連載:アスリートに聞いた“オリパラ観戦力”の高め方

エペ世界1位・見延和靖が語る決闘の裏側 フェンシングの魅力は壮絶な「心理戦」

C-NAPS編集部

男子エペで世界ランキング1位の見延和靖がフェンシング観戦のポイントを力説 【写真:C-NAPS編集部】

 フェンシング男子エペにおいて、日本勢として初の世界ランキング1位(2019年7月時点)に到達した男がいる。いまや日本フェンシング界の押しも押されもしないエースであり、その実力から東京五輪メダル候補と期待されているのが、見延和靖(ネクサスホールディングス)だ。

 16年リオデジャネイロ五輪で初出場を飾り、個人戦で6位入賞。その後はグランプリやワールドカップの個人戦で何度も優勝を果たすなど躍進を続け、さらには19年のワールドカップ(アルゼンチン)では日本を初の団体戦優勝に導いた。次なる目標はもちろん、20年東京五輪での個人・団体両方でのメダル獲得だ。そんな日本が誇るトップフェンサーに五輪でフェンシングを観戦する際のポイントを聞いた。

フェンシング観戦の見どころは独自の間合いや駆け引き

 まず知ってもらいたいのは、フェンシングには「エペ」「フルーレ」「サーブル」の3種目があるということです。僕がやっている「エペ」は全身すべてが有効面で、先に突いた方にポイントが入り、両者同時に突いた場合は双方のポイントとなります。フェンシングは“決闘”から派生したスポーツなのですが、「エペ」は最もその決闘の形に近いと言われていますね。

「フルーレ」は『優先権』を保有するターンだけポイントが入る種目で、胴体のみが有効面となります。先に腕を伸ばし剣先を相手に向けた方に『優先権』が生じ、もう一方が剣をはらう・叩くなどして剣先を逸らし、間合いを切って逃げ切ることで『優先権』が再度移ります。

「エペ」と「フルーレ」が「突き」に対し、「斬り(カット)」と「突き」と攻撃パターンが2種類ある種目が「サーブル」です。ルールは「フルーレ」と同様、『優先権』に基づいています。「サーブル」は騎馬民族が発祥なので、“大切な馬を傷つけない”という意味で上半身だけが有効面になっています。

見延(左)がプレーするフェンシングのエペは、心理戦が魅力の“決闘”だ 【Getty Images】

 初めて見る方にはぜひ「エペ」を見ていただきたいです。単純にポイントをあげた方にランプが点灯するので分かりやすい。先に突けば勝ち、やられたら負け、とフェンシングの3種目のなかで最もルールがシンプルで見ていて分かりやすいし、面白いと思います。

 また、他の2種目に比べて圧倒的に駆け引きが多いところが、僕が感じる「エペ」の最大の魅力ですね。全身が有効面で突かれたら負けてしまうので、間合いの取り方に細心の注意を払う必要があるんです。

 たとえば、攻撃が得意な選手に対し、自分は防御が得意だとしますよね。すると後ろに下がって守りを固めるのが普通かもしれませんが、あえて攻めながら守るのも相手を惑わす戦術の一つです。前に出て相手にプレッシャーをかけながら相手の攻撃を引き出させるような誘いをして、一瞬の隙を狙うなど間合いや駆け引きがすごく重要になります。そんな相手を惑わす壮絶な心理戦が、常に繰り広げられているんです。

 また、選手によってプレースタイルがまったく異なるので、攻め一辺倒の選手もいれば、逆に徹底して攻撃しない選手もいます。そうした戦術の違いも心理戦の一つで、相手のスタイルによって戦い方を変えることも珍しくありません。また、性格やメンタルもプレースタイルに大きく影響するので、そういった細かな駆け引きを想像しながら観戦すると、よりフェンシングを楽しめると思います。

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著者プロフィール

ビジネスとユーザーを有意的な形で結びつける、“コンテキスト思考”のコンテンツマーケティングを提供するプロフェッショナル集団。“コンテンツ傾倒”によって情報が氾濫し、差別化不全が顕在化している昨今において、コンテンツの背景にあるストーリーやメッセージ、コンセプトを重視。前後関係や文脈を意味するコンテキストを意識したコンテンツの提供に本質的な価値を見いだしている。

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