連載:真夏の日本一はどう決めるべき? 現場からの生の声

「万全で臨めない総体は意味がなくなる」 青森山田・黒田監督が夏を前に伝えたい事 

松尾祐希

独立した大会へ「高サ連」を新設!?

高体連からは独立した組織を作り「独立して大会を行うことも検討しないといけない」と黒田監督 【写真:森田直樹/アフロスポーツ】

――レギュレーションに関してはどうでしょうか。シードの問題や公平性を保つのであれば、グループリーグをやるのも一つだと思います。

 7日間でやるのではなく、うまく日が取れるのであれば、その方がいいかもしれません。プレミアリーグとの日程を調整してやれば、できないことはないはずです。あとは地域大会のベスト3ぐらいまでをインターハイに参加させ、16チームから24チームぐらいで競うのもいいかもしれません。昔の高校サッカー選手権はその予選方式で行っていましたし。ただ、特定のチームしか全国大会に行けないことを懸念していて、平等性を図ることも念頭にあるので、実現は難しいかもしれません。

 あとはプレミアリーグのEASTとWESTのトップ同士が2回戦以内で当たるので、組み合わせの決め方も少し考えた方がいいかもしれないですね。出場校が抽選会に参加できない中で、(組み分けの)ブロックごとに寄りがあって、強豪校同士のつぶし合いがあリます。選手権もインターハイもそうですが、プレミアリーグに出ているチームはきちんとシードした方がいいと感じています。

――なるほど。また、レギュレーションや開催地を検討するのであれば、インターハイは他の競技もあるので、サッカーだけ別の会場で開催するのは難しい側面があります。いろいろな競技が紐付いているからこそ厳しいですよね。

 開催地の固定は難しいですよね。サッカーは高サ連じゃないけれど、高野連(日本高等学校野球連盟)のようにまたそこから違う組織を生み出しながら、独立して大会を行うことも検討しないといけないかもしれません。

――そう考えると、実は高野連の方が暑熱対策や選手の負担になっている投球制限などを柔軟に対応している気がします。

 そうですね。独自に組織を持っているからこそ、迅速に動けていると思います。

――現状のルールやレギュレーションはメリットもありますが、選手ありきではありません。これからどうすべきだと感じていますか?

 現場の意見をもっと吸い上げてほしいですね。耳を傾けているのか。現場の嘆きとか、もがきとか、いろいろな苦しみや提案を委員長から聞いているかもしれないけれど、彼らは現場の人間ではありません。本当の現場から、四苦八苦している者の話を吸い上げようとしているのか。そこが変わらないと、現場との距離感は同じままです。

「想像できないぐらいに選手たちの士気は高い」

冬の選手権を制した昨年のレギュラーが抜けた青森山田だが、「想像できないぐらいに選手たちの士気は高い」という 【写真:森田直樹/アフロスポーツ】

――最後にこれから始まるインターハイへの意気込みを教えてください。

 インターハイだけは全く予想がつかないですね。今までプレミアリーグに焦点を絞ってやっていたので、いきなり全国大会に向けて気持ちを作るのは難しいですが、直前合宿を経てもう1回モチベーションを作り直していきたいです。勝つ保障は全くないですし、常に五分五分の相手とかなり激しいバトルをしながら、勝負がどっちに転ぶか分からない戦いをやって優勝を目指したいです。

――今年は昨年のレギュラーがごっそり抜けました。新人戦やプレミアリーグ開幕戦を考えると、2年生センターバックの藤原優大選手や浦和レッズへの加入が内定している武田英寿選手が安定感を増したとはいえ、7番を背負う松木玖生選手はまだ1年生です。それでもプレミアリーグEASTでは無敗(8勝2分け)をキープしているので、かなり選手層も厚くなった気がします。

 自分でも理由が分からないぐらい、選手たちの力が伸びています。ひと冬の鍛錬や先輩たちが残してくれたいろいろな伝統や歴史というものを含め、青森山田のAチームとしてピッチに立つ責任がトレーニングの質を上げていると思うのですが、トレーニングから彼らは意識を持ってやってきてくれました。

 去年とは想像できないぐらいに選手たちの士気は高いです。良い習慣を継続させながら、選手が欠けても簡単には乱れずに維持し続けられるのが青森山田の良いところ。だからこそ、「こいつ、こんなに成長したんだ」というのが、手に取るように分かる。それがうちの強さの秘訣(ひけつ)かもしれません。

黒田剛

1970年5月26日生まれ。北海道出身。登別大谷高や大阪体育大でプレー。大学卒業後は一般企業での勤務を経て、指導者の道へ。94年に青森山田高のコーチに就任し、翌年から監督を務める。2006年にはJリーグのクラブなどで指揮を執る際に必須であるS級ライセンス取得し、柴崎岳(デポルティーボ・ラ・コルーニャ)などを育て上げた。チームとしても15年と17年に全国高校サッカー選手権を制覇。インターハイも05年度に制覇するなど、高校サッカー界屈指の名将としてその名を馳せている。

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著者プロフィール

1987年、福岡県生まれ。幼稚園から中学までサッカー部に所属。その後、高校サッカーの名門東福岡高校へ進学するも、高校時代は書道部に在籍する。大学時代はADとしてラジオ局のアルバイトに勤しむ。卒業後はサッカー専門誌『エルゴラッソ』のジェフ千葉担当や『サッカーダイジェスト』の編集部に籍を置き、2019年6月からフリーランスに。現在は育成年代や世代別代表を中心に取材を続けている。

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