連載:東京五輪に続く世界バドミントン

「チームうどん県」で包囲網を破れ! 桃田賢斗、「逆対策」で世界バドV2だ

平野貴也
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ライバル選手の国から対策を施されてきた桃田。「桃田包囲網」を破って世界選手権を連覇できるか 【写真:中西祐介】

 桃田賢斗(NTT東日本)が、同郷スタッフの力を得て世界最強の証明に挑む。

 バドミントンの世界選手権が19日にスイスのバーゼルで開幕する。男子シングルスでは、昨年9月から約1年にわたって世界ランク1位をキープしている桃田が、日本勢初の連覇に挑む。2020年東京五輪で金メダル獲得という目標に向け、弾みがつく優勝が期待される。桃田は、8日に都内で行われた壮行会イベントで「連覇はすごく難しいものだと思うけど、そこに挑戦していって2連覇を成し遂げたい」と意欲を示した。

対策への対策は「新しい癖」づくり

 今大会は、昨年の決勝戦で対戦した石宇奇(シー・ユーチー=中国)と、2017年の王者ビクター・アクセルセン(デンマーク)が負傷で欠場。桃田は、圧倒的な優勝候補となる。しかし、追われる立場で勝ち続けることは、決して容易ではない。7月のダイハツ・ヨネックスジャパンオープンで激闘を展開した好敵手アンソニー・シニスカ・ギンティン(インドネシア)と準決勝で対戦する可能性もある。桃田が「対戦相手も1試合ずつ戦い方を変えてきているし、自分のパターンに持って行けなくて難しくなる試合が多くなって来ている」と話したとおり、相手の分析も進んでいる。日本代表で男子シングルスを担当する中西洋介コーチは7月に「中国、デンマーク、インドネシア辺りは、桃田への対策を練って来ているなという感じがある」と話していた。

 ただし、対策を施されても勝ち続けるため、桃田は1月から「逆対策」を仕込んでいる。そこには、桃田と同じ香川県出身の2人のスタッフの力が関わっている。中西コーチが明かしてくれた。

「コートの四隅を25%ずつカバーできるように位置を取るのが基本。でも、相手が桃田の配球を読んでいて、50%以上の予測を立てて特定の球を待っているところに打ってやられているケースが、ちらほら見えている。『この球を打ったら、次はこういう球』という癖が出ている。だから、相反する場所に打つ、もう一つの癖をつける練習を今年に入ってからやっています。相手のフォア(利き手)側の後方へ返しているパターンなら、同じ球を対角に位置するバック側の手前へ返すという具合です」

桃田と試合中に話し合う中西コーチ(写真左) 【撮影:幡原裕治】

 世界ランク1位に立ち続ければ、当然、相手の対策は進んでいく。世界のトッププレーヤーは、大きな大会の上位決戦で何度も当たるため、手の内も知れてくる。桃田の配球パターンを試合映像から解析すれば癖が分かるわけだが、相手が桃田対策として行っていそうなことを、こちらでも行い、手を打つのだ。日本代表の映像分析班には、桃田と同じ香川県出身で選手経験のある平野加奈子さんらがおり、コーチ陣の要望に応えて映像資料や、映像から分析したデータを提供している。「新しい癖」によって、相手が今までどおりのヤマを張っていれば逆を突けるし、そうでなくても迷いが出る。対策への対策、いわば逆対策を行っているのだ。
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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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