エペ世界1位・見延和靖が語る決闘の裏側 フェンシングの魅力は壮絶な「心理戦」
男子エペで世界ランキング1位の見延和靖がフェンシング観戦のポイントを力説 【写真:C-NAPS編集部】
16年リオデジャネイロ五輪で初出場を飾り、個人戦で6位入賞。その後はグランプリやワールドカップの個人戦で何度も優勝を果たすなど躍進を続け、さらには19年のワールドカップ(アルゼンチン)では日本を初の団体戦優勝に導いた。次なる目標はもちろん、20年東京五輪での個人・団体両方でのメダル獲得だ。そんな日本が誇るトップフェンサーに五輪でフェンシングを観戦する際のポイントを聞いた。
フェンシング観戦の見どころは独自の間合いや駆け引き
「フルーレ」は『優先権』を保有するターンだけポイントが入る種目で、胴体のみが有効面となります。先に腕を伸ばし剣先を相手に向けた方に『優先権』が生じ、もう一方が剣をはらう・叩くなどして剣先を逸らし、間合いを切って逃げ切ることで『優先権』が再度移ります。
「エペ」と「フルーレ」が「突き」に対し、「斬り(カット)」と「突き」と攻撃パターンが2種類ある種目が「サーブル」です。ルールは「フルーレ」と同様、『優先権』に基づいています。「サーブル」は騎馬民族が発祥なので、“大切な馬を傷つけない”という意味で上半身だけが有効面になっています。
見延(左)がプレーするフェンシングのエペは、心理戦が魅力の“決闘”だ 【Getty Images】
また、他の2種目に比べて圧倒的に駆け引きが多いところが、僕が感じる「エペ」の最大の魅力ですね。全身が有効面で突かれたら負けてしまうので、間合いの取り方に細心の注意を払う必要があるんです。
たとえば、攻撃が得意な選手に対し、自分は防御が得意だとしますよね。すると後ろに下がって守りを固めるのが普通かもしれませんが、あえて攻めながら守るのも相手を惑わす戦術の一つです。前に出て相手にプレッシャーをかけながら相手の攻撃を引き出させるような誘いをして、一瞬の隙を狙うなど間合いや駆け引きがすごく重要になります。そんな相手を惑わす壮絶な心理戦が、常に繰り広げられているんです。
また、選手によってプレースタイルがまったく異なるので、攻め一辺倒の選手もいれば、逆に徹底して攻撃しない選手もいます。そうした戦術の違いも心理戦の一つで、相手のスタイルによって戦い方を変えることも珍しくありません。また、性格やメンタルもプレースタイルに大きく影響するので、そういった細かな駆け引きを想像しながら観戦すると、よりフェンシングを楽しめると思います。