連載:アスリートに聞いた“オリパラ観戦力”の高め方

及川栞が学んだ世界最高峰のホッケー さくらジャパンに伝授する“オランダ流”

C-NAPS編集部

ホッケー女子日本代表「さくらジャパン」の中心選手、及川栞に競技観戦の醍醐味を聞いた 【写真:C-NAPS編集部】

 11人(10人のフィールドプレーヤー+1人のゴールキーパー)の選手がピッチ上を縦横無尽に駆け巡る光景はサッカーさながら。スティックを巧みに操ってボールを運び、仲間とのパス交換を経て、球速150キロを超えるシュートで得点を奪う。フィールドホッケーは、絶えず繰り広げられるスピーディーな展開が魅力のスポーツだ。

 中でも注目したいのは5大会連続の五輪出場を果たす女子日本代表、通称「さくらジャパン」。2018年のジャカルタ・アジア大会では史上初の金メダルに輝くなどチーム強化は順調で、東京五輪でもメダル獲得が期待されている。そんな成長著しいさくらジャパンで守備の要としてチームを引っ張るのが、18年度アジア最優秀選手に選ばれた及川栞(岩手めんこいテレビ)だ。

 及川は16年から3年間、世界ランキング1位のホッケー大国・オランダに渡り、現地のクラブチームでプレー。世界レベルを肌で感じてきた日本女子ホッケー界の第一人者でもある。19年6月には、東京五輪に照準を合わせて日本に帰国。日本初のクラブ経営型チーム『東京ヴェルディ女子ホッケーチーム』に加入した。「新しいことに挑戦するのがモチベーション」と語る及川に、ホッケーの醍醐味、さくらジャパン、そして五輪への思いを聞いた。

ホッケーの醍醐味は“半円の中の攻防”にあり

 ホッケーはスティックを使って、相手ゴールにボールを入れて得点を競う球技です。人数も11人なのでなんとなくサッカーに似ていますね。観戦する上で、まず注目すべき基本的なルールとしては、スティックのフラットな面しか使えないことです。スティックの反対側の丸い部分にボールが当たると、故意でなくとも反則になります。なので、ドリブルもボールを打つ時も、選手は器用にスティックをひっくり返しながらプレーしているんです。そうした細かなテクニックをぜひチェックしてください。

 もう一つぜひ注目してもらいたいのがゴール前の「サークル」と呼ばれる半円です。この半円の中から打たれたシュート、または半円の中で味方が触ったボールでないと得点は認められません。これはホッケー独特のルールです。観戦時にはぜひ押さえておいていただきたいですね。

 ただ、ロングボールを半円の中でタッチさえすればゴールと認められるので、そういったプレーを意図的に狙ってくる選手もいます。レベルが高くなればなるほどディフェンスも強固になるので、半円のトップから単純にシュートを打ってもなかなか得点は入りません。半円の中のペナルティースポットあたりでパスを受けて合わせたり、このスポットの近くで触れてコースを変えたりといったプレーによりゴールが生まれます。サークル内の攻防は、ホッケーの大きな見どころだと思います。

及川は守備のスペシャリストだが、ペナルティーコーナーではシューターとして得点を狙う 【Getty Images】

 その他は、ペナルティーコーナーも見逃せません。サッカーでいえばPKのようなビッグチャンスです。ゴールポストから10メートル離れた地点からボールをストロークし、そのボールをサークルの外でストッパーが止め、シューターがゴールをめがけてボールを打ち得点を狙います。

 ペナルティーコーナーの最大の特徴は、攻撃側は何人でも配置できますが、守備側は5人しか参加できない点です。なので、攻撃側が圧倒的有利な状況なります。日本代表でも得点源として練習しているところなので、ぜひ注目してほしいですね。今は20以上のパターンを試しています。私は体を張って相手の得点機を防ぐディフェンダー(DF)ですが、ペナルティーコーナーではシューターも務めています。日本がペナルティーコーナーを獲得した際は、私のゴールを期待してくださいね(笑)。

 また、DFとしてはサークル内での守備にも注目して欲しいです。サークル内で反則を犯すと攻撃側にペナルティーコーナーが与えられてしまうので、ファールなしで守備するスキルが求められます。特にボールが膝より下に当たらないように上手く守ることが大切です。通常はボールが当たった方の反則になりますが、サークル内で守備側の膝下に当たると攻撃側にペナルティーコーナーが与えられます。それを狙って膝下にボールをわざと当ててくる選手もいます。

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著者プロフィール

ビジネスとユーザーを有意的な形で結びつける、“コンテキスト思考”のコンテンツマーケティングを提供するプロフェッショナル集団。“コンテンツ傾倒”によって情報が氾濫し、差別化不全が顕在化している昨今において、コンテンツの背景にあるストーリーやメッセージ、コンセプトを重視。前後関係や文脈を意味するコンテキストを意識したコンテンツの提供に本質的な価値を見いだしている。

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