目では使わないようにしています。前はダブルヘッダーの2試合にフル出場する子もいたのですが。試合に出ても初めのスタートだけで途中で変える。そこは割り切っていますね。

――オフの取り方も昔と比べて変えたのでしょうか?

 夏休み中は強化合宿を行っていて休みの日は決めていますが、選手の状態を見て臨機応変に対応しています。今日は午後の練習をしないで、シャワーを浴びさせて昼寝をさせようとか。練習の強弱は僕たちで判断してやっていますね。午前中を休みにして合宿所の掃除をするような日もありますし、選手たちの体を僕らが見て、体が重くて動かない時はもう休ませますね。

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著者プロフィール

1987年、福岡県生まれ。幼稚園から中学までサッカー部に所属。その後、高校サッカーの名門東福岡高校へ進学するも、高校時代は書道部に在籍する。大学時代はADとしてラジオ局のアルバイトに勤しむ。卒業後はサッカー専門誌『エルゴラッソ』のジェフ千葉担当や『サッカーダイジェスト』の編集部に籍を置き、2019年6月からフリーランスに。現在は育成年代や世代別代表を中心に取材を続けている。

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