連載:指導者として、レジェンドたちが思うこと

野球人・高津臣吾がたどり着いた境地 若手の飛躍のために重視することは?

ベースボール・タイムズ
 決して栄光だけの現役生活ではなかった。MLB挑戦から日米通算300セーブも達成したが、故障からの不振、そして戦力外を経て、米マイナーから韓国、台湾、BCリーグと渡り歩いた。

「良いことも悪いことも、経験することは非常に大事な練習になる」。計22年間、自分に諦めることなく、必死に腕を振り続けた現役生活で得たものは、指導者としての現在、そして今後の人生にも必ず生かされる。

「絶対に伸び伸びとやらせたい」

「伸び伸びとやらせたい」と、選手第一で指導にあたっている 【花田裕次郎/ベースボール・タイムズ】

――引退後、一軍の投手コーチを3年間務めましたが、そこでも新たな発見があったのではと思いますが?

 現役時代、いろんなところで野球をしてきて、「これは良かったな」、「これはやりにくかったな」というのは参考にしました。一緒にコーチをしていた伊藤智仁にはすごく助けてもらいましたし、一緒にいろんなことを勉強しつつ、ピッチャーを育てることに全力を注ぎましたね。

――そこから二軍監督に就任しましたが、一軍投手コーチとは役割も変わってくると思います。二軍監督に就任した際に心に決めたことなどはありましたか?

 絶対に伸び伸びとやらせたいとは思いましたね。もちろんグラウンドの中ではチームのルール、決まり事、サインといったものは必ずあるので、そこには従ってもらいますけど、いざ野球をする中で気持ち的に縮こまったり、やりにくさを感じたりはしてほしくない。そういうものを感じさせる監督ではいたくないと思いました。

 好きで始めた野球を嫌々やることはない。辛いことはたくさんありますけど、自分の野球人生ために、チームの勝利のために、最善の努力をするのは、プロの選手として当然のことだと思いますし、それを全力でサポートするのが僕らの仕事だと思っています。全力で背中を押してあげたいと思っています。

若い選手を押し上げ、ベテランを神宮に戻す

若手だけでなく「ベテランも復活させたい」と意欲を語った 【花田裕次郎/ベースボール・タイムズ】

――今、二軍にいる若い選手たちに伝えたいことは?

 すべてのことが無駄ではないということですかね。二軍にいてもなかなか試合に出られなかったり、いい結果が出なかったりしても、自分が成長していく上での大きな糧になる。そう思って欲しい。良いことも悪いことも、経験することは非常に大事な練習になる。

――今、50歳です。今後の目標はありますか?

 あまり先のことは見ていないですけど、今の二軍には若い選手が多くいるので、そこから一人でも多くの選手が神宮で、多くのお客さんがいる中でプレーさせてあげたい。それと同時に、ベテランの選手もいるので、長くスワローズを背負ってきた彼らが「まだまだできる」ともう一度、神宮のグラウンドに立ってもらいたい。若い選手を押し上げると同時にベテランを神宮に戻す。育成という面からは矛盾していることかと思いますが、若手の成長だけでなく、ベテランを復活させたいという気持ちもすごく強く持っています。

――選手のこと、チームのことは別に、高津臣吾としてどのような50代を過ごしたいですか?

 20代、30代、40代と、ずっと野球に携わらせてもらって、その時々の役割の中ですごく楽しませてもらった。今年51歳になりますけど、ユニホームを着てグラウンドに立てる、ベンチに座らせてもらっているということはすごくありがたいですし、この50代も野球を絡めて人生を楽しみたいと思います。人生を楽しむのが僕の一番のモットーというか目標なので、どうやったら楽しめるかを考える。その楽しさを、選手たちの成長、頑張りを通して感じることができれば幸せですね。

(取材・構成:三和直樹/ベースボール・タイムズ)

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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